永遠の仔 上

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2693
感想 : 310
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877282851

作品紹介・あらすじ

再会は地獄への扉だった。十七年前、霧の霊峰で少年たちが起こした聖なる事件が、今鮮やかに蘇る-。山本周五郎賞受賞作から三年余。沈黙を破って放つ最高傑作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • しつけなのか、虐待なのか、老いと、代々受け継がれてきた、トラウマとの闘い。
    下巻に続く

  • あまりにテーマが深刻で、でもストーリーがとてもドラマチックで、
    心揺さぶる場面が多いから、しばらくはうっかりしていた。

    これは日本推理作家協会賞を受賞した上に、
    「このミステリーがすごい!」の一位にもなっている小説だということを。
    つまり、ミステリーの要素も充分にある、ということを。

    天童荒太氏の長編小説 永遠の仔である。

    長編も長編、文庫本では5巻になっているから、読み始めるときには少し躊躇した。
    この、辛い世界に、普通の本の5倍もの時間、わたしは浸かることができるのか。

    しかし、不安をかかえながらも読み始めると、もう本から顔を上げることができなかった。
    夢中になって読んでしまったのは、話の続きが気になるから、といった単純な理由ではない。
    もともとミステリー要素に関心の薄いわたしは、多少の謎を気にもとめなかった。

    生まれること・生きていくこと・生き終えること
    その3点が、不足なく描かれていることに、圧倒されたのだ。

    「人の悩みを、相手の立場になって、真に感情移入して聞くことは、大変なことだからね」
    という言葉があるように、あまりに重い現実をかかえる登場人物と、真に向き合うことは大変だった。

    でもこの作品は、真に、自分の心を添わせて読むよう、要求する。
    相手に心を添わせることを、もちろんこの読書中だけでなく、
    日々の生活の中でも意識して行わなければと、自然に精神教育されていく。
    押しつけがましさはないけれど、拒むことのできない、揺るぎない倫理。

    どこかで見たことのあるゲーテの格言も、特別な重みを持って心に響いた。
    「われわれにはいろいろ理解できないことがある
    生きつづけてゆけ
    きっとわかってくるだろう」

    そして、日本推理作家協会賞で、このミス一位である。
    意外性充分なストーリーであるうえに、事件の真相にはすっかり驚かされた。
    また、描かれる人間の誰もが繊細だから、些細な出来事でも過激な出来事でも、奥行きのある深い印象となった。

    五木寛之氏は、この小説のことを
    「小器用な解説を拒む謎、不可侵の核を抱いて成り立つ小説である」
    と表現している。

    幼児虐待も老人看護も、社会問題とはいえ、まったく無関係・無関心でいられる環境も多い。
    実際は、そういった問題と直面している人のほうが、圧倒的に少ないのではないかと思う。
    人それぞれ、かかえている問題は様々だろう。
    でも幼児虐待や老人看護の問題で、現実には悩んだことのない人も、事態の深刻さを知るべきなのだ。

    この重く苦しいテーマを、小説としての味わいを伴いながら世間に訴えかけてくれるため、
    そのために、優希たちは誕生した、とわたしは思いたい。
    そうでないと、永遠の仔たちの存在が、あまりに悲しすぎるから。

  • 長い…。なかなか話が進まないように感じられてまどろっこしく、途中から流し読みしてしまった。なんとなく不穏な気配にうまくのっていけなかった。

  • 登場人物が多いし、時空をまたぐので、やや読みにくいかなって思います。ただ、情景描写がリアルでゾッとする面白さでした。はやく続きが読みたい。

  • トラウマが人生を支配してしまう哀しい話

  • もう、何十年も昔に、もんのすごい本好きの人から、絶対読め、って言われて、もらって、読んだ。

    舟越桂の彫刻が良い。

    天童荒太、って、演歌歌手みてーな名前だな、って思う。

    上下巻あって、ページ数が多いんだけど、物語としてよくできてるので、引き込まれて、イッキに読んだ。

    読んでて、重くて、辛くて、感動して、泣いたんだけど、その物語の展開の上手さからくる「泣かせる力」みたいなものが、イヤだった。

  • 初めて読んだ時はかなり衝撃を受けた。心を抉られるような作品。

  • いたましい、あまりにもいたましい

    舟越桂さんの彫刻作品の表紙が余計になんか怖い…かなしい…
    もののように扱われた子どもたち…

  • 重い…いろんな重い話を読んできたけど、これは桁違いに重いな。
    動物のあだ名をつけられた児童精神科の子どもたち。元々の気質で発症した子もいるだろうけど、多くは家庭の要因で心を病んでしまった子どもたち。もしも十分な愛情を受けて育ったらどんな可能性を、どんな未来を生きていたのか、と思うとやりきれない。
    この3人が退院登山の時に何が起きたのか、雇われママと虐待母を殺したのはこの3人の中の誰かなのか、優希の弟はこの後どんな行動をとるのか、優希はどうして児童精神科に入院するくらい心が追い詰められてしまったのか、気になることがたくさんある。下巻が楽しみだけど、ちょっと怖い。

  • 内容は非常に濃い。
    親として、これまで子供に自分の価値観を押し付けてなかったか、など考えさせられるところもあり、自分の生き方として、本当にこれでよかったのかと思うところもあり、そして、今後、どう生きていくのかということなど。
    内容は、暗い感じで進み、起こる事件自体もかなり重たいが、登場人物の会話などが軽快で、読んでいて落ち込むこともなかった。また、物語は、子供時代と大人になった現在を行ったり来たりするが、子供時代の話の時は子供時代のあだ名でストーリーが進むなど、構成も分かりやすく、こんがらがることもなく、快適に読めた。
    また、ストーリー的にも、えっ、そっち!?みたいな、どんでん返しみたいなものもあり、とても楽しめた。
    全2巻

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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