- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784875864158
作品紹介・あらすじ
かの作家たちは「食」をいかに描いたか?36品の佳味あふれる饗宴。
感想・レビュー・書評
-
「食」にまつわる作品を集めたアンソロジー。タイトルとカバー画、贅沢な大ボリュームが目を惹く。
「絵日記」「新秋名菓──季節のリズム」「中年男のシックな自炊生活とは」「グリモの午餐会」「神戸」「花の雪散る里」「握り飯」「薬菜飯店」「人間臨終図巻──円谷幸吉」「男の最良の友、モーガスに乾杯! 」「初音の鼓──『吉野葛』より」「セカイ、蛮族、ぼく。」「キャラメルと飴玉」「お菓子の大舞踏会」「ずずばな」「鵝掌・熊掌」「雛人形夢反故裏」「悪魔の舌」「チョウザメ」「趣味の茶漬け」「冬薔薇の館」「ハウレンサウ」「全国まずいものマップ」「鏡に棲む男」「コロッケ」「蟹まんじゅう」「右頰に豆を含んで」「啓蒙かまぼこ新聞(抜粋)」「芥子飯」「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」「天どん物語 ──蒲田の天どん」「お酒を飲むなら、おしるこのように」「玉響」「牛鍋」「鷗外の味覚」「正岡子規」「仰臥漫録 二」を収録。
名店の味、こだわりの食べ方、庶民の味から珍味まで、食が象徴する行為や属性、和洋中取り混ぜて、しかもエッセイに小説に遺書に日記とめくるめく満漢全席のもてなしぶり。お腹いっぱいになるでしょう、としたり顔の下には(お腹が空いたでしょう)の台詞が見えること間違いなし。
わかりやすく正面から食を扱っているものもあれば、何らかの仕掛けやエッセンスとして意図的に・自ずと食が登場するものもあり、食とそれに取り組むスタイルの多様なことが意識されてなおさら楽しい。そういえば編者はたしか猿渡に、味覚は基本的にノスタルジーなのだよ、といったようなことを言わせていた。
初見のものでは、酔いのうちの幻想の匂やかな「花の雪散る里」、憐れ深い「人間臨終図巻──円谷幸吉」(図らずも東京オリンピックの年に読んでしまった……)、薬膳の歴史ある崇高さと胡散臭さとキッチュなドタバタがマッチした「薬菜飯店」、バターのいい香りがしてたまらない「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」、それぞれ食に向かう3人の姿に謎の面白さがある「牛鍋」が特にお気に入り。
ある意味一番夢中になったのは「全国まずいものマップ」。まずいものを狙って喜んで食べる変化球が来たかと思えば、あなた自分で「失敗」言ってるじゃん!と大いに突っ込む羽目に。後半の架空の地名の段は、フィクションに仕立てつつ、そう表現したくなるようなまずいものを実際に食べてしまったってことなのか……と鳥肌しきり。笑っていいのか微妙なライン上の恐怖。
「仰臥漫録 二」も印象的。正岡子規の晩年は知らなかった。端的な記述がかえって痛ましい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
食
文学 -
好:筒井康隆「薬菜飯店」/芦原すなお「ずずばな」/村山槐多「悪魔の舌」/種村季弘「天どん物語 ─蒲田の天どん」/正岡子規「仰臥漫録 二」
-
空腹時には読めない本。
無性に天丼とオムレツが食べたくなる。あと、ずくし。
著者プロフィール
金子國義の作品





