見えないものに、耳をすます ―音楽と医療の対話

  • アノニマ・スタジオ (2017年9月4日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877587680

見えないものに、耳をすます ―音楽と医療の対話の感想・レビュー・書評

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  • 全ての芸術家にとって、その人間性というのは作品の評価とは無関係であるはずであり、極論を言えば、ある芸術家が殺人の罪を犯したとして、その罪が罰せられることと、彼の作品の評価は切り分けて考えなければならない(自らの妻をピストルで撃ち殺したウィリアム・バロウズの罪と、「裸のランチ」に代表される彼の作品の独創性が全く別個に語られるように)。

    ただ、そうした前提を置いても、僕にとって、大友さんは優れた音楽家であり、かつその人間性を尊敬できる唯一の芸術家である。生まれ故郷の福島の復興を”祭事”という観点からコミットした「プロジェクト FUKUSHIMA!」や、直近の「札幌国際芸術祭」(この夏に幾つかの会場を訪問したが、どれも非常に素晴らしかった)など、その活躍は枚挙に暇がない。

    前置きが長くなったが、本書は大友さんが、東大で心臓内科の専門医として活躍しながら、西洋医学だけに留まらない医療の形を模索する独自の医師である稲葉俊郎氏を迎えて、音楽と医療を主軸に自由な議論をまとめた対話集である。

    音楽と医療といっても、音楽療法というような手垢にまみれた古い議論が行われているわけではない。議論のテーマはあるようでないようなものであり、自由な議論の中で読者にとって刺激を与えるような様々なフレーズが出てくる。

    例えば、自らの親に対する介護の大変さについて、親と子という1:1の関係性を引きずる形での介護はどうしてもしんどくなってしまう。そこであえて関係性を変えるという観点から、友人の母親の介護を見てみるとか、全く関係のない第三者を入れることで、その大変さが変わってくるのではないかという指摘が稲葉氏から出される。その議論に対して、大友さんからは、それは音楽においてもそうで、80年代後半の即興音楽シーンの中で、ニューヨークからやってきたジョン・ゾーンによって、津軽三味線と現代音楽とロックのミュージシャンを同じステージに上げるというような異種混合が自然とできるようになった、という話題が出される。硬直的な関係性を壊すために、あえて異物を入れてみるという考え方は汎用的なものとして成立し得る気がする。

    読み手によって面白いと思うポイントは様々だと思うが、なにか新しい世界に触れてみたい、と思う人にとってはヒントが得られるのではないか、そう思える一冊。

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