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- / ISBN・EAN: 9784877588113
作品紹介・あらすじ
140年以上前に誕生した、ロシアの文豪トルストイの名作。強欲な兄や悪魔の誘惑に負けずに、ひょうひょうと自らの体と手を使って生活するイワンの物語。名作にハンス・フィッシャーの挿絵、翻訳家・小宮由氏の新訳で現代に贈る、子どもも大人も読んでほしい作品です。
感想・レビュー・書評
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子どもの頃に、おそらく抄訳されたものを読んで以来。
『アンナ・カレーニナ』が凄まじい上手さだったので、再読したくなった。
拝金・軍拡主義がどんどん広がる今だから、古い話とは思えない。
イワンの妻となる王女のことが、少ない出番ながら一番胸に残っている。
その道を選べるの、すごいよ…。
読み終えてから挿絵が『こねこのぴっち』のフィッシャーだと気づいて、豪華さにのけぞった。
悪魔の絵が特にいいなぁー!
トルストイを読んで兵役を拒否、後に本作を含むトルストイ作品を訳した訳者さんの祖父の話も心を揺さぶるもので、併録がありがたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロシアの文豪レフ・トルストイ(1828-1910)が、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などの大作は上流階級向けものだったとして、一般民衆に理解される分かりやすく表現した有益なものを書こうと、56歳の時に発表した民話『イワンの馬鹿』の新訳本です。 馬鹿の<イワン>と二人の兄(軍人の<セミヨン>と商人の<タラス>)、耳の聞こえない妹の<マラ-ニャ>を破滅さそう企む<老悪魔>と三匹の<小悪魔>の寓話は、〝非暴力主義の思想〟と〝神への信仰〟に生きた、苦悩するトルストイの矜持がうかがえる名作です。
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戦争とお金と馬鹿。
馬鹿ってなんだろう。今の世の中でも、イワンはきっと馬鹿と呼ばれるような存在なのかもしれないけど、その生き方は尊い。解説も良くて、トルストイの目指した生き様が強く反映されてるんだろうなと感じた。宮沢賢治を読んだ時と同じ気持ち。グスコーブドリの伝記とかと通ずるものを感じる。
訳者の縁まで面白い良い本だと思った。
あとお金の価値について考えさせられた。イワンの国の住民は、金貨が物珍しくて何枚かは欲しがったんだけど、必要以上には欲しがらなかった。イワンの国でのお金にあまり価値がなかったのもあるけれど、必要な分だけでいいのだというメッセージに感じた。 -
何かで聞いた「イワンの馬鹿」の意味を恥ずかしながら知らなかったので読んでみた。
「馬鹿」の真意は何なのか。
お金の価値とは。
自ら体を動かし働いて食料を得、さらに周りの人にも食べさせる。生きる原点。
私も手にたこを(たくさん)つくる様な生活に憧れる。徐々にそんな生活に近づきたいなぁ。
侵略された馬鹿の村人が、欲しければもっていけばいい、なぜいじめるのだ!と言っていたのが印象に残った。この気持ちを皆が持っていたら戦争なんてきっと起こらないのだろう。紛争地域の権力者たちに知ってほしいと思った。
生きる上で何が大事なことなのか。
人生の節目で、読み直して、考える機会を設けても面白いかもしれない。
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校長を退職後、再任用で勤務してらっしゃる先生に「『イワンの馬鹿』ありますか」と聞かれ、蔵書の中から読んでもいない21世紀版少年少女世界文学館シリーズと福音館古典童話シリーズをお渡ししたところ、「2回読んだけど…こんな文章なのかな」とのお言葉。
私自身、子どもの頃に読んだ記憶があるものの、タイトル以外はほとんど覚えておらず、小宮由さんが訳されたと知ってから読みたいと思っていたこちらを公共図書館で借りて読みました。
こんな話だったのか、という新鮮な驚き、そして何より本編以外の「解説にかえて」「訳者あとがき」「資料『イワンの馬鹿』と北御門二郎」が読めたことがこの本を読む意味のようにも思えました。
低学年用に出版されているものについて、
「善意に解釈すれば、なるべく幼い頃からトルストイを噛み砕いた形で…という気持ちかもしれないが、その噛み砕き方が問題である。トルストイがもともと心をこめて噛み砕いたものを、トルストイよりうまく噛み砕ける人がいれば、その人がやるがよい。生兵法は大けがのもとなのだ。幼い心にトルストイへの誤解を植えつけることほど恐ろしいけががあるだろうか。」
という北御門さんの言葉が腑に落ちました。
本編の内容については、この本はドイツ語版を原書としていることから、これから北御門さんの訳等比べて読んでから、もう一度味わいたいと思います。 -
軍隊、お金、馬鹿、頭を使う労働。限定された環境において通用する常識にいかに縛られて物事を見ているか気付かされた。
お金の意味がなければ誰も欲しがらないし、キラキラ丸い金貨は子供のおもちゃになる。
争いをしない人には軍隊だってただの楽団になってしまう。
それらの使い方や意味を知らないことが馬鹿だと、知っている人からはそう見えるかもしれない。
けど、知っていることが本当に賢いのか?
あるいは知った上で、馬鹿に見える選択をすることはできないのか?
現代では当たり前の頭を使う労働でさえ、馬鹿の前では何の意味もない。
勿論、頭を使う労働は必要だけど、視野は狭くなっていないか。当たり前を疑う。馬鹿=他者の目線に立ってみる。そんなことを忘れずにいたい。 -
ちょうど今、アンナ・カレーニナを読んでいるので、イワンの暮らしぶりこそがリョービンの求めているものだなぁと、感動しながら読んだ。
リョービンもイワンも、トルストイの思想そのままなんだろう。。
そして訳者の北御門二郎氐もまた。
解説もとても興味深くよんだ。それにしても素敵な挿絵と表紙! -
「馬鹿」と表現されていますが、それは悪い意味ではないように思いました。イワンには、なんというか、犬のような純粋さを感じました。
特に、大人になるとなくしてしまいがちな純粋さ。
今を楽しみ、与えられているもので満足し、働いて正当な対価を得る。そんな純粋で真っ正直な生き方。
そんな真っ正直な生き方をしていると、大多数の人からは「あいつ馬鹿だなー」「もっと器用に生きればいいのに」なんて言われかねない。
でも、私もイワンのようにある意味で「馬鹿」な生き方をしていきたいと思いました。 -
トルストイの作品、イワンの馬鹿をオーディブルで。
武力好きの長男、お金好きの次男、馬鹿な三男イワン。
悪魔が彼らを破滅させようとするが、馬鹿なイワンだけは破滅させられない。
この『馬鹿』は欲がなく、人を傷つけず、赦し、自分は働き者。
そういう人が生き残るという訓話的に感じられた。 -
良かった。世界名作全集にあって、小さい頃に読んでたはず。こんなに深く素晴らしい物語だったとは。小宮由氏からの繋がりに感謝。
著者プロフィール
レフ・トルストイの作品





