ミョンヘ (YA! STAND UP)

  • 影書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877144883

作品紹介・あらすじ

両班家の娘14歳のミョンヘ。 
両親はいつまでも子ども扱いする一方で、「早く嫁に行け」とうるさい。東京に留学中で、地域で一番「文明開化」した兄の口添えで、「結婚までの少しのあいだ」ミョンヘも首都・京城の女学校へ通えることになった。
京城では、少々口は悪いが「結婚なんてバカみたいなまねは絶対しない」と言うナッキョンや、女性ながら米国留学も果たし医師の仕事を通じて日々貧しい人を助けるシン先生と出会い、ミョンヘも自分の生きる道について少しずつ考えを深めていく。

しかし、時は日本の植民地支配が9年目に入った1919年。厳しい武断統治が続き、朝鮮の人びとは自由と独立をもとめて立ち上がる準備を進めていた。そしてついに3月1日、京城のパゴダ公園には数千人の学生や民衆が集まり「朝鮮独立万歳!」をさけび始める。この「3.1独立運動」はその後、朝鮮全土へと拡大していく。
そんな時代のうねりの中で、ミョンヘが見たものとは……。

家父長的で男尊女卑の価値観が根強く残る一方で近代化の波が押し寄せる朝鮮を舞台に、悩みながらも時代の制約をのりこえ、旧習に立ち向かって医師になる夢を育てていく少女を描く韓国のYA小説。第11回チャンビ「すぐれた子どもの本」創作部門大賞受賞作。
ボールペンのみで描かれた繊細で深みのある絵も、作品と一体となって叙情的な美しさを添える。

感想・レビュー・書評

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  • 両班家の娘、14歳のミョンヘは、早く結婚させたがる両親を東京留学中の次兄ミョンギュの口添えで説得し、妹ミョンソンとともに京城の女学校に通うことになった。
    日韓併合後の京城では、日本人巡査がにらみをきかせており、ひとり外出したミョンヘは危うく万引容疑をかけられるところだった。宣教師の女学校の授業は英語中心で苦労もしたが、心強い友人もできた。教師のすすめでミョンヘは東大門婦人病院の通訳ボランティアをすることになる。そこでミョンヘは、女性の無知と人権意識の低さに驚くとともに医学への関心を増していく。
    東京留学中のミョンギュが三一万歳運動に参加するために帰国した。友人ナッキョンも太極旗を描いて手伝っている。ミョンヘも、女性も祖国を憂えなにかすべきだとの考えから、太極旗を描き、運動に参加する。

    日本統治下の朝鮮で、自由を求め、自分の道を見つけ進んでいく少女を描いた物語。






    *******ここからはネタバレ

    家庭内でのミョンヘの虐げられっぷりと日本人の蛮行に胸を痛くして読みました。

    これを読むとヨンジやコンジ等、韓流時代劇で表されている朝鮮半島独特の慣習もわかります。
    「82年生まれ、キム・ジヨン」でもありましたが、男尊女卑が厳しかったこともよくわかります。そして、家に縛られているのは、女だけではなかったことも。

    長兄の本家への養子縁組、女子の早期結婚と教育への無理解、家制度だけでなく、三一万歳運動でのようすも知ることができます。

    ストーリー的には、虐げられた少女が、自分の情熱で道を切り開いていくありきたりの話ですが、この本では日本人が加害者側に立っているのが辛いところ。
    別の面からの歴史を知るにはいい機会となるのではないでしょうか。

    「半分のふるさと」のように、日本人にもいろいろいることも書いてほしかったとも思いますが、きっと当時の感覚としては、「日本人=悪」だったのでしょう。


    韓流ブームで韓国ファンの若者たちが、これを読んで朝鮮半島の人々の「恨」を理解できるかどうかはわかりませんが、理解の一助となってくれたらいいなと思います。

    平易な本なので読める子なら高学年からいけます。

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著者プロフィール

詩人。詩集に『数学者の朝』(クオン、2023)、『極まる』、『光たちの疲れが夜を引き寄せる』、『涙という骨』『 iへ』ほか。エッセイ集に『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン、2021、第8回日本翻訳大賞)、『心の辞典』ほか。露雀洪思容文学賞、現代文学賞、李陸史詩文学賞、現代詩作品賞などを受賞。

「2023年 『奥歯を噛みしめる 詩がうまれるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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