森の小さな〈ハンター〉たち―狩猟採集民の子どもの民族誌

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  • 京都大学学術出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784876987825

作品紹介・あらすじ

遊び・狩猟採集そして「学校」、圧倒的なリアリティで迫る、森の子どものフィールドワーク。

感想・レビュー・書評

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  • 気鋭の文化人類学者による、アフリカの「ピグミー系」民族・バカの子供たちの遊びをテーマにしたフィールドワークの記録。著者は現在愛知県立大学で教鞭をとっておられる。すでに中堅研究者ながら、その瑞々しい感性に唸らされる。
    狩猟採集文化においては大人から子供への技術の伝承などの明確な「教育」という観念は薄く、放任的であるというのは多くの文化に共通するらしい。本書では子供たちが遊びを通して自然にその社会で生きて行く技術を身につけて行く様子が語られる。とはいっても教育が遊びという手段を取るということではなくて、ごく自然に混淆として。

    なんでこんなことができるかといえば、要するに狩猟・採集生活自体が面白いからなんじゃないかという理由しか思いつかない。日々自然の賜物だけを頼りにする生活は不安定かもしれないけど、特に熱帯の、動植物資源の豊富な森の中であれば、毎日予想外のことが起こったりして、いやこれは結構楽しいんじゃないか。

    翻ってより「文明的」な社会はどうかというと、農耕ももちろん自然に頼った生き方だけど、たぶん狩猟・採集ほどはドキドキしない。都市生活となればなおさらだ。だからしばしばその単調さに堪えられなくなる。「遊び」はそのために必要不可欠になるし、子供も大人の生産活動を真似る遊びなどはしないから、教育もしないといけない。子供が進んでするわけでもないことをさせるわけだから、そこには強制するだけの権威が必要になる。子どもの生活はますます遊びからかけ離れる…。黙ってても子供が真似っこ遊びをしたくなるくらい楽しくないと、この悪循環は断ち切れない気がする。

    著者の亀井さんは「手話の世界を訪ねよう」「アフリカのろう者と手話の歴史」などの著書でも有名。

  • 教育や訓練、しつけらしいしつけはおこなわない。
    彼らの遊びの方法を試してみたい。

  • 我々日本人は子どもの頃は当然のように学校に通って勉強をし、一日のほとんどを学校で過ごすが、アフリカでは勉強の代わりに一日の大半を狩りの時間に費やしているなど、世界には様々な子どもが存在することを知って欲しい。
    (教育学部・国語専修:匿名希望)

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著者プロフィール

1971年、神奈川県生まれ。
京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了、京都大学理学博士。日本学術振興会特別研究員を経て、現在、関西学院大学社会学研究科COE特任助教授。専攻は人類学・アフリカ研究。1996年からカメルーンなどの西・中部アフリカ諸国で現地調査を続けている。
[主な著書・論文]
著書に『手話でいこう——ろう者の言い分 聴者のホンネ』(ミネルヴァ書房、2004年、秋山なみと共著)、Hunter-Gatherer Childhoods(Transaction Publishers、2005年、分担執筆)など。
論文に「アフリカの手話言語」(『アフリカ研究』64号、2004年)、「言語と幸せ——言語権が内包すべき三つの基本的要件」(『先端社会研究』創刊号、2004年)など。

「2007年 『アフリカのろう者と手話の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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