いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ—

著者 :
  • アノニマ・スタジオ
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877587734

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  • 本文より

    もちろん、時間をかけないと受け入れられないものもあるので焦る必要はない。その場合は、未来の自分に可能性を賭けて、未解決のまま託す、というのもひとつの解決法だろう。辛抱強く、時間をかけて、しかるべき時がやってくるのを待つことが必要な時もある。

    人間は変化することが予め内在化されている存在だ。細胞は日々生まれ変わり、成長し続け、そしていつか死ぬ。死ぬことすらも変化のプロセスとして含まれている。そういう力が内在しているからこそ、赤ん坊はいつのまにか大人になっていく。赤ん坊や子どもの時は変化や成長かわ強く感じられるが、大人になっても人間は死ぬまで変化し続けている。変化していく過程の中で、多面的に物事を見て、プラスもマイナスも包み込んだ広い視野から見られるようになった時、人は成長し、成熟していく。

    葛藤や矛盾をそのまま自分の中に同居できる状態こそが「ひとつ上の視点に立つ」というイメージに近いだろう。

  • 2018

    はじめに

     
    序章:すぐれた芸術は医療である

     
    第一章:体と心の構造
    体との対話/医療の本質/部分と全体を診る/体を構成する60兆個の細胞たち/視覚の発達/光の正体/植物性臓器と動物性臓器/人間の体の進化/生命と自然のリズム/生命維持に必要な睡眠システム/夢は外と内を繋ぐ接点/夢に隠されたメッセージを読み解く/意識と無意識のコミュニケーション

    第二章:心のはたらき
    意識と無意識/西洋と東洋 心のありよう/自我とは/矛盾と葛藤/抑圧と投影/メタファーとしての「病」/外的行為と内的世界の相互作用/心が求めるエネルギー/未知なる新しい自分の創造/創造のプロセス

    第三章:医療と芸術
    医療と芸術の接点/「病気」を考えるか「健康」を考えるか/「治る」と「治す」のプロセス/アール・ブリュットの世界/言葉と生きる人/“神話”を撮る人/内的世界を表現する人/命がけで日々を生きる人/生き方で芸術を体現した人/生と死を受け継ぐ人/暮らしの中の美を愛した人/「道」がもたらす人間の智慧/人間という美

    おわりに


    「身体がうまくかみ合ってなかった」p5

    「医療の本質とは何だろう?」p7
    「こころ」「からだ」「たましい」「いのち」
    と呼ばれるものはどういうものなのか


    「医療」を狭い枠内で捉えると、見落としてしまったり、こぼれ落ちてしまうものが多くあるp9

    「いのち」の声が全身に届くためにも、そこへ至る特殊な通路や扉が必要だ。そのためには、「言葉」がその運び手としての役割を果たしてくれる。もちろん適切な「時」も必要だ。時が満ちないと、扉は開かないこともあるからだ。p10

    人の体は、約60兆個の細胞からできている多細胞生物であるp16

    人間の体は、調和と不調和の間を行ったり来たりしながら、常に変化する場なのだ。全体のバランスを取りながら、その根底に働く、「調和の力」を信じ、体の中の未知なる深い泉から「いのちの力」を引き出す必要がある。それが、人の「全体性を取り戻す」ことにほかならない。p24

    「道」や「美」という調和の場を目標とすることで、体や心はおのずから整っていく。p31

    「そもそも、藝能といは、みんなの心を和らげて、上屋下などという考えから自由になって、寿や福を増やしていき、、寿命を長くするためのものなのです。すべての道は、極めるとすべて同じことです。寿や福を増やしていくためのものなのです。p32

    すぐれた芸術は医療であり、すぐれた医療は芸術である。p35

    体に触れると、頭で変換した「言葉」の解釈が入らない体の素直で正直な訴えを聴くことができるのだが、多くの人は、その小さな声に気づくことなく、見過ごしてしまっている。p40

    人の「いのち」を診るということは、病院の中だけでは完結しないこともだんだんわかってきた。p46

    生活や暮らしといったその人を支える全体性の中で病状を診ないと、今起きている事態がどういう関係性の結果として起きているのか、繋がりがわからないのだ。p48

    そこに至るまでのプロセスにもさまざまな問題が隠れているのだ。それは決してひとつではないし、問題が福zぁつに絡み合っていることも多い。人の体は複雑であり、これだという原因を遠く帝できることは稀だ。~~「部分」は「全体」を成立するためにあるし、「全体」は「部分」がないと成立しない。「部分は」は「全体」のためにあり、「全体」は「部分」によって成立している。p51

    大脳の細胞自体はたった200億個
    脳は体全体の中では少数派
    せいぜい意識できる範囲でしか、脳は体を動かしてはいない。p56

    視覚
    情報を得るときにたよる。情報量が多い。「全体」を把握して「部分」への理解へと至る、空間的な把握である。
    聴覚は、最初に「部分」を把握して「全体」への理解へと至る、時間的な把握である。p64

    ギリシャ神話
    プロメテウスは絶体神であるゼウスから火を盗み、人間に渡した
    ゼウスは人間が「火」(意識)を持ち、「知る」ことを許さなかった。そのため、プロメテウスは甘草を鷲についばまれる罰を受けた。プロメテウスの犠牲の上に、人間は「意識」を獲得し、「知る」能力を得て、「知りたい」という欲求が生れた

    日本の神話「古事記」
    イザナキの妻イザナミがさまざまな神生むが、火の神カグツチを生んだとき、性器を火傷して死んでしまう自分の命を犠牲にして人間に火を与えた。
    人間は何の苦しみなく受け取り、神がその命と引き換えに人類の苦痛を引き受けた。
    イザナキが黄泉で「火」をともして見たのは、妻の腐乱したしたしたいであり、「火」は「知る」ためのもので、知ったのは「死」であった。

    光をより細かく感知するために「色」という認識の仕組みが生れた


    植物性臓器=呼吸(栄養物を取り入れる)、循環(血液などを全身に配る)、排出(外に出す)
    =命の根幹を担う重要な臓器
    食道、肺が入力を担当、血液が伝達し、泌尿器や生殖器が出力する
    ~脳の指令なしに働く臓器

    動物性臓器=感覚(外界の刺激を感知する)、神経(刺激を伝達する)、運動(出力する)
    =五感が入力を担当し、神経が伝達し、筋肉出力する
    ~脳で動かす臓器

    「眠り」の中には我々が思いも及ばない深い深い生命の知恵が潜んでいるのだp84

    覚醒と睡眠 「あわい」
    意志のある状態から意識のない状態へと移行p87

    松果体しょうかたいがメラトニンというホルモンを周期的に放出するp89

    夢は覚醒と睡眠のあわいといして、意識と無意識のあわいとして、互いに補い合い、支えアイながら、異なるふたつの世界を調整しているのだp98

    メディアは「イメージ」の力を利用して成り立っているp123

    「イメージ」は無意識に私たちの中に浸食している。
    無意識のうちに自分のイメージを微調整していすりあわせている。p123

    西洋と東洋
    西洋、自我(エゴ)
    東洋、自己(セルフ)=意識活動だけでなくそれを支える深い無意識を含めたわたし

    東洋の「心の構造」を考えるときには「身体技法」がセットになって組み立てられている=体の状態次第で心の状態はすぐに変わるp134

    人間は変化することがあらかじめ内在化されている存在だp157

    結局、人は影として拒んだものと、深く関わることになる。p160

    「美しいものしかない
    みにくいものはまよひ」

    「此世このまま大調和」p161
    河井寛次郎の言葉




    身体言語としての体の症状は、自分が意識的に見たくない、薄々気づいてはいるが見過ごしきたものを身体言語で見せようとする。同じように夢は、イメージ言語として見せようとする場合がある。~~~人は心の奥にある問題を率直に語ろうとしないが身体言語としての症状は真実を素直に葉mなしているものだ。頭は嘘をつけるが、体は嘘をつけない。~~だからこそ、病や症状をきっかけとして行動の変化を強いられた場合は、その意味を真剣に受け止める必要がある。大抵は、本来のあるべきところへ戻ろうとする体からの要請である。それはせっかくの体からの修正行為であるにもかかわらず、ありとあらゆる手段を使って頭がが無かったことにして押さえつけてしまう。症状などの身体言語と対話して、伝えないことの本質を受け取り、体が伝えない真の意味に近づいていくことが大切なのだp165

    アノニマスタジオ
    https://www.anonima-studio.com/books/essay/inochiwoyobisamasumono/#:~:text=%E3%83%BC%E3%83%BC%E9%A0%98%E5%9F%9F%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6,%E5%89%B5%E9%80%A0%E3%81%AE%E5%8A%9B%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%82

  • 医師が書いたこころとからだについて。

    何と言って良いのかわからないがとても良質な文章で、言葉の一つ一つに透明感のような心地よさを感じます。

    美しささえ感じる文章は繰り返し読みたくなります。

    とても良かったです。

  • 注文して届いたのは、赤表紙金文字製本の本。まず、論文のスモールサイズのような装丁に驚いた。黒表紙は見慣れているが、赤表紙。まさに「美」。

    とても読みやすく、夢中になって読んだ。
    生きるとは、日々発見と創造の繰り返し。
    今、この本に出会えてよかった。

    しばらく経ってから、読み返したい。

  • 以前購入したものを、ふと改めて読んでみました。深いところで感じることができたような気がします。私の中の水路がつながってきたような感じです。医療、介護、療育、教育などに関わるすべての方におすすめです。

  • 医者というのは6年間人の体を勉強してきた人たちで、死に立ちあうのだなあ。

  • すごく、すごーーく良い本だった!
    わたしたちは60兆個の細胞からできていて、生きてるだけですごいんだってことがよくわかった。
    レム睡眠とノンレム睡眠も、これまで何度も教わっているけど、改めてよく理解することができた。人間は脳が発達しすぎちゃったから、脳を休めるためにノンレム睡眠という新しい睡眠の形が生まれたのだね。でも脳が完全に休んでしまうと生物としては危険だから、レム睡眠と交互に訪れる仕組みになっている(p95あたり)。

    睡眠システムひとつをとっても、表面的な説明ではなく、なぜそういう仕組みになっているのかということを、生命の歴史からひも解いて書かれているので、すごく興味深く、わかりやすく、納得がいく。へえええーー、という話の連続だった。

    人間は海から出てきて、月のリズムより太陽のリズムに合わせて生活するようになった。でも、海にいたころの名残で女性の月経は月のリズムとかかわりがある。そういうことに思いを馳せると、自分はただ生かされているだけで、何も悩むことはないのだなあ、と気持ちが楽になるような気がする。

    p134
    自分の体の状態次第で心の状態はすぐに変わるということを、東洋では深く理解していた。また、ロシアの医師であり文学者でもあるチェーホフは「風邪を引いても世界観は変わる。よって、世界観とは風邪の症状にすぎない」とも言っている。例えば風邪を引いたり病気になったりした時を考えてみてほしい。落ち込み、気弱になることもあるだろう。ひどい時は「もう生きていても仕方がない」と生きること自体に絶望してしまうこともあるかもしれない。しかし、風や病気が治って元気が出てくると、落ち込んでいたことすらすっかり忘れてしまう。つまり、ちょっとした体の状態で心の状態は簡単に変わり、見える世界すら変化してしまうわけだ。

    p170
    外的にものをつくる行為は、内的な心の世界において道のものをつくっては壊す、という新陳代謝が同時に生起するプロセスの引き金となる。ものをつくる行為の中には、あらゆる失敗と、その失敗を乗り越える工夫とが渾然一体となってすでに含まれており、心の中に抱えている葛藤や矛盾があらゆるプロセスを経て最終的にひとつの形を持った作品として顕在化する。もちろん、完成しないこともあるかもしれない。そう簡単に矛盾は解決しないからだ。
    ただ、そうした心の葛藤や矛盾こそが、創造物をつくる豊かな母胎にもなっている。多くの人が気づかない部分に違和感を持ち、多くの人が見過ごしているものを発見し、その違和感やずれをこそ大切にして、安易に解決しないように心の奥深くで孵化を待つ卵を抱えているのだ。
    そうした外的な行為と、内的な心のプロセスとは分かちがたいものだ。内的なプロセスが、心の深い場所を通過したものであればあるほど、それは強い力を持ち、質がともなったものになるだろう。自分自身を癒すものでありながら、他者をも癒す力を内在する作品へと昇華されるだろう。そのことを、人々は芸術(アート)と呼ぶのだ。

    p187
    (エンデの言葉)
    「シェークスピアの芝居を見にいったとする、そのときもです。私はけっして、りこうになって帰るわけではありません。なにごとかを体験したんです。すべての芸術において言えることです。本物の芸術では、人は教訓など受けないものです。前よりりこうになったわけではない、よりゆたかになったのです。心がゆたかに――そう、もっといえば、私のなかの何かが健康になったのだ、秩序をもたらされたのだ。
     およそ現代文学でまったく見おとされてしまったのは、芸術が何よりも治癒の課題を負っている、というこの点です」
    子安美知子『エンデと語る 作品・半生・世界観』(朝日選書)より

    p203
    西洋医学は「病気を治すこと」が目的であり、その後どこへ向かっていくのかは何も問わない。伝統医療では、「健康になること」を目的とする。その結果、いつのまにか病気が治っていることもあるし、治っていなくても病気と共存しながら心の折り合いをつけてより良く生きていけばそれでいいと考える。そもそも、向かうべき目標が違うのだ。どちらがすぐれていて劣っている、という話ではなく、そもそもの目的が違う、ということだ。それは方法論の違いであり、考え方の違いである。

    **********
    「おわりに」の後に書かれていた文章より。
    河合隼雄、三木成夫、井筒俊彦のすべての著作から大きな影響を受けて、本書を記している。この本のインスピレーションのもととなっているものも多い。思索を深めたい方は、この方々の著作を穴が開くほど精読することを強くお薦めしたい。

  • 一日一日違う日として生きる、それだけで誰もが芸術的に人生を創造してる、と思ったら、ふと心が軽くなった。

    色んな矛盾を含みながら生きているからこそ、一人ひとりが魅力的。

    時間はたっぷりあるようで、そんなに多くはないから、日常に小さな新事や芸術を取り入れるも良し、身体と真摯に向き合うのも良し、自分自身の全体性を取り戻しながら未来を創造していきたいと思った。

  • 2023/5/15

    490.4||イ (5階自然科学・医学)

    心臓の専門医が書いた「こころ」と「からだ」についての本。
    「健康」とは「調和」である。今の状態が「不調和」か「調和」なのかを、心や体と対話していく。体だけを診るのではなく、心や命そのものと向き合う。
    西洋医学だけでなく、伝統医療や代替医療を取り入れた医師が、「医療の本質」とは何かを問います。
    今、体の不調を感じている方や、医療に携わる方におすすめの一冊です。

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著者プロフィール

1979年、熊本生まれ。医師。東京大学医学部付属病院循環器内科助教を経て、2020年4月より軽井沢へ移住。現在は軽井沢病院院長・総合診療科医長、信州大学社会基盤研究所特任准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、東北芸術工科大学客員教授に就任。「山形ビエンナーレ2020、2022」では芸術監督も務める。医療の多様性と調和への土壌づくりのため、西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。芸術、音楽、伝統芸能、民俗学、農業など、あらゆる分野との接点を探る対話を積極的に行う。共著に『見えないものに、耳をすます』(アノニマ・スタジオ)、著書に『いのちは のちの いのちへ ―新しい医療のかたち―』(アノニマ・スタジオ)、『ころころするからだ』(春秋社)、『からだとこころの健康学』(NHK出版)、『いのちの居場所』(扶桑社)、『ことばのくすり』(大和書房)など。
www.toshiroinaba.com

「2023年 『山のメディスン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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