群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫 や 4-3)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 151
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877287184

作品紹介・あらすじ

家族っていったい何でしょうね?たまたま血が繋がっているだけで、どうしていっしょに暮らしているんでしょう。-丘の上の一軒家に住む女三人。家族とも他人ともうまく関係を結べずに大人になった長女と、その恋人をめぐって、母娘の憎悪、心の奥底に潜めた暗闇が浮かびあがる…。恋愛の先にある幸福を模索した、ミステリアス長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 初出1995年。山本さんが一般文芸に世界を広げられた当初の作品。
    晩年作品に比べ(とは言っても私と同世代でまだまだお若い晩年なのが哀しい)、若干展開ありき、人物造形ありきの感は否めない。筆が青い印象。

    終始不穏で不安定な空気が漂う家族の物語。
    そこには山本さんらしい仕掛けが仕込まれていて、「青い芝生」のなかで育まれ何の欠けも不足もなさそうに見受けられる人々が心に抱える底知れぬ憎悪や愛情への枯渇が沸々と発酵していく様を物語の展開と共に描く。

    「家族愛」が揺るぎない盤石なものという神話が当然だった初出の当時。
    「毒親」という言葉も概念もなかった1990年代、豊かで知的な家庭に見える家族の玄関のドア一枚の内側で静かに何が起こっていたのかを描く山本さんの果敢な気概に想いを馳せる。
    親のことを悪く言うのはご法度だもの。

    今だから「胸糞悪い」家族の話と一蹴されそうだが、憎しみを重ねながらも互いに離れて暮らすことを忌み嫌い、悲しい結末に至った家族内の事件が最近立て続けに報じられると心が塞ぐ。

    「子が成長して親から独立する」これ、大事だと思うんだよなあ。何よりの親孝行。
    親のレゾンデートル(存在価値)は子どもを自分の思い通りに支配し、立身出世させることでもないし、子は親の介護要員でもないよなあ、と私は信じたい。
    そう言っているものの子どもたちの自立で空の巣症候群にならないよう、子ども離れ試行中なのですけれど。読書がよすが。

  • これは辛い。読み終わってからも悲しい気分のままでした。この世界から早く抜け出したいと思ってしまいました。最後はああ良かったと思える本が好きなのです。でも母親が怖いと感じることはとてもよく分かります。仕事をするようになるまでの人生と言うのはかなり視野の狭い世界を生きていると思うのです。社会に出て初めて自分の家の内情が客観的に見えてくる。私はそれを体験したので母親に逆らえない気持ちは理解できます。でも、それにしても悲しい作品でした。

  • *若干ネタバレ注意

    カウンセリングの話と、物語の展開を効果的に並行して伝えているのがさすがだなぁと思った。当初、カウンセリングを受けているのは主人公だと思い、中盤では母親かと思った。かとおもいきや・・・。これぞ、小説だからできる表現だと思った。
    それと、最後。主人公があそこまでしなければあの家から離れられなかったということに、とても共感した。時に人は、何かと決別するために、行き過ぎる所までいってしまわなければ、どうにも自分を止められなくなる。そういう弱さを抱えながら、もがいて苦しむ様子が、心に突き刺さった。
    山本文緒さんは、弱さや卑怯さ、卑屈さを抱え、ピュアで愚直すぎるほど真っ直ぐな人間を描くことに関しては、卓越していると改めて思った。

  • 得体の知れない家族間の闇に呑まれるようだった。
    ただ少し厳しいだけの母かと思ったら、とんでもなかった。
    家に縛り付けられた母娘3人の、ヒリヒリする不穏さに終始緊張感が漂っていて、これはホラーなのかしら、と何度か思ったほどだった。
    家族とは何だろう。支え合うはずが縛り付け合い、お互いが枷となる。家族でも奥底に抱えたものは見えないし、真に分かり合うことは無いかもしれない。何かをきっかけに全てが反転することだってあり得る。
    最後父親が幸せな頃の話をするのが、とても苦く切ない後味だった。

  • 初めて読んだ山本文緒さんの作品。どこで見かけたのか思い出せないけれども、たぶんどこかでレコメンドされていたのだと思う。

    母親の恐怖政治的な支配のもとで育った二人の娘とか、その父親など、複雑な家族関係が常軌を逸しているとは思うが、でも実際にこれに近しい家族は結構いるのではないかとも思う。家族の形態はいろいろあるなぁとも思えるし、家族は一番近い存在だけに非情にもなれるという点がこの話の根底にある気がする。なかなか面白かったので☆4つで!

  • 意外と心理サスペンスだったんだけど、なんかもうちょっと掘り下げてくれても良かったかも。

  • サイコホラーかと思っちゃったよ。
    というくらい、主人公さとるの思考回路がヤバい。
    鉄男との結婚を思い詰めるところが本当に怖い。。。

    母娘の関係の異常さも生々しい。
    でもラスト前に母親が「私だってこんなに妥協してやってんのにあとどうすりゃいいっていうのよ!」「何でも私のせいかよ!」みたいに言うところは、確かにそうだよなあ、、、と思う部分もある。
    次女という立場も大きいだろうけど、みつるは何とか育ってるわけだし。

    鉄男と母親が何で寝たのか、っていうかその出来事ってストーリー上必要⁇とか思っちゃうけど、それでさとるがキレるわけだから必要か。
    でもなんか唐突な感じがした。

    そして鉄男が嘘をついてたっていうのも、は?ってなる。
    結婚しようとか、今までのモノローグはなんだったわけ?
    やはり少し唐突に感じる。

  • ただの恋愛ものかともったら、結構病んでる小説だった。

    家事手伝いのさとると、彼氏の鉄男。
    もう立派な大人なのに門限を物凄く気にしたり、母親に逆らえない様子なのに、簡単に体を許してくれたりするさとるに、不思議に思いながらも惹かれていく鉄男。

    しかし、家族には秘密があった。

    支配的な母親と、一階の座敷牢のような場所に監禁された父親。その二人から逃げる為、さとるは実家に火を放つ。

    所々入るカウンセラーとの会話が誰のものなのか気になっていましたが、あれは父親とさとるの会話だったんですね。

    なかなかヘビーな内容なので、精神的に余裕のある時に読む事をお勧めします。

  • ミステリというよりもミステリアスな雰囲気が終始漂っている作品だった。
    そのおかげで一気読み。
    この不思議な感じの正体が知りたくて。
    最初どこにでもある母子家庭なのかなと思っていた。
    母親はきつそうで、姉は精神的に病んでるのかな、妹は妹らしい子だなと何の疑いもなく読み進めていたんだけど、どこかで何かが引っかかる。小骨のようなもの。あるのかないかもわからないレベルの違和感。
    それがどこからなのかは判然としない。たぶんずっと。最初からだと思う。
    その小骨が知らぬうちに大きくなっていく。
    山本文緒さんの作品を読むのは初めてなのだが、どの作品もこんな感じなのだろうか。
    落差がない。じわじわ。本当にじわじわ不思議さが増していく。最後までそれは変わらず、違和感の正体がわかっても収縮もしない。なんだこれ、と思った。
    共感するところもあまりない。好きになれる人物もいない。
    ただ、なんか惹かれる。けれど、その正体もわからないという謎だらけの作品。
    読み終えた時に心に残ったのは虚無感と満足感。相反するのに共存しちゃっている。何度も言うけれど、本当に不思議。

  • 家族が病んでいる理由と鉄男がどういう選択・決断をするのか気になり一気読み。母親が恐ろしい…けれど、ここまでではないにしてもこのように子供を“去勢”している母親或いは父親って世の中に沢山いると思う。 真っ先に家族とサヨナラしていきそうなみつるがそうしないことが少し不思議だったけれど、あんな家族でも大事なんだろうなと…そして母親が病院のベッドで娘と夫の悪口を言うシーンで、この人もこの人なりに家族を想っているんだと感じた。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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