- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877143633
感想・レビュー・書評
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[ 内容 ]
[ 目次 ]
炭坑ビス―ソ連俘虜記
随筆丹下左膳
柳田國男
シベリヤの思い出
『審判』卒読ノート
詩人ブレヒト
ブレヒトの墓
菅原克己
わが友野間宏
断食芸人〔ほか〕
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かつて30年ほど未来社で編集者として活躍していた編者が、独立して出版社をおこすという経歴のなかで出会った作家・評論家のエッセイを選んでの刊行、という思い入れの濃いシリーズの一冊。
終わりの「著書一覧」を眺めると,この長谷川四郎のものは1950年代のものはすべて読んでいるが,それ以後はまばらになって来ていた。
<長谷川四郎>という作家の名前を教えられたのは,20歳前後の頃だったと思う。<シベリアもの>で素晴らしい作品を書いているということだった。高杉一郎かと訊いたら、全然違うという相手の強い口調をおぼえている。
はじめに読んだ『シベリヤ物語』か『鶴』に中野重治のあとがきがあった。エッセイ集に『随筆丹下左膳』があり、これは著者長兄の長谷川海太郎代表作のタイトルだ。
ということから、懐かしく手にとった一冊。はじめに著者半身の顔写真があるが、かつて偶然とある酒席で一緒のテーブルを囲んだときの,丸刈りの元気な顔とは、大分様変わりしている。
内容は、「随筆丹下左膳」もあり、ブレヒトを、ロルカを、ネルーダを、アンリ・ルソーを語り、また柳田国男を語り,海太郎を,花田清輝を、野間宏を、堀田善衛を語っている。
なかでも関心があったのは「菅原克己」。この詩人には<詩の方法>をやさしい言葉でいろいろと教えられた時が多かった。
<詩の方向性>とでもいうものは、前に小野十三郎の書いたもので読んだ気がする。
この菅原克己の戦前「赤旗」を刷るような過酷な非合法活動をくぐって来た詩人とは思えない(あるいはだからこそ)人やものごとに対する優しさには、特に感じるものがあった。
長谷川四郎は書いている。「そして菅原克己には、さらに、私にはないもの−国家権力から拷問をうけた心の傷あとがある。戦前,戦中,戦後と,このような歴史をへてきて,菅原克己は今や無名の若い詩人たちといっしょに、共同の仕事をつづけている。民主主義というが、主義としてではなく,うまれながらの気質として,そうあらざるをえないのが菅原克己である。
けっして大声をあげることはないし、告白めいたこともやらない。無言で,身振りで,いやなことはいやだという人物だ」
菅原克己もその奥さんの葬式は、いずれも後から知った。そして長谷川四郎もまた。 (08.1)
▼追記
某日「ときには積ん読の日々/吉上恭太」と云うエッセイをネットで発見,
([本]のメルマガ2010.4.15.発行vol.390)
その第10回 げんげの花がつないでいくーで以下のことを知った。
<菅原克己という詩人を知らなくても、高田渡の「ブラザー軒」を聴いたことがある人は多いのではないかと思う。菅原克己は「ブラザー軒」という詩の作者だ。(中略)
毎年、4月の第一土曜日に谷中にある全生庵という寺で「げんげ忌」という、菅原克己を偲ぶ会が催される。
今年で22回を数えるのだが、毎年のように100人近い人が訪れる。
元々は新日本文学会の人や、菅原さんが教えていた詩の教室の人など菅原さんと直接おつきあいがあった人たちが集っていたと思うのだが、最近は、たぶん、半分近い人が生前の菅原克己に会ったことのない、新しい読者なのではないかと思う。
高田渡の歌で菅原克己を知り、げんげ忌に来るようになったという人も多い。高田渡も3回ほどげんげ忌にやってきて「ブラザー軒」を歌ったこともある。(後略)>