破滅の美学―ヤクザ映画への鎮魂歌(レクイエム) (幻冬舎アウトロー文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877285067

作品紹介・あらすじ

率直に言って、わたしはヤクザは嫌いである。しかし、個々人で見ると、どうしてあの人たちはあんなに魅力があるのだろう-得体の知れない魅力にとりつかれ、取材を重ねたヤクザの世界。日本映画屈指の名作「仁義なき戦い」の脚本家が、「社会の屑」と呼ばれ、ひとたび葬られたら二度と掘り起こされない男たちの闇と狂気を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は東映の任侠映画、ヤクザ映画全盛時代を代表する脚本家である。この本は、そんな映画作りのエピソードというより、シナリオ執筆の事前調査で知ったヤクザの世界を描くことに重きを置いている。そして、その内容が非常に重くかつ面白い。さらに加えて、著者の個人的経歴と思い入れが反映されて、戦中・戦後に青春時代を過ごし男の人生をまざまざと見せつけてくれる。

  •  復刊しているのを知らず、古本で買ってしまいました。これで二回目の復刊です。
    ということは、やっぱり名著だということですね。

     ちなみに幻冬舎版は絶版です。

     著者は東映で数々の脚本を書いてヒットを飛ばし続けた名脚本化。最も有名な
    のは、やはり「仁義なき戦い」でしょう。

     時代劇〜任侠〜実録路線といった流れでその緻密で精力的で危険な取材秘話
    などを、ヤクザの変遷を実録的に読ませてくれる。

     非常に興味深く面白く読めました。

     自信の軍隊経験も交え、ばくち打ち(ヤクザ)と軍隊の関係などほんとにおもしろい。

     東映ファン必読。

  • 「破滅の美学~ヤクザ映画への鎮魂曲~」
    これ、本のタイトルが、あまりにもひどいと思いませんか?
    読んだら、けっこう面白い素敵な本なんです。タイトルがあんまりだよなあ...。
    せめて、「ヤクザ映画の素敵な舞台裏」みたいなニュアンスとか、「仁義なく戦うおかしな面々」とか、そういう感じにした方が、客層が広がるのでは...。
    1997年に幻冬舎から出し直した本だそうなので、そのときにもうちょっと、何とかならなかったのかなあ...。
    #
    高倉健さん主演の「日本侠客伝」という映画が1964年。
    これが、健さんをスターに押しあげて、以降の任侠映画やくざ映画のブームの先駆け。
    それから大まかに言うと、「任侠映画」の流行がが10年。つまり、マキノ雅弘、高倉健、鶴田浩二、藤純子、池部良...という季節。
    その後、「実録系やくざ映画」の流行が5年くらいか。つまり、深作欣二、菅原文太...という季節。
    この本は、「任侠映画」と「実録やくざ映画」の両方に股をかけて、君臨した脚本家の笠原和夫さんの書いた本です。何と言っても代表作は「仁義なき戦いシリーズ」。
    (それ以降も凄い仕事を多数されていますけれど)
    #
    笠原和夫さんの仕事っていうのは凄いなあ、というのは以前から「一般教養」として知っていて。
    自伝エッセイみたいな本もあるので、いつかは読んでみようと思っていました。
    それが今回。
    今年後半、読書の方でなぜか突然の「西洋史」マイブームが起こり。
    その流れで「仁義なきキリスト教史」というかなり変化球な本と出会い。この本は映画「仁義なき戦いシリーズ」の世界観をパロディ化してる本だったんです。
    そんなご縁で、映画を再びDVDで楽しんでしまったり。そして勢いで本も読んでしまいました。
    エグ味もあるけれど、総論は面白い。
    自伝的、お仕事振り返りエッセイとでも言いますか。
    #
    笠原和夫さん(1927-2002)は、終戦時に18歳。海軍下士官だったんですね。
    という訳で、軍隊という場所を知ってから敗戦。
    いろいろあって映画会社東映に就職、脚本家になって、娯楽作を手掛けているうちに、任侠やくざ映画を担当します。
    それまで、別にやくざや任侠に詳しくもなければ愛着も無かった。
    ところが、ご縁でしょうか才能でしょうか、任侠やくざ映画のブームを担う存在になってしまいます。
    そうなると、一部インテリからは馬鹿にされ、ヤクザ扱いされ、映画賞からも見放されます。
    そんな状況に「なにくそ!」と反発しながらも、「面白い人間ドラマの宝庫だ」とわくわくしながらも、
    「でもヤクザなんてそりゃ、カッコ良くも無い、愚かな人種だよなあ」と幻滅したり、
    「また同じパターンの、実録ってうたいながら完全架空な娯楽ヤクザ映画かよ...やってられねえよ」と塞ぎ込んだり。
    それでも、十年以上、必死に向き合ってきてしまった相手として、理屈を超えて、
    「ひりひりする修羅場の中で、馬鹿に生きるみっともないヤクザの、時折見せる心意気、男気、美学」みたいなものに、どこか理屈を超えて愛情をもってしまっていたり。
    そんな、笠原さんのうらはらで矛盾しまくりの心情がよく描かれています。
    そんな揺らぎが人間臭い。
    さすが、脚本家。
    #
    と、言う訳で、笠原さんの自伝エッセイであり、戦後から70年代くらいまでの、映画界の一部の舞台裏ルポであり。
    そして、その時代のヤクザ、暴力団の生態や、際立った逸話のこぼれ話であり。
    (例えば、「実際こういうヤクザがいて、こういう事件があって、それを聞いたので、アノ映画のあの場面を描いた、みたいな)
    それはそれで、非常に面白い。
    日本映画ファン、日本映画史ファン、には、たまりません。
    これだけでもう、ごはん3杯は軽くイケます。
    それに加えて、それだけでなく。
    すごいなあ、と思うのは、「そもそもヤクザとか」という俯瞰的目線がありまして。
    笠原さんが恐らくはやくざの取材をする中で学んだ、よもやま話。
    ●江戸時代の、ブルジョアジーの用心棒的なヤクザだった、「鳶」という仕事の仕組み。
    ●たたき売りをお祭りでする「テキヤ」。今で言うとパチンコと競馬競艇の運営者みたいな「博徒」の違い。
    ●国定忠治は実は強盗団の首領。
    などなどの、歴史的ふむふむ話が豊富にあり。
    一方で、「ヤクザ」から敷衍して、「アナキズム」「破滅の美学」の系譜、明治大正昭和の日本のアナキストテロリストの系譜。
    さらにそこから、「敗北の美学」?のような、昭和の軍人のお話。
    と、実に豊富な「考察」「思考」「取材」の記録。
    概ねで言うと「ヤクザ映画」「東映映画」=軍国、右翼的、、、という先入観があって。
    当たらずとも遠からずだったりするんですが...。
    笠原さん自身、世代としては、「昭和軍隊の理不尽不条理を知り尽くして、左翼的マルクス主義スバラシイという考え方がインテリ層には一般的な時代を過ごして来た」という人なんです。
    そこからたまたま、ヤクザ映画に仕事がなっちゃった。
    そして、インテリ左翼リベラルから、不当なバッシングを受けて見下されてきた。
    そんな中で、どうしてどうして、色んなことを考えて、取材して、掘り下げて来たんだなあ、と思わされました。
    理屈の好み趣味はありますが。
    右翼だ左翼だ大義名分だ、とのたまわっても所詮は人間。
    偉そうなことを言っても欲と金にまみれた生き物なんですよね。
    そこには必ず掘っていくと、歴史があって経緯があって理由があって。
    必ずどの時代も、運の無い、所得の低い階層から暴力的な、あるいは暴力によるプロテスト、憂さ晴らし、自己証明みたいな情熱が迸って。多くの場合暗いマイナスの末路になっていく。
    そんな泥の中にも、実際に必ずどこかには蓮の花が咲いていて、泥を描くのは花を描くことだし、花を描くためには泥が必要...。
    そんな世間と政治と組織と個人の、裏も表も、ヘドロも花も、含んだ上の考察、取材。
    大人しいだけではなくて、時折、ぞっとするような矛盾とか情念みたいなものを文章から感じるんですが、そんなエグ味が豊饒な。
    ウニとかサザエ、牡蠣みたいな。
    お子様には向かない一冊。
    期待値を上回る、オモシロドキドキな読書。そして、その向こうにオモシロだけで済まない、ふむふむや、背筋の凍る思いも、たまに。
    さすが、まるで映画「仁義なき戦い」を見ているかのような味わい。パチパチ。

  • この本は ヤクザの実像と 映画で作り上げられた ヤクザの虚像の
    間を 具体的に 取材しながら、そして 映画シナリオとして
    作り上げていく 苦心を つづっていく。
    そのなかで、日本というものが 浮き彫りになっているのが
    何とも言えず、心憎いほどの 編集力である。

    男の中の男がいなくなった。
    という嘆きが なんともいえなかった。
    戦争を体験して むごたらしい現実をくぐり抜けてきた人と
    安穏とした 平和の中で、人を殺す ということも、
    戦争をする ということも、経験してこなかったことは、
    幸せであると同時に、修羅場を経験していないことでの
    人間形成のものたりさも感じるのである。

    ヤクザのトップの風情が なんともいえないほど いいなぁ。
    清濁合わせのんで、命をも捨てる組員の中で
    心服させ、統率する すごみが 全く感じられないほどの
    強さが 漂っている。風格というか、人の値打ちなんですね。
    この人のためなら、命を捨ててもいいと思う心がつくられる。

    オトコってなに?
    という問いかけほど わすれられた問いはない。

    あとがきで 浅田次郎が言う
    『男には法律に優先する道理がある。
    男にはカネでは売れぬ意地がある。
    男には命より大事な名前がある。』

    ヤクザ映画とは男とは何かということに対しての
    『鶴田浩二から菅原文太にいたる壮大な教育映画』

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