エリアーデ幻想小説全集〈第1巻〉1936‐1955

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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878935145

作品紹介・あらすじ

生涯にわたって"聖なるものの顕現"を探究し、二〇世紀文学に偉大な足跡を残したミルチャ・エリアーデ。その全幻想小説を編年体で網羅した、世界初のオリジナル全集。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史を背負い、思想潮流を「幻想小説」という形に昇華させたエリアーデの著作集。
    今般の洗練された(逆に言えば、グローバル規格に単一化されつつあるんだけど)娯楽作品の文体に馴れた読者には、いささか迂遠で野暮ったい風を感じるかもしれないが、文句なしの星5つである。

    一番お勧めは、『ホーニヒベルガー博士の秘密』。
    東洋の宗教に造詣の深い著者(マジもんの宗教学者)ならではの作品、東洋思想の内側から読むも一興。
    欧州文化、思想圏では周辺に位置するルーマニアの学者が、若い頃ヨーガや東洋思想に傾倒し、なおかつ学術的に理解せんとしたことを踏まえると、味わい深い一篇である。

    一見、通俗小説の体裁をとってはいるが、
    「読者に疑問を持たせたまま、断定させない(解説ではこれを躊躇と言っている)」
    幻想文学の白眉といえるのが、『蛇』である。
    中産階級的な世俗のなかに紛れ込む、異者(はっきりしない背景なのに、魅力的な人物と描かれる)の存在。願望の混じった予知夢とも、神秘の別次元からの投影ともいえる夢の描写。
    卑俗なもののなかに隠れる聖なるもの。見る者の目が開いていなければ、『それ』とは理解できない現象(作中のちょっとした事件など、夢の描写を抜きにしてみれば、浮かれた若者の暴走でしかない)。

    長編『妖精たちの夜』は、非常に読みづらい(語り手がコロコロ変わる)ため挫折したが、短編ということで本書はまだ取っつきやすい。
    エリアーデの宗教学、哲学の現れとして、お膳立てされた物語。あるいは、ルーマニア文化の『継承の器として書かれた物語』という軛を意識して、お読みになると良いだろう。

  • 【展示用コメント】
     ハリポタだけが、ファンタジーじゃない。

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2001164462&key=B151607971011494&start=1&srmode=0&srmode=0#

  • 世界的に有名な宗教学者であったエリアーデは、
    実は幻想文学作家でもありました。
    以前、福武文庫から出ていた『ホーニヒベルガー博士の秘密』
    ――とても面白かったのに、何故か手放してしまい(←バカ)
    気が付いたときは絶版で再入手不可能になっていたんですが、
    エリアーデの小説は、
    私の知らない他の本も殆ど同じ目に遭っていたようで、
    今年、発表年代順に編集された全集の発売を以って復刻、
    という運びになった模様。
    で、第1巻に「ホーニヒベルガー博士の秘密」と、
    文庫に併載されていた「セランポーレの夜」が掲載されている
    というので、ハードカバー、お値段¥4,800にも拘らず購入。
    うう(^_^;)。
    通読しての感想は……やはり長期間に渡って書き続けると、
    段々(どんどん)巧くなるものなのか!ってとこでしょうか。
    巻頭の「令嬢クリスティナ」<1936>なんか、
    雰囲気よく分かるし、好みなんだけど、
    いかんせんゴチャゴチャして読みづらい。
    ところが四年後に発表された「ホーニヒベルガー博士の秘密」は、ぐっとスッキリしてて、文章が洗練されたという感じで、
    内容と語りがしっくりと一体化している訳です。
    おおぉぉ(笑)。
    今回そのことに一番感動しましたが、しかし、
    やはり如何にも幻想小説的なトリックとオチが堪らんです。
    ハイ。
    大体見当は付いちゃうんだけど、素直に分からないフリをして
    読み進める(笑)のがベストでしょう。
    しかし、この作品のタイトルは寧ろ、
    「ゼルレンディ博士のひみつ日記」の方がピッタリだと思うのは
    私だけだろうか(←って、おいおい☆)。
    それから、もう一本、
    特に印象深いのが1948年発表の短編「大物」。
    このタイトルから、
    普通どんなストーリーを思い浮かべるでしょう。
    これがもう、見事に意表を衝かれて大笑い(^^ゞ。
    でも、こういう荒唐無稽な話って好きだわ。

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著者プロフィール

1907年、ルーマニア、ブカレストに生まれる。1928年より3年間、インドに滞在し、ヨーガやタントラを学ぶ。帰国後は、ブカレスト大学で形而上学史などを教える一方で、小説『マイトレイ』を発表し、小説家としても高い評価を得る。第二次世界大戦中は、ロンドン、次いでリスボンでルーマニア公使館の文化担当官として勤務した。第二次世界大戦終結後はフランスに亡命。『宗教学概論』や『永遠回帰の神話』を発表することで、宗教学者として活躍した。1957年よりシカゴ大学に招聘され、翌年、宗教学教授に就任。1986年にシカゴで没。

「2015年 『エリアーデ=クリアーヌ往復書簡 1972-1986』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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