イン ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2558
レビュー : 232
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877286330

感想・レビュー・書評

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  • すっかりはまってしまった村上龍作品。相変わらず文章から目をそらしたくなるくらいどろどろな描写がすごかった。これまでもいくつか著者の本は読んだけれども、欧米諸国との"普通"の感覚の違いとか、地理的にも歴史的にも閉じた国にであることをいつも痛感させられる。だからといってアメリカの"普通"がいつも正しいわけではないし、欧米の考え方を丸ごと持ってくるのは違うと思うけど、やっぱりもっと本質的なことを考えることは必要だと思った。今の日本は見栄とかそれこそ煩悩(もっとも、より程度の低いものである気はするけど)みたいなものに憑りつかれている気がする。
    あと、どうしてホームレスは嫌な匂いがして赤ちゃんは頬ずりしたくなるのは全世界で共通なのか、というところは印象的だった。

  • グロテスクな描写もけっこうあるサイコホラー。
    「キッチン」の直後に読んだから落差がすごかった。笑

    これ昔一度読んだのだけど(手元になかったからたぶん図書館で借りて)こないだある人と本の話題になったとき、その人が村上龍が大好きって言ったのをきっかけに思い出して強烈に読みたくなったから今度は買った。
    グロテスクなのってあんまり得意じゃないから、読んでる途中かるく後悔しつつ(笑)、でも先が気になって一気に読んだ。
    ほんのりだけどミステリ要素もあり?

    合法ではない夜の性風俗ガイドをしているケンジに、アメリカ人のフランクという男から依頼が入る。
    実際会ったフランクの顔は奇妙な肌に包まれていて、時折ぞっとするような恐ろしい表情を見せる。その顔は、売春をしていた女子高生が手足と首を切断されて歌舞伎町のゴミ捨て場に捨てられていたという事件の記事を、ケンジに思い起こさせ…。

    ネタバレになっちゃうからあんまり内容は書けないけれど、日本は平和な国なのだということを改めて思った。
    ものすごく貧しい環境じゃない限りは強い意志や目的を持たなくても何となく生きていけるし、何かひとつの宗教を強く信じるお国柄でもない。
    そういう“何でも受け入れて”“ぬるい”ところが、そうではない国で育って苦労している人から見たら許しがたく映るかもしれない。
    自分自身もきっとそうだと思う。多少の苦労はあれど、明日生きるか死ぬか、というほどの思いは、今のところしていなくて、確実に平和ボケしているだろうから。
    フランクと中南米の女とのエピソード、そしてフランクの独白の言葉たちは、心に深く刺さった。

    グロテスクな描写も、印象的な言葉も、妙に後に引きずる小説。
    “問題作”と言われたのも頷ける。

  • 怖い、というのが率直な感想。本旨としては、自分の意思を示すことをせず(またはできない)、右へ倣えの国民性に対して警鐘を鳴らしているのかなと感じた。作中では、内容のないことばかりを言うような人物が次々と凄惨な殺され方をする。自分の意思を伝えることができないと、現実では殺されることはもちろんないけれども、周りからどんどん見捨てられていくことになっていくのかなと思った。
    時代背景が少し昔なので、今とは随分価値観がかわっているけれども、現代にも十分響く作品だと思う。
    改めて、自分の価値観や考えを大事にしようと思う。

  • 年末になるとなんだか無性に読みたくなる。

    近未来っぽくて、作品全体を覆う孤独なトーンは個人のツボに大いにはまる。
    余計な装飾を省いたミニマムな文章の中に、村上龍のメッセージがそことなく差し込まれる。
    主人公の生き方自体に、作者のメッセージなり価値観が含まれていると個人的に感じる。

    連載時に議論された「神戸連続児童殺傷事件」とかの比較は個人的にはどうでもいい。
    映画化にあたって、ヴィム・ヴェンダースがメガホンを取るそうだが、コンセプトは何なのか、
    舞台となる街はどこで、それをどのように描くのかなど興味はつきない。

  • 幾つか読んだ作品の中では、読みやすくて、わかりやすい。人間性の本質的煩悩の存在。あらゆる悪意に出くわしたときに、迎合主義を否定して対峙できる強固なアイデンティティーを持ってないと、単なるアメリカ人モドキになっちゃうんだね。

    個人的には、アムロを小声で歌う三番の娘は生かしておいて欲しかった...

  • 設定が若くて、入り口がホラーなもんだからぐいと引き込まれる/ IWGPのようなトラブル解決もののようなとっつきやすい入り口だった/ 後半にかけては猟奇的で観念的な内側の語りになって、最終的には勧善懲悪な終り方ではない/ 悪ぶった正義感をお題目にしているIWGPとはそういう点で大きく違う/ 好き嫌いあろうが、村上龍らしくてとても好きでした。

  • 2018年、49冊目です。

  • 村上龍的ホラーミステリ。殺人事件の解決までが描かれるのかなと思いきや、そこはやっぱり現代文学、結末は書かれません。でも途中で唐突に惨殺シーンが始まり、半分くらいのところで本性が露わになっちゃう訳で。不気味さやエグさは徹底してて、読み心地はかなり悪い。表紙からして薄気味悪さが漂っていて、そういう意味では期待通りの内容にはなってます。かくいう私も、背筋凍り系を期待して読んだクチだから、望み通りの作品とは申せましょう。

  • こちらも学生時代以来15年以上ぶりに読んだ作品。
    フランクというとても恐ろしい外人の話であることだけを覚えていましたが
    読んでいて気持ち悪くなるくらいの子細な殺人シーンは圧巻でした。
    手に汗握るというか緊迫感がありました。

    そしてところどころにあまりに馬鹿になってしまった日本人への
    村上龍からのアンチテーゼを感じました。
    結構しつこいのでこういうところは賛否両論あるのかもしれませんね。

    また、90年代の新宿歌舞伎町の風俗事情を知る上でも
    貴重な作品である気がします。
    インターネットが本格的に浸透する前なので
    今よりも情報に価値があった時代も感じます。

  • きっとこの人はこういう雰囲気の小説を書くんだろうなぁというのが伝わってくる。

    少し暗め、半アングラ的な世界の、少し不思議と、少し恐怖が入り混じる。
    気分が沈みながら、たまに少し高揚しつつ、やっぱり暗い。

    ただ、私がよく読む東野、伊坂、恩田、あたりとは根本的に雰囲気から違っていて、面白かった。
    より抽象論によった、話の内容とともに、雰囲気を楽しむようなものである印象。

    ああ、明日は会社だと思いながら読むと、その暗さからかどうにもこうにも進まない。
    だから明日は会社だと思わずに読む。
    そうすると進むのである。

    そして私は会社を休んだ。
    仕方のない話である。

著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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