クトゥルー 12 (暗黒神話大系シリーズ)

制作 : 大瀧啓裕 
  • 青心社
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本棚登録 : 78
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878922435

作品紹介・あらすじ

湖底から古代生物の化石が引き上げられた時から恐怖が始まった。甦った古代のものがシカゴにもたらした災厄を描いた「湖底の恐怖」。古代ヒューペルボリアを舞台に失われた都市コモリオムとツァトゥグアをめぐる冒険が語られる「サタムプラ・ゼイロスの物語」。莫大な富とともに沈んだスペイン船とその宝を狙うものたちが遭遇した惨劇の物語「首切り入江の恐怖」。H・P・ラヴクラフトが夢の冒険者を襲う恐怖を描く「ヒュプノス」を含め、クトゥルー神話八編を収録。

感想・レビュー・書評

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  •  クラーク・アシュトン・スミスが創作したツァトゥグアと無形の落とし子の造形は、スミスからツァトゥグアを教えてもらったラヴクラフトも気に入ったようで、自作に登用するだけでなく、作家仲間にもその使用を奨励するほどでした。
     スミスの作品でツァトゥグアらが初登場するのは今巻に収録されている『サタムプラ・ゼイロスの物語』ですが、ラヴクラフトはそれより前に発表した『闇に囁くもの』でツアトゥグアの名前を登場させ、同時期にビショップの代筆をした、今巻に収録されている『墳丘の怪』にもツアトゥグアらとその信仰について描写を挟んでいます。こうした"繋がり"を知ることで、更にクトゥルフ神話を楽しめると思います。
     今巻はそんな繋がりを知れる2作品を含む8編を収録。
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    『アルハザードの発狂』(D.R.スミス/1950)
     狂気の世界に陥った詩人、アブドゥル・アルハザードが禁断の知識を記したネクロノミコン。これまで誰も知ることのなかった、アルハザードが発狂するに至った出来事とは――。
    (ダーレスの影響を伺わせる掌編。その結末は他のクトゥルフ神話作品とは一線を画していて、かなりの異色作。)

    『サタムプラ・ゼイロスの物語』(C.A.スミス/1931)
     盗賊のゼイロスは盗賊稼業が難しくなったことから、相棒のオムパリオスと共に都市を離れ、獲物を求めてかつて栄華を誇っていた廃都コモリオムに向かう。そこで見つけたのは古の神々の一人、クトゥグアを祀る神殿だった。中に入ると、そこにあったのはクトゥグアの神像と黒黒とした粘性の液体で満たされた大鉢で――。
    (スミスが創作したツァトゥグアが、スミスの作品において初めて言及された作品。つまり、そのものは登場していないのだが、存在感はたっぷり。)

    『ヒュプノス』(ラヴクラフト/1922)
     彫刻家のわたしは鉄道の駅で、終生にして唯一の友に出会った。わたしは彼とともに夢の探求をするのだが、ある時を境に友は夢を見ることに恐怖するようになる――。
    (ラヴクラフトの初期の作品で、まだダンセイニなどの過去の作家の影響が強いことが伺える。)

    『イタカ』(ダーレス/1941)
     まず、ルーカスが行方不明になった。次いでルーカスが発見された後、ルーカス失踪事件を扱っていた警官のフレンチが疾走する。新聞は他愛もないことを書き散らしたが、それは当事者である警察、つまり我々が事実を一部隠蔽して発表したからだ。だが、今ここに発表しよう。常人であれば受け止めようのない事実を――。
    (『風に乗りて歩むもの』、『戸口の彼方へ』に連なるイタカ神話群の一作。過去作 『風に乗りて歩むもの』に加筆したもので焼き直しとも読めるが、イタカの禍々しさが更に強調されていて別個の作品としても楽しめる。)

    『首切り入り江の恐怖』(ブロック/1958)
     作家のぼくは、酒場で出会ったダンに宝探しに誘われる。当日、ダンたちは宝を積んだ沈没船を見つけるが、途中で仲間の死体が海に浮かぶ。首を切断された状態で――。
    (ブロック後期の一作。クトゥルフ神話色もエジプト色も出していないが、神話的恐怖は存分に味わえる。)

    『湖底の恐怖』(スコラー&ダーレス/1940)
     世界博覧会の会場建設のため、埋立工事が進んでいたミシガン湖の湖底から奇妙な化石じみたものが発見される。それは驚くべきことに、だんだんと大きくなり、形状を変化させていくのだ。わたしとホウムズ教授は不安を感じながらもそれを研究室に保管したのだが――。
    (80年代のB級ホラー映画を思わせるような、単純明快ながらも読みやすい作品。TRPGのシナリオ作成の参考にするにはもってこいだろう。)

    『モスケンの大渦巻き』(スコラー&ダーレス/1939)
     旅行から戻ってきたウォーリックは別人のようだった。人間離れした飛び跳ねるような足取りで歩き、その手は南極の石のように冷たかった。ウォーリックに何があったのか――。
    (異形を撃退するアイテムとして五芒星形の印が登場するがクトゥルフ神話色はない。『湖底の恐怖』のそれとは形状を異にしているので、発表順に読んでいくと、五芒星形の印の設定の変化を楽しめるだろう。)

    『墳丘の怪』(ビショップ&ラヴクラフト/1929)
     オクラホマにあるインディアン由来とされる墳丘は、幽霊の目撃談や探索者の失踪や発狂、異常死など、怪奇譚に事欠かない。それゆえに好奇心から墳丘を訪れた新たな探索者――私は、墳丘の土中から奇妙な金属筒を発掘する。中に入っていたのは、十五世紀に同じように墳丘を訪れたスペイン人による、墳丘の内部に広がる異世界と、そこでの生活を綴った自伝だった――。
    (地下世界に棲んでいたのは、来る者拒まずだが去ること許さず、文化的ながらも保守的で、超能力で霊体化したり死体を操ったりすることができるヤベー種族だったという、設定が盛り沢山なダーク・ファンタジー。ゴーストやゾンビといった、TRPGでもステータスがあるクリーチャーの設定にも使えそうで、シナリオ創作者の人にもおすすめしたい。)

  • 12巻まで読みながら、なんなんですが……クトゥルー神話って、こうやって集めることに意味があるんだろうか?

    どっちかというと、全然、思ってもいなかったところで見つけて、ニヤリとするのが、正しい楽しみ方のような気もします。

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