女性初の大西洋単独飛行を成し遂げ、さらに当時達成者のいなかった赤道付近を飛行しての世界一周に挑戦した飛行家アメリア・イアハートの自伝である。彼女はアメリカでは英雄的扱いを受けており、未だに南太平洋で消息を絶った彼女の機体や遺物を、何百万ドルもかけて探す動きがあるそうだ。
この自伝は、本来は世界一周達成後に出版される予定だったらしいのだが、彼女は南太平洋を飛行中に消息不明となってしまったため、「ラスト・フライト」という名前で出版された。出発前にいくらか書いておいた分と、飛行の途中で旅の状況を記録し、それを現地から送った分があり、それらを含めてほぼ全てアメリア本人の言葉で書かれている。
飛行機や旅行に憧れのある人なら、誰しも本書に引き込まれると思う。アメリアは教養があり、文を書くのも上手で、彼女が立ち寄った昔の南米やアフリカ、インド、東南アジアなどの様子が詳細に記されている。旅行記としても価値があるのではないだろうか。
彼女はまた女性教育にも関心があったようだ。女性は教育など受けず家庭に入るもの、という価値観が今より強かった当時、アメリアの活躍は女性の地位向上や社会進出という意味も持っていたようだ。
自伝の最初の方に書いてあるのだが、小さな男の子が機械いじりに興味を持つと喜ばれるのに、女の子が機械に興味を持つと嫌な顔をされる、と。アメリアは、女性が
自由にモーターや旋盤を扱い、油まみれで作業や発明に打ち込める機械工場(学校のようなもの?)を作ることだったそうだ。確かに、面白いアイデアだ。
しかし、アメリアが22歳で初めて飛行機に乗ってから、飛行家になって世界を飛び回った一番の理由は、ただ単純に「やりたかったから」ではないだろうか。知らない場所を飛んでみたい、誰もやったことのないことを成し遂げたい、という好奇心や欲求だったのではないかと思う。登山家や、冒険家と同じように。
世界一周の夢は達成されることなく潰えてしまったが、彼女の活躍は多くの人、とりわけ女性に勇気と感動を与えたことだろう。