群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877287184

感想・レビュー・書評

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  • 一番最初に思った事、うちの母はこんな人じゃなくて良かった!

    それくらい、さとるとみつるの母親は厳しいと思った。
    この火事を境にして、この家族がこれからどのように動いていくのか気になるところ。私としては今まで虐げられて苦労してきたのだから、鉄男と結婚して幸せになって欲しいと思う。

  • なまつめたい血が流れる一家。


    『群青の夜の羽毛布』――とても綺麗な題名で、綺麗すぎて緊張しながらめくりました。
     帯には「家族という名の暗闇」と不安をかきたてるコピー。そして、ホームドラマの恐怖が幕を開けます。よその家は秘密でいっぱい。外の人間には分からない、家の中だけで完結している世界があるのです。

     だいたい、その体に一様に同じ血が流れているということは、呪いにも似ていると思いませんか。
     さとるの家の血は、なまぬるいというよりすこし低そうで、なまつめたいとでも言いましょうか。顔色が青白いときほど魅力的な彼女。何度も起きる貧血に変なリアリティが★ 血の濃さを考えれば、一家で一番色っぽいのが母親なのも理解できます。次女みつるまで行くと血が薄まるようで、彼女の明るさやさっぱりした言動が、よどんだ空気の中で清涼剤のよう……。

     この血の結びつきから抜け出したくて、抜け出せなくて、恋人にSOSを発するさとるですが、救いの求めかたが「連れていって」ではなく「一緒に住んでほしい」になってしまう★ うまく出ていくことさえできないのです。

     きっと解放を意味する結末だったのだろうけれども、読後、まだぬるいようなつめたいような感覚が残っています。血のつながりは、スパッと切れるものではないですね~。

     この小説を著した山本文緒さんの文章も、何だか"なまつめたい"感触でした。一人ぐつぐつ煮るおでんも、夜に聞く灯油ポンプの音も、事故も怪我もみんなテンション低く、不気味な丁寧さで。黙々と書き綴っている感じに、小説家という仕事人のやることなのだなぁと感嘆します。

     で、突っこむとすれば、さとるの一家ではなくて、彼氏ですよ★ つきあってる女の子の前で、ご飯にお味噌汁をぶっかけるかな。恋人の妹や母親まで嫌らしい視線で見たり。どこまで不作法なの? やけに淡々と綴られてるから、今時の男の子はこれくらいが健全なんでしょうか……。

  • 急な坂道を登りきった小高い丘の頂上に、女三人が住む一軒家が立っている。厳しい母親と、母を恐れる余り神経症になってしまった長女のさとる、そして二人に反発しながらも家に居続ける次女のみつる。
    そんな家族に一人の男が巻き込まれていく。さとるの恋人、鉄男である。今まで付き合ってきた女の子たちとタイプの違うさとるに惹かれていく鉄男だが、この家族の異常さを目の当たりにし、何か恐ろしい秘密が隠されていると感じ始める。
    この異様な家族の中に交錯する愛情はなかなか複雑で濃い。男と女でドロドロする小説はあっても、女同士のドロドロはなかなかないのでは?

  • 「家族」という箱は外からは"ちゃんと"見えないものだ。
    きれいにラッピングしてあっても、中のものがきれいとは限らない。

    『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ 著)のレビューでも書いたが
    これもまた「おんなのひとってこわーい」という感想が(特に女性から)出そうだなあ。
    同じ事を書きますが…女なんてこんなもんでしょ。


    この作品で怖いのは女ではなく「家族」というひとつの繋がりの形であると思う。
    鉄男という第三者が関わることで、箱の中身がどろりどろりと出てきて
    読者もろとも重い渦に飲まれていく。

    「家」からそれぞれに歩き出したかのようなラストだけれど晴れやかさはなく、
    むしろ決して「家族」からは逃れられないような予感がして救われない。
    主人公のさとるが「家」を自分の手で解体したその力は、
    悲しいかな母親ゆずりの血を以って出せたようなものだと思えるから。

    終始重い雰囲気のままなので疲れるけれどそれでも読みきってしまうのは
    誰でも「家族」という箱の中にいるからなのだと思う。

  • 圧倒的な権力で家族を押しつぶす母親
    心を病む長女。必死にもがく次女

    長女の年下の恋人の素直さが救いかなぁ
    でもあんな家族を背負うのは
    もし私が男だったら、やっぱり逃げてると思う

    かなりヘビーな1冊

  • だいぶ前の作品だから携帯などなく公衆電話からの電話だったり、ディスコに集まる若者だったり、なんとなく時代を感じさせます。でも、内容は今の時代に読んでも面白かった。
    山本文緒さんの描く女性像はいつもどことなく不安定で、誰もが持っているかもしれない心の奥底の淀んだ部分を突いてくる感じ。それが、恐怖でもあり、共感するところでもあり、ついつい惹きこまれてしまいます。
    この話は母親が強烈すぎて、父親が弱すぎて、現実離れしている感がありながら、さとるの精神的弱さや恋愛に依存してしまうあたりにリアルを感じました。
    家族だからこそ甘えられる部分があったり、行き過ぎてしまう部分ってあるよな~と考えさせられます。

  • 家族っていろんな形があるだろうけど、一つくらいは他人には理解できないような部分があるよね、と。


    さとるに苛立ちながら読んだのは、彼女は私に似ているかもしれないという思いがどこかにあるからかもなあ、と。あそこまで圧迫されてるわけではないし、不安定でもないつもりだけど。


    どうして不安定な人って見てて苛つくんだろう。苦しんでいるのは分かるのに、自分が変わろうとしないから悪いんだってどうして思ってしまうんだろう。弱っているはずなのに、人の顔色をうかがう余裕があるからかな。同族嫌悪ってやつかな。それとも単に、私に思いやりがないからかな。

  • なんかひんやりしてて怖い雰囲気のお話。
    歪んだ家族のなかにある闇。
    そこから逃れようとしてる妹とか、
    人間味ある鉄男とかが救いかな。

    やっぱりこの人のお話好きだなー。

  •  怖い、とても怖かった。鉄男の環境が両極端へ飛ばされまくり、ある意味翻弄されているのが、とても怖かった。ホラー映画の恐怖とはまた別の怖さ。いろいろもっと適当にやってかないとこんな風になってしまうかも、という感じ。

  • すごい!うまい!

    ”音”の描写。
    神経質な長女をあらわしてると思ったら・・・
    父のたてる音に常に耳をそばだてていなければならなかったから。

    先生と患者の談話。
    患者は父だとうすうす気づくけど、先生が長女だったとは!!
    一番始まりのおでんの会話なんて、先生が長女だとわかるとつらすぎる。

    きれてる母。
    「何もかも、母親のせいなの?
    (略)
    そうしたら、私がこうなったのは私の母親のせいじゃない。
    その母親を育てたのは祖母よ。
    どうして育てた人間のせいにするのよ」

    「あの男は私の夫だけど、もともとは血のつながっていない他人よ。
    さとるは血の繋がった娘じゃない。面倒を見て当然よ」

    これくらい自信を持ちたいもの。

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著者プロフィール

1962年11月13日横浜生まれ。 神奈川大学卒業後、OL生活を経て、87年「プレミアム・プールの日々」でコバルト・ノベル大賞、佳作受賞。 99年「恋愛中毒」で第20回吉川英治文学新人賞、 2001年「プラナリア」で第124回直木賞受賞。

「2019年 『シュガーレス・ラヴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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