本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 / ISBN・EAN: 9784877587734
感想・レビュー・書評
-
本文より
もちろん、時間をかけないと受け入れられないものもあるので焦る必要はない。その場合は、未来の自分に可能性を賭けて、未解決のまま託す、というのもひとつの解決法だろう。辛抱強く、時間をかけて、しかるべき時がやってくるのを待つことが必要な時もある。
人間は変化することが予め内在化されている存在だ。細胞は日々生まれ変わり、成長し続け、そしていつか死ぬ。死ぬことすらも変化のプロセスとして含まれている。そういう力が内在しているからこそ、赤ん坊はいつのまにか大人になっていく。赤ん坊や子どもの時は変化や成長かわ強く感じられるが、大人になっても人間は死ぬまで変化し続けている。変化していく過程の中で、多面的に物事を見て、プラスもマイナスも包み込んだ広い視野から見られるようになった時、人は成長し、成熟していく。
葛藤や矛盾をそのまま自分の中に同居できる状態こそが「ひとつ上の視点に立つ」というイメージに近いだろう。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
医師が書いたこころとからだについて。
何と言って良いのかわからないがとても良質な文章で、言葉の一つ一つに透明感のような心地よさを感じます。
美しささえ感じる文章は繰り返し読みたくなります。
とても良かったです。 -
注文して届いたのは、赤表紙金文字製本の本。まず、論文のスモールサイズのような装丁に驚いた。黒表紙は見慣れているが、赤表紙。まさに「美」。
とても読みやすく、夢中になって読んだ。
生きるとは、日々発見と創造の繰り返し。
今、この本に出会えてよかった。
しばらく経ってから、読み返したい。 -
以前購入したものを、ふと改めて読んでみました。深いところで感じることができたような気がします。私の中の水路がつながってきたような感じです。医療、介護、療育、教育などに関わるすべての方におすすめです。
-
すごく、すごーーく良い本だった!
わたしたちは60兆個の細胞からできていて、生きてるだけですごいんだってことがよくわかった。
レム睡眠とノンレム睡眠も、これまで何度も教わっているけど、改めてよく理解することができた。人間は脳が発達しすぎちゃったから、脳を休めるためにノンレム睡眠という新しい睡眠の形が生まれたのだね。でも脳が完全に休んでしまうと生物としては危険だから、レム睡眠と交互に訪れる仕組みになっている(p95あたり)。
睡眠システムひとつをとっても、表面的な説明ではなく、なぜそういう仕組みになっているのかということを、生命の歴史からひも解いて書かれているので、すごく興味深く、わかりやすく、納得がいく。へえええーー、という話の連続だった。
人間は海から出てきて、月のリズムより太陽のリズムに合わせて生活するようになった。でも、海にいたころの名残で女性の月経は月のリズムとかかわりがある。そういうことに思いを馳せると、自分はただ生かされているだけで、何も悩むことはないのだなあ、と気持ちが楽になるような気がする。
p134
自分の体の状態次第で心の状態はすぐに変わるということを、東洋では深く理解していた。また、ロシアの医師であり文学者でもあるチェーホフは「風邪を引いても世界観は変わる。よって、世界観とは風邪の症状にすぎない」とも言っている。例えば風邪を引いたり病気になったりした時を考えてみてほしい。落ち込み、気弱になることもあるだろう。ひどい時は「もう生きていても仕方がない」と生きること自体に絶望してしまうこともあるかもしれない。しかし、風や病気が治って元気が出てくると、落ち込んでいたことすらすっかり忘れてしまう。つまり、ちょっとした体の状態で心の状態は簡単に変わり、見える世界すら変化してしまうわけだ。
p170
外的にものをつくる行為は、内的な心の世界において道のものをつくっては壊す、という新陳代謝が同時に生起するプロセスの引き金となる。ものをつくる行為の中には、あらゆる失敗と、その失敗を乗り越える工夫とが渾然一体となってすでに含まれており、心の中に抱えている葛藤や矛盾があらゆるプロセスを経て最終的にひとつの形を持った作品として顕在化する。もちろん、完成しないこともあるかもしれない。そう簡単に矛盾は解決しないからだ。
ただ、そうした心の葛藤や矛盾こそが、創造物をつくる豊かな母胎にもなっている。多くの人が気づかない部分に違和感を持ち、多くの人が見過ごしているものを発見し、その違和感やずれをこそ大切にして、安易に解決しないように心の奥深くで孵化を待つ卵を抱えているのだ。
そうした外的な行為と、内的な心のプロセスとは分かちがたいものだ。内的なプロセスが、心の深い場所を通過したものであればあるほど、それは強い力を持ち、質がともなったものになるだろう。自分自身を癒すものでありながら、他者をも癒す力を内在する作品へと昇華されるだろう。そのことを、人々は芸術(アート)と呼ぶのだ。
p187
(エンデの言葉)
「シェークスピアの芝居を見にいったとする、そのときもです。私はけっして、りこうになって帰るわけではありません。なにごとかを体験したんです。すべての芸術において言えることです。本物の芸術では、人は教訓など受けないものです。前よりりこうになったわけではない、よりゆたかになったのです。心がゆたかに――そう、もっといえば、私のなかの何かが健康になったのだ、秩序をもたらされたのだ。
およそ現代文学でまったく見おとされてしまったのは、芸術が何よりも治癒の課題を負っている、というこの点です」
子安美知子『エンデと語る 作品・半生・世界観』(朝日選書)より
p203
西洋医学は「病気を治すこと」が目的であり、その後どこへ向かっていくのかは何も問わない。伝統医療では、「健康になること」を目的とする。その結果、いつのまにか病気が治っていることもあるし、治っていなくても病気と共存しながら心の折り合いをつけてより良く生きていけばそれでいいと考える。そもそも、向かうべき目標が違うのだ。どちらがすぐれていて劣っている、という話ではなく、そもそもの目的が違う、ということだ。それは方法論の違いであり、考え方の違いである。
**********
「おわりに」の後に書かれていた文章より。
河合隼雄、三木成夫、井筒俊彦のすべての著作から大きな影響を受けて、本書を記している。この本のインスピレーションのもととなっているものも多い。思索を深めたい方は、この方々の著作を穴が開くほど精読することを強くお薦めしたい。 -
体の内側のこと、魂のことなんかも
医療と芸術
坂口恭平さんの話が出てきて嬉しかった -
【購入のきっかけ】
・心身共に疲れ切っていた2024年12月に、下記記事を見て購入
ビジネス・インサイダー
疲れた時に「してはいけないこと」。不調をチャンスとみなすカラダの整え方
https://www.businessinsider.jp/post-296526
【感想】
著者プロフィール
稲葉俊郎の作品





