イン・ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫 む 1-9)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877286330

作品紹介・あらすじ

夜の性風俗ガイドを依頼してきたアメリカ人・フランクの顔は奇妙な肌に包まれていた。その顔は、売春をしていた女子高生が手足と首を切断され歌舞伎町のゴミ処理場に捨てられたという記事をケンジに思い起こさせた。ケンジは胸騒ぎを感じながらフランクと夜の新宿を行く。97年夏、読売新聞連載中より大反響を引き起こした問題作。読売文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍さんの作品は初めて。
    カンブリア宮殿の人と同一人物と知ったのも
    少し前…笑
    1年くらい前に買ってたのを1日かけて読んだ。

    これは本当に同じ日本なのか、と思って
    いかに自分が平和ボケしているなぁって…笑
    読んでて感じた攻撃性や不気味という感覚が
    社会の風潮やメッセージを強く感じた。

    10代のときのほうが、こういう本を欲してた
    気がするのは青年期特有の脆さや凶器とか
    あったからなのかなあ。それとも今の
    自分のメンタルが落ち着いてないのか笑
    コロナの緊急事態宣言が終わったら
    もう一度読み直してみよう!

    でも、その時代の流れを掴むのにいい気がする。

    かなり残虐性が描かれているし、気持ちを抉られた
    感覚もする中で、他者とのコミュニケーション、
    生きることに対してもっと考えろという、訴えも
    感じて考えさせられた。

    フランクがホラー映画が好きな人は刺激を欲しがり、安心したいんだ。どきどきする映画が終わって自分や世界が依存としてちゃんと存在していることで安心する。と言っていて、なるほどなあと。

    あと想像力の話でポジティブに発揮されれば
    芸術や科学を生む、ネガティブに発揮されると
    恐怖や不安、憎悪という形になり自身に返って
    くると…。そういうネガティブな感情も活きる
    前向きさが欲しいと思った!
    自分は危険回避が出来たり
    ネガティブって悪いことじゃないと思ってて
    だけど前向きには生きたい。



  • 読んでてただ面白いのが一番だと痛感した作品。
    怪しいアメリカ人と風俗アテンダーの奇妙すぎる3日間。
    色々な可能性を考えてしまう情報の少なさ、アメリカ人のとにかく不気味な描写がとても良かった。
    作者の思想も、戦争モノより余程纏まっている。
    社会下層の存在意義を問う、『限りなく透明に近いブルー』の主題をより推し進めた様な完成度高い作品だった。

  • すっかりはまってしまった村上龍作品。相変わらず文章から目をそらしたくなるくらいどろどろな描写がすごかった。これまでもいくつか著者の本は読んだけれども、欧米諸国との"普通"の感覚の違いとか、地理的にも歴史的にも閉じた国にであることをいつも痛感させられる。だからといってアメリカの"普通"がいつも正しいわけではないし、欧米の考え方を丸ごと持ってくるのは違うと思うけど、やっぱりもっと本質的なことを考えることは必要だと思った。今の日本は見栄とかそれこそ煩悩(もっとも、より程度の低いものである気はするけど)みたいなものに憑りつかれている気がする。
    あと、どうしてホームレスは嫌な匂いがして赤ちゃんは頬ずりしたくなるのは全世界で共通なのか、というところは印象的だった。

  • この小説を語る上で何かと残虐性が取り沙汰されがちであるが、単に残虐なだけの小説ではない。
    フランクは残虐な殺人鬼であったが、一連の犠牲者には共通する特徴があった。「みんな誰かに命令されて、ある種類の人間を演じているだけのようだった。おれはあの連中と接しながらこいつらのからだには血や肉ではなくて、ぬいぐるみのようにおがくずとかビニールの切れ端がつまっているのではないかと思って、ずっと苛立っていた」彼はこのように空虚に生きる人々を切り裂いているのだ。
    ウイルスの中には動物のDNAのなかに入り込み、時として生存に有利な突然変異を誘発するものがある。フランクは自分をウイルスのようだと言う。凄惨な殺人事件は人々にショックを与え、深く考えさせる為だ。
    本作全体を通じて、意志を持たずに生きることへの痛烈な批判を感じた。意志を持たずに生きるとは、他人とのコミュニケーションや、主体的に考えることを放棄することである。今自分は意志を持って生きられているのか、自分を見つめ直す機会をくれた一冊。

  • グロテスクな描写もけっこうあるサイコホラー。
    「キッチン」の直後に読んだから落差がすごかった。笑

    これ昔一度読んだのだけど(手元になかったからたぶん図書館で借りて)こないだある人と本の話題になったとき、その人が村上龍が大好きって言ったのをきっかけに思い出して強烈に読みたくなったから今度は買った。
    グロテスクなのってあんまり得意じゃないから、読んでる途中かるく後悔しつつ(笑)、でも先が気になって一気に読んだ。
    ほんのりだけどミステリ要素もあり?

    合法ではない夜の性風俗ガイドをしているケンジに、アメリカ人のフランクという男から依頼が入る。
    実際会ったフランクの顔は奇妙な肌に包まれていて、時折ぞっとするような恐ろしい表情を見せる。その顔は、売春をしていた女子高生が手足と首を切断されて歌舞伎町のゴミ捨て場に捨てられていたという事件の記事を、ケンジに思い起こさせ…。

    ネタバレになっちゃうからあんまり内容は書けないけれど、日本は平和な国なのだということを改めて思った。
    ものすごく貧しい環境じゃない限りは強い意志や目的を持たなくても何となく生きていけるし、何かひとつの宗教を強く信じるお国柄でもない。
    そういう“何でも受け入れて”“ぬるい”ところが、そうではない国で育って苦労している人から見たら許しがたく映るかもしれない。
    自分自身もきっとそうだと思う。多少の苦労はあれど、明日生きるか死ぬか、というほどの思いは、今のところしていなくて、確実に平和ボケしているだろうから。
    フランクと中南米の女とのエピソード、そしてフランクの独白の言葉たちは、心に深く刺さった。

    グロテスクな描写も、印象的な言葉も、妙に後に引きずる小説。
    “問題作”と言われたのも頷ける。

  • 不気味さと過激さがすごいんだけど残虐シーンはそれほどなくてあっけないというか。過去のむごい行動も淡々と語られているから、興奮というよりは冷静に考えさせられる。
    ケンジが20歳とは思えないほど落ち着いているし色々考えている人で感心したし、日本の国柄についても考えさせられた。はっきりノーと言わない、なんとなく生きているカンジ……

    話が気になってずんずん読み進めてしまって、ちゃんと消化出来なかったかんじもする。また読みたいかも。

  • リアルな悪夢の様で何と臨場感に満ちた作品だろう。フランクのキャラクターがすごく魅力的。年末の特別な雰囲気から嫌な予感が漂っている。村上龍の傑作の一つ。装丁も不気味な静けさを漂わせている。

  • 新聞連載時に途切れ途切れながら読んだ印象はただ漠然と「怖い」でした。

    改めて読んで「生々しい」という印象を抱きました。

    淡々とした文なのに胃と肌に粘つくような感覚が離れません。ただ、後半にフランクが過去の告白を始める頃になると、不思議とその不快感は消えていきます。

    酷く生々しくて、理不尽で、絶対的な世界観。


    印象的だったのは殺人現場でケンジがフランクからナイフを突きつけられるシーン。
    「羊たちの沈黙」でクラリスがレクター博士から質問の答えを求められるシーンと重なりました。
    「NO」と答えたケンジと求められた問いに答えを口にしたクラリス。
    二人の違いは性別によるものでしょうか。

    • kotonecchiさん
      「イン・ザ・ミソスープ」って何新聞に連載だったのでしょう?
      私は単行本を買った覚えがあります。嵌っていましたから龍さん。
      不快な話でした...
      「イン・ザ・ミソスープ」って何新聞に連載だったのでしょう?
      私は単行本を買った覚えがあります。嵌っていましたから龍さん。
      不快な話でしたよ。そう、「羊たちの沈黙」がありましたしね、サカキバラが発想の源と聞きましたが。もっとスタイリッシュに書けないかなぁって。犯罪がスタイリッシュになっては困るんですが…。でも、私は、この小説、ラスト一行で、傑作ですって評価を変えました。フランクがケンジに白鳥の羽を渡すんですよね、たしか。本が手元にないので、確認できませんが名文だと思い唸りました。
      書く側としては、ラスト一行にやられています。龍さんの小説のラスト、第三位です。一位は愛幻。二位がコインロッカー。三位がミソスープ。
      本当に、ラストの素晴らしさを発見させてくれた人です。
      世界的には、「華麗なるギャツビー」のラスト二行が最高と、尊敬するj・アーヴィングが語っており、暗唱していましたが、今はイメージしか覚えていませんね。でも、素晴らしいです。とりとめもない話でごめんなさい。また、遊びに来ますし、来て下さい。ありがとう。
      2023/03/21
    • kotonecchiさん
      技法のブクログクラブのメンバーです。フォローを願います。
      hinahina311さん
      703naomi307さん
      tabibito77...
      技法のブクログクラブのメンバーです。フォローを願います。
      hinahina311さん
      703naomi307さん
      tabibito777さん
      香坂壱霧さん
      仲津さん
      豪徳寺修也さん
      ohamaさん
      1646486番目の読者さん
      事務連絡でごめんなさい<(_ _)>
      2023/04/15
  • 難しかった。ストーリー自体はわかりやすいけど、メッセージを感じ取るのが難しい。何となくわかった気がするけど、振り返ってみると全然わかってない。とにかく難しかった
    ストーリー自体は単調だけど、フランクの不気味さに惹き込まれた。文章も読みやすくて、暗い雰囲気はかなり好きだった。

  • 再読。なにか暴力的な話が読みたい気分だった。凄惨なシーンばかりが記憶に残っていたが、いざ本を開いてみるとそういう部分自体はごく短くて、むしろ恐ろしいほどに本質的な話が詰まっていた。その内容はほとんど覚えがなくて、まるで初めて読む小説のようだった。本書が出版されてから20年以上が経っているが、2019年現在でも通じるテーマだと思う。インターネットやその上を走るアプリケーションによって、コミュニケーションのコストは著しく下がり、果ては伝達する意思らしきものも引きだしたように見える。しかし、伝えるべき何かを備えている人間は、そう多くはない。語るべき言葉を持たない人たちが、テクノロジーによって無理やり口を開かされている。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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