ルキアノス全集 食客 (3) (西洋古典叢書 G085)

  • 京都大学学術出版会 (2014年10月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (311ページ) / ISBN・EAN: 9784876984879

感想・レビュー・書評

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  • サモサタ(シリア)生まれのルキアノス(120年頃~195年頃)は、私の好きな風刺作家のひとりです。彼のことを教えてくれたのは、中世のエラスムスとその親友のトマス・モア(^^♪ 彼らのお薦めどおり、ルキアノスの話は本当に面白い。法螺話とユーモア満載の短編、月世界旅行、鯨の腹の中の冒険譚といい、世界最古のSF空想物語は、その後の数多くの作家たちにインスピレーションを与え続けていますね。

    彼の代表作『本当の話』と本書は重なる掲載も多いです。『本当の話』は冒険譚や奇人の可笑しな話が多くて読み応え満載ですが、訳者が複数いるので、トーンが微妙に異なっている感じがします(あくまでもわたしの感触ですけどね)。それに対して、この本はもう少し思弁に富む話が多い感じで、翻訳も大変わかりやすいです。

    なかでも「哲学諸派の競売」と「よみがえった哲学者」(『本当の話』に掲載あります。タイトルは「漁師」)は、神ゼウスとヘルメスが哲学者らをセリにかける! という前代未聞の話。もうこれだけでもわたしは可笑しくてたまらない。
    ソクラテス、ピタゴラス、デモクリトス、ヘラクレイトス……つぎつぎと二束三文で市民や商人に競り落とされていきます。ときには値もつかない惨憺たるありさま。その様子に冥府の哲学者らは驚天動地、不満たらたら現世によみがえってきて、語り手パルシアデス(という名のルキアノス)をこぞって裁判にかけるのです。
    メタフィクションに加え、ルキアノスが生きていた当時の「哲学」の腐敗ぶりをおもいきり皮肉った強烈な物語はとにかく笑えます。

    また「カロン」(『本当の話』掲載なし。『神々の対話』に掲載あり)は、ルキアノス作品中でも有名です。
    冥府の川の渡し守カロンは、死者ばかり相手にしている日々にうんざり気味……ふいに現世のツアーをしたくなり、お友達のヘルメス神に浮世を案内してもらうのです。可笑しい、可笑しい。いや~素頓狂な創造と遊びとユーモアにただただ感激。

    「もし彼らが、自分たちは死すべき存在であり、この世に逗留するのはほんのわずかな期間で、地上での生活をすべて放擲してあたかも夢から覚めた人のように立ち去っていくのだろうということを最初から知っておれば、もっと利口な生き方ができるだろうし、死に際の悲嘆もずっと少なくてすむだろうに……」

    「……風の吹くなか水面にかつ結びかつ消える水泡であり、すべてが消えていく定めである。だからこそ人は目の前に死をぶらさげて生きるべし」

    軽妙なカロンとヘルメス神のやりとりは、まさに人間存在の正鵠を射たものではなかろうか? 驚嘆する場面が多いのです。ふと思い浮かべるのは、日本の三大随筆のひとつ鴨長明『方丈記』。人は流れる水の泡のよう……という無常観の漂うくだりは有名で、まるでルキアノスと鴨長明が時代を超えて響きあっているよう!

    こうしてみると、人の創造は時空を飛び、言葉や宗教の壁を乗り越えていくのでしょうか? まことに不思議でなりません。古典を読んでいると、そのような霊感に満ちた発見や、人間の真理と叡智に触れることが多くて愉しくなります。ますます読書がとまらない♪

  • バタイユの魔法使いの弟子
    →デュカスの魔法使いの弟子
    →ゲーテの魔法使いの弟子
    →ルキアノスの嘘好きと辿って、
    嘘好きのみ、流し読み。

    嘘にまつわる話でありつつ、
    途中、精霊や魂の実在やイデアの話に。

    対話篇で、主人公が出先の話を友人に伝える形で、
    その「嘘ばかりの話」を友人に伝えるのだけど、
    最後は、「精霊の話を聞き過ぎて、頭が精霊で一杯になってしまったよ」という風に言うところで、
    頭が言葉で一杯になってしまった、ということかな、と連想して、
    精霊、魂、イデアが実在するかわからないけれど、
    それらを指す言葉と、その効果はある、みたいなことを扱っているんじゃないか、と妄想。


    また、途中、ピタゴラス派の人を斧のよう、と例えた後、
    (ピタゴラス→三平方の定理→三角形→シャープなエッジ??)
    例の魔法使いの弟子にもつながる水運びをするすりこぎを斧で二つに割っても止まらない話が出るのだけど、
    そういった精霊=言葉や概念は簡単に批判しても議論は拡散するだけ、という話かな、と妄想。
    (アレント『人間の条件』のおしゃべりは拡散し、その解釈も制御できない、手紙は届く、訂正は可能?などを連想。)

    話しのオチはそういった嘘への解毒剤として真実がある、
    と言うけれども、そう言う、この話自体がフィクションである、
    というアイロニーで、
    また、このアイロニーから、
    プラトンの洞窟の比喩、
    あれ自体、対話篇の中の、いち挿話で、この意味でも二重にフィクションだけれど、
    それを連想させ、
    こういった話をオチに持ってくる、というのが、
    魔法使いの弟子にある最後に精霊(おしゃべり?)を止められるのは古いマイスターである魔法使い自身による、ということとの重ね合わせかしら、と妄想した。

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