- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784875863298
感想・レビュー・書評
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あの2011年の終わりころに出版された本。赤ちゃんを産んだばかりのお母さんの語りという体裁の、世間への訴え的な、ノンフィクション的フィクションでした。東電への怒り恨みが根底にふつふつとあって、ぬらぬらとした感情を感じさせつつ、原発に反対する論拠を述べていきますが、ときに恣意的すぎるきらいがありました。あまり科学的ではないというか、記述に正確性を欠いていたり、情報源がはっきりしなかったり、デマを信じているように見受けられる記述があったりする。その顕著なところは、原発の格納器から蒸気を放出するベントという作業についてです。これは、原発が津波で大ダメージをうけてなかなか作業できなかったのが本当のところだと、NHKの番組やほかのノンフィクションで知っていますが、この本では簡単に、そんな単純な作業にすら長い時間をかけてしまったのは、日ごろの保守点検作業に怠りがあったからだと、あまりに考えがないまま結論づけられている。さらに、そんなベントのバルブなどにはきっと公にできない秘密があるのだ、などと、すこし妄想的な文章が続く。たしかに、福島に住む人々の怒り、もっといえば北海道に住む僕だってなんたることだって怒りを覚えたので、この、まだ原発事故から1年もたっていない時期では、こういう物言いにもなってしまうのかなぁという気持ちにもなります。しかし、混沌の火に油を注ぐようなことはしないほうがいい。2011年という年の混乱をそのまま宿しているという意味では価値はあるけれど、2015年になってもはや放射性物質関連には素晴らしい本が出てきているし、情勢も固まったところは固まってるし(原発事故は収束していないけどね)、今読むと無用な混乱を再び招く恐れもあるように思いました。すごく勉強しされているので、惜しい。(なんて、僕がいえたもんじゃないんですけども)
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荒井良二さんが絵を描かれている、ということで手に取りました。
九州育ちの私は、いまだ東京より北に行ったことがありません(北海道を除いて)。震災後の福島県のことはいろいろ聞いたり見たりするけど、それ以前の福島県のことは何も知らない。脈々と続く歴史を教えてもらった本でした。
震災直後から情報の渦に飲み込まれそうだったけど、なにも情報が入ってこない被災地にいたら、どんな行動がとれただろう。
尾瀬の半分以上の土地が東電所有になっていること、原子炉にはボストン・エヂソン社とGE社のものがあり福島原発で稼働していたのはGE社の原子炉であったこと、「投資効率の向上」を押し進めた木川田一隆元東電会長のこと、東電批判の先頭に立ち後に逮捕された佐藤栄作久元福島県知事のこと。
まだまだ知らないことがたくさんあります。 -
福島のこと×荒井良二の絵