- Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877281915
感想・レビュー・書評
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尾張藩の七代藩主となる徳川宗春(松平通春)の生涯を描いた小説。
上巻では、通春の青年時代の話であった。尾張藩主の息子であるが、部屋住みの責任のない立場。それゆえ自由に振る舞っていたのである。下巻ではその後の話。
跡取りのない大久保松平家の養子に入って、小藩の大名となった後、尾張藩の藩主である継友が麻疹で他界。尾張藩主となる。
尾張藩主として、名古屋を治めるにあたり、祭りごとを派手に進めたり遊廓を作ったりと、何事も派手で華やかにした。
しかし、質素倹約を旨とする八代将軍徳川吉宗とは、苦々しく思っていた……。
明るく華やかで、かぶき者の宗春(通春)と、対照的に質素な吉宗。
その溝は深く……。
下巻では宗春が尾張藩を継いでからの話となります。現代では当たり前な経済活動のことを、江戸中期にすでに理解していた点、すごいお殿様だったのですね。
ただ、時代の流れといいますか、そのときでは悪いことだとなってしまい、なんかやるせなく感じました。
著者の清水義範さんが、名古屋出身で、その名古屋の中日新聞で連載されていたため、たいへん名古屋贔屓です。
所々、現代の筆者の話が出てくるのが独特ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
清水義範の本はずいぶんたくさん読んだ。でも、この 尾張春風伝 は、読みたい読みたいと思っていてもなかなか読み始める事ができなかった。ふだんは何冊かの本を、つまみ食いをする様に、そのときの気分に任せて平行して読んでいて、一冊に絞って読む、ということがなかなかできないでいた。でもこの本だけは、読むならば一気に、と思っていたので。尾張地方にゆかりのある人は是非読んでみてください。清水義範の本を読んだことの無い人の方が返って面白いとも思います。とても分かりやすく、親しみの沸く作家です。