- Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877283407
作品紹介・あらすじ
夢を捨て、愛を捨て、両親を陥れた人間への復讐だけを胸に生きてきた女性実業家が、病の淵で初めて見つめた己の心の闇。十年目の「夜会」をベースに高らかに唱い上げる中島みゆき初の長編叙情詩。
感想・レビュー・書評
-
『夜会』は未観賞ですが、中島みゆきさんの詞が好きで本書を手に取りました。
行間といい文字数といい、初見は「詩集かな?」と思って読み始めたのですが、読み進めれば行間すら物語の一部なのだと確信する内容の濃さ。
すごい。もう本当に、壮絶な言葉の世界です。
”どんな人にも 必ず夢は叶う 一生にひとつだけ叶う
引き替えに 一生の何もかもを失ってもかまわない約束で
夢は 一生にたったひとつだけ叶う”
作中のこの言葉が物語の芯でありギミックであり、総てであります。
言葉の美しさも然ることながら、物語の完成度も素晴らしいです。
ミステリ好きにもおすすめ出来る展開で、彼女の復讐がどうなるのか、たった一つの夢は叶うのか、続きが気になって一気読みしてしまいました。
読み終わって呆然。もう一度ページを捲り直して、ああそういうことだったのかと呑み込んで、呑み込んでも呑み込んでも溢れてくる切なさに、夢にまで見る始末。本当に壮絶です。
シンガーソングライターとしての中島みゆきさんしか知らなかった私には、本書は強烈でした。
今後はストーリーテイラーとしての彼女の一面を、もっと知っていきたいと思います。
夜会観て見たいなぁ…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2019年3月11日購入。
-
人の情念、そして夢幻。1行1行が胸に突き刺さり、一言一言が胸をえぐる。永く詩人として歌に携わる著者は、やはり言葉の力を知っている。物語の行方を知っている。今あらためて、中島みゆきと同時代に生きた幸せを噛みしめる。
詩であり、小説であり、ミステリーであり、文学である。どんな小説家の言葉よりも、みゆきさんの言葉は胸に刺さる。記憶に残る。すべてを包み込み、すべてを語る海。そしてすべてを飲み込む海。人生のすべてと引きかえにたったひとつだけ叶う願い。それを憎しみではなく、彼女は新しい命の誕生に捧げた。その決断は、苦しく、切ない。だけど、物語にとっては最高の結末だった。そして、1960年・・・。だめだ。もう涙が止まらない。
図書館の「詩歌」コーナーにありました。「小説」コーナーに置いて、もっとたくさんの人に読んでもらいたい本です。 -
【目次】
序章 穏やかな海
一、 雪を抱く海
二、 孤船
三、 崖
四、 親展
五、 爪
六、 霧の橋
七、 献灯
八、 影人形
九、 人さらいの海
十、 彫
十一、 此岸
就床 海嘯 -
借本。
長編叙情詩ですが、小説みたいに読めました。
頁をめくる指が加速していく本でした。 -
図書館で何気なく手に取った本。
小説と言うより叙事詩? 期待はしていなかっただけに読了感は思いのほか良かった。
この本の元になった「夜会」という舞台が気になる。 -
中島みゆき氏の舞台『夜会』をベースにした長編叙情詩。
あるホテルのオーナーの義娘は、自分の本当の両親が旅館を経営していて、悪意ある者の陰謀で乗っ取られ、死に追いやられたと知ります。
彼女の長い復讐と、それを見守る海。
筆者独特の美しい言葉遣いで語られる不思議な物語です。
『人を 最後に裁くのは 人では ありません』
という梁医師の言葉が好きです。 -
散文詩。というジャンル設定ですが、小説として読めます。起承転結がハッキリしているので安心して読めますよ。