ナボコフ短篇全集〈1〉

制作 : Vladimir Nabokov  諌早 勇一  毛利 公美  貝沢 哉  若島 正  加藤 光也  沼野 充義 
  • 作品社
3.85
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878933677

作品紹介・あらすじ

「言葉の魔術師」が贈る短篇小説の醍醐味。英米文学者とロシア文学者による初めての全篇新訳。

感想・レビュー・書評

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  •  全2巻、52篇。ウラジーミル・ナボコフの全短篇をおさめた全集が出ている。
     1巻を手にしたが、今のところ、頭の中で話を勝手にゆで上げないよう、さっと目をくぐしてある程度だ。あとからじっくりと読みふけろか。
     しかし、この作家の小説を捲るは本書がはじめてだが、異常に波長が合う。長くさわっているのが少々恐ろしくなってきた。まるで呪いのようにぴったり来すぎて。もっとも、タブッキにチューニングを合わせるのに手こずったあとだから、余計に感じるというのはある。

     なぜに、それほどナボコフの波長に合ってしまうのか。
     それはもう、単純に個人の嗜好の問題。ではあるのだが、ただ好きだから、と言うだけではレビューにならないのだった。具体的に書いた方が墓穴を掘りそうだけれど……。

     何がどうして好きかって。まず、文学って、全集って、本を開いた時の匂いが、ちょっと違う。風格があって。知性派っぽくて。かっこいいじゃん。(あほ?)
     それから、このご時世、わりとあっさり納得して頂けるだろうが、ファンタジーというのはかなり魅惑の領域である。
     で、ナボコフの短編集では、どちらの空気も吸いこむことができる。文学チックなムードの中に、幻想物語の霧がわき出す。『森の精』『翼の一撃』など、題名からして喜ばしい響き。
     最も波長が合ったのは『ベルリン案内』という小品。街を描き出す言葉が、魔法のように美しく織りなされたあとは、語りおさめまでも心にくし。

     文学は文学、ファンタジーはファンタジーと、がきっと区別されてしまうと、何だか入り込めないで入口の前をうろうろしてしまうことがある。私なぞ、だいたいそこで帰ってしまう……。
     別にどちらでもいいのにね、と言ってくれているかのような(言ってないけど)ナボコフ。簡単に篭絡されるのもしゃくにさわるが、どうにも抗いがたい誘惑を感じてしまう。


    レビュージャパン掲載『ナボコフの波長』

  • ベルリンに逃れてきた亡命ロシア人の話が多い。サラリとしたものから濃密なもの、ダメージを負うものまで様々。90度くらい捻りがある。心に残ったのは森の精、港、雷雨、ラ・ヴェネチアーナ、ロシアに届かなかった手紙、けんか、ベルリン案内、おとぎ話、オーレリアン、忙しい男、未踏の地

    「森の精」「外套」のパロディ?
    「港」 さわやか
    「雷雨」 預言者エリヤ
    「ラ・ヴェネチアーナ」 絵画の不思議な話
    「けんか」 絵画的な平和な日常から一転
    「ベルリン案内」 未来の回想の覗き見
    「おとぎ話」 シニカルな寓話
    「忙しい男」 円環構造
    「未踏の地」 M色のS景のよう。未開のジャングルでの昆虫採集

  • 様々なテーマの、様々な種類の作品が収められている。
    天使や神やファンタスティックなイメージが登場するものから政治的なものまでと幅広い。

    テーマが色々だからどの作品も印象に残るし、どれもが面白いし素晴しい。
    短篇集で、しかも35篇も収められていて、ほとんどの内容を覚えていられるというのはすごいと思う。
    たいてい短篇集なんていう場合、記憶に残るものや好きなものとそうではないものがはっきり分かれるものなのに
    この本はそんなことがない。本当にどの話もいい。
    聞くところによると、ナボコフは短篇の方がいいなんて言う人も割といるらしい。

    それにしても、いやはや、ナボコフさんはやっぱりスゴい人である。
    死ぬまでに読んでおかなくてはいけない偉大な文豪のひとりだと思う。
    言葉をこれほどまでに使いこなす作家はそうはいない。
    翻訳でこれなのだから、原文はきっともっとスゴいのだろう。


    美しい言葉で描かれた絵画。
    おとぎ話的な映像を脳に浮かび上がらせるような文章の連なり。
    美しい比喩が生み出す世界。
    散りばめられた色彩。溢れ出す色。


    紙の上にひろがる言葉によって描かれる風景に、うっかりするとすぐに気持ちよく目蓋を閉じてしまいそうになる。
    閉じてしまいそうというより再読の際は1ページ読むか読まないかのうちに目蓋が下りることもあったけど。。。

    劇的な起承転結によるストーリーというよりは、とある人間のとある人生の一部分の出来事を切りとったものが多い。
    中には少し長めの物語として読みやすい『ラ・ベネツィアーナ』のようなものもあるが、
    印象としてはどの作品も美しい風景に溶け込む死のイメージを文章にしたものばかりだった感じがする。

    読んでいる時よりも読み終えてしばらくしてからのほうが内容が体に沁みてくる感じがする。
    ふとした時に様々な作品の様々な場面がよみがえってくる。


    どれもいいのだが、私は特に『恩恵』『クリスマス』『ロシアに届かなかった手紙』が好きだ。


    最後に、素晴しい文章から成る『響き』より、好きな一節を引用。

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    ”ビロードの棺桶みたいなテーブルの上に載っていたアルバムを投げ出して、ぼくは君をみつめ、フーガと雨の音を聞いていた。いたるところで、棚からも、ピアノの翼からも、シャンデリアの細長いダイヤモンドからもしみ出てくるカーネーションの香りのように、さわやかな感覚がぼくの中から湧き出してきた。”

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  • 図書館でかりる。
    文庫版でだしてほしい!!

  • 短編で一番好きなナボコフの全集。
    書店で探しまわった思いでの品

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プロフィール

ウラジーミル・ナボコフ(Владимир Набоков, Vladimir Nabokov)
1899年4月22日 - 1977年7月2日
帝政ロシアで生まれ、ヨーロッパとアメリカで活動した作家・詩人。文学史上、亡命文学の代表者とされることもある。昆虫学者としての活動・業績も存する。
ロシア貴族として生まれたが、ロシア革命後の1919年に西欧へ亡命。ケンブリッジ大学に入学し、動物学やフランス語を専攻。大学卒業後にベルリンで家族と合流して文筆や教師などの仕事を始める。パリを経て1940年に渡米、1945年にアメリカに帰化。1959年にスイスに移住し、そこで生涯を閉じた。
ロシア時代から詩作を開始。ベルリン、パリにおいて「シーリン」の筆名でロシア語の小説を発表して評価を受ける。パリ時代の終わりから英語による小説執筆を始めた。渡米後も英語で創作活動を続け、詩・戯曲・評伝を記すだけでなく翻訳にも関わった。
代表作に、少女に対する性愛を描いた小説『ロリータ』。映画化され、名声に寄与した。ほかに『賜物』、『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』、『青白い炎』、自伝『記憶よ、語れ』。

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