源氏物語の色辞典 (染司よしおか日本の伝統色)

著者 :
  • 紫紅社
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本棚登録 : 171
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784879405944

感想・レビュー・書評

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  • 最初から最後までうっとり。こんなに美しい本があるなんて。
    草木染めの第一人者である染司(そめつかさ)の吉岡幸雄さんが、源氏物語の登場人物たちの衣装の色を読み解き、実際に草木で染め、それらを襲ねてオールカラーで再現して見せてくれる。
    往時の染色方そのままに五十四帖に沿って進む。まさに夢のようなめくるめく世界だ。

    野生化した桐の木に出会ったことがある。
    15メートルくらいの高さで、ハッとするほど美しい紫色の花をつけていた。
    夢でも見ているかと思うほどの色合いで、何度も何度もその木に会いに行った。
    本書の最初は「源氏物語は紫のものがたりである」で始まる。
    「桐壺」で、まさに桐の花の色が再現されている。なんと人を惹きつける色だろう。

    「桐壺の更衣」が暮らしていた館にもこんな色の花が咲いたのだろうか。
    「桐壺」も「藤壺」も、建物の正式な名称ではない。
    中庭(イコール壺)に咲く花の名前でそう呼ばれたのだ。
    それがそのまま后の呼び名となった。
    このふたりは紫つながりだったということだ。
    平安京の天皇の住まう内裏では、鎮座する高御座は紫の布で覆われていたらしい。
    後に源氏が愛するのも「紫の上」。「若紫」の帖だ。
    色に言及せず「濃き」「薄き」という表現があったら紫の濃淡を指すのだという。

    「玉鬘」の帖の終わりごろに登場する「衣配り」の場面の華麗さが溜息もの。
    お歳暮のように、新年を迎える調度や女君たちの晴れ着を配る習わしだったそうで。
    源氏がそれぞれの女君に用意した衣装がもう、美しいうえにも美しい。
    更に、「澪標」の帖で住吉神社に詣でる源氏一行の華やかさなことよ。
    一位の深紫の色から九位の浅縹(あさはなだ)の色まで、ずらりと再現して並べてある。
    「帚木」の帖では、手紙にも植物染で使った和紙を使っていたことが紹介される。
    「季節にふさわしい」染め和紙を組み合わせて文を書いたというから何とも粋なひとたちだ。

    着道楽と言えばそれまでだが、現代と違いイメージを大切にする時代だった。
    女性は簡単に顔を見せず、御簾や几帳から垣間見える裾や袖口の襲(かさね)の色で男性を刺激した。そのセンスが良ければ「ああ素敵なひとだ」と恋文をしたためたのだ。
    文に書かれた文字や歌の良し悪しも問われ、知性プラス感性の高さが尊ばれた。
    物語という想像の世界の色合いをひたすら書き上げた紫式部は、やはり素晴らしい書き手だったのだろう。その頭の中にはどれほどの襲の色目がおさまっていたのやら。

    十世紀に書かれた律令の施行規則である「延喜式」という書物に、三十種類の色名とそれを染めるための植物染料と用布、灰や酢などの助剤が列記されているらしい。
    解読し、工夫を重ねて染め上げた色の数々を見ると、目の前に平安装束に身を包んだひとたちが見えてくるようだ。
    巻末の24種の襲を見て、もう一度うっとり。
    春の「桜の襲」、夏の「卯の花の襲」秋の「桔梗の襲」と冬の「胡桃の襲」。。。
    こんな女性が現れたら、私だってぼおっとなるわ。

    世界には源氏物語ファンもたくさん存在する。
    日本の美意識について何か聞かれたら、本書を開いて見せてあげたい。
    源氏物語好きなブク友さん、ぜひどうぞ。眺めると一挙に平安京に旅するかのようだ。

    • nejidonさん
      地球っこさん、コメントありがとうございます!
      うわぁ、、そういうわけだったのですね・(笑)
      何だか俄然、私も欲しくなってきました。
      真...
      地球っこさん、コメントありがとうございます!
      うわぁ、、そういうわけだったのですね・(笑)
      何だか俄然、私も欲しくなってきました。
      真似っこ?いえいえ、そうじゃなくて。
      このところちょっと本代がかさんだので躊躇していたのです。
      自分のものにしたら好き放題できますものねって、なんの話じゃ(*'▽')
      私が吉岡幸雄さんだったら泣いて喜ぶようなコメントですよ!
      ありがとうございます!
      地球っこさんの手元に届くのを、私も首を長ーくしてお待ちしています♡
      2020/11/10
    • 地球っこさん
      nejidonさん、メリークリスマス!です。

      ふふふ、待ちに待ったクリスマス。
      まだイヴですが……もう待てない!

      てなわけで、...
      nejidonさん、メリークリスマス!です。

      ふふふ、待ちに待ったクリスマス。
      まだイヴですが……もう待てない!

      てなわけで、とうとう、こちらの本もウェイリー版「源氏物語」とともに、わたくしの本棚に並べることができました。
      何度も眺めてはうっとりしております。

      今は年を越すまでに読み終わった本の感想を書いてしまおうと頑張っているところで、今年最後に登録するブクログ本は、すでにスタンバってます。
      それは、昨年末に読んだ「星と祭り」に通じるかもしれません。今年初めの「天平の甍」にも通じるかな?
      わたしにとって1年を無事に過ごすことが出来た……という感謝の想いが、偶然にもそんな選書となったのかもしれません。
      て、なんのことやらですね。ごめんなさい。

      というわけで、こちらの本は年末年始、たっぷり楽しんでから感想は書きたいと思います。
      来年最初のブクログ本となったら、本棚が雅になりそうでウキウキしちゃいますo(>∀<*)o
      2020/12/24
    • nejidonさん
      地球っこさーん♡ メリクリでございます!
      おおお、遂に遂に、本棚に並ぶ日が来たのですね。
      おめでとうございます!(^^)!
      長らくお待...
      地球っこさーん♡ メリクリでございます!
      おおお、遂に遂に、本棚に並ぶ日が来たのですね。
      おめでとうございます!(^^)!
      長らくお待ちした甲斐がありました。
      ぜひぜひ年明けにでもレビューを載せてください。
      一年の始まりにふさわしい「雅な本棚」になっていくと思いますよ♪
      色々な見方が楽しめる本なので、手元にあったら毎日見てしまいますよね。
      というより先ず表紙が見える位置に立て掛けておきたい本です。
      ええ?今年最後の本のレビューですか?
      第3ヒントまでもらいながら答えがでないような、このもどかしさよ。。
      井上靖さん?夏葉社さん?まさかのミステリー?
      ああ、うずうずして夜も寝られません(笑)

      今年も地球っこさんと色々お話出来て本当に楽しかったです。
      いつもお付き合いいただいて、面白おかしく話を膨らませてくれて。
      また来年もよろしくね。と、その前に良いクリスマスを(*^^*)
      2020/12/24
  • 平安王朝の多彩な「襲の色目」を「源氏物語」54帖に沿って再現した色彩辞典。
    それはそれは美しい。
    花や実、樹木の皮や根などから、これほどまでに美しい色が生まれてくるのかと感激する。
    著者・吉岡幸雄さんの日本の伝統色へと懸ける想い、飽くなき探求心、そして『源氏物語』に真摯に向き合われたことによって生まれた最高傑作に間違いない。その熱情は大変丁寧な本編の作りにも表れている。

    この辞典の特徴であり素敵なところは、やっぱり「襲の色目」という形で『源氏物語』の色彩を紹介しているところだ。
    どれほど美しい色だとしても、ただ単色を並べられているだけでは、少しばかり面白味にかける。
    さらには、物語の原文、各帖のわかりやすい解説、調べやすい索引なども載せられおり、『源氏物語』を読んでなくても十分楽しめるようになっている。

    さて『源氏物語』同様、この『「源氏物語」の色事典』も第1帖「桐壺」から始まる。
    ここでは桐壺更衣の桐の花のイメージが「桐の襲」、藤壺宮を象徴する藤の花が「藤の襲」となって再現されているのだ。
    どちらも紫の濃淡が上品でうっとりする。
    紫といっても、「桐の襲」は貴重な紫草の根を用いて、やや渋く染め、裾へいくほど色が濃くなる配列になっている。
    「藤の襲」のほうも、同じく紫根を用いているが、こちらは裾へいくほど色を薄くし、最後に白平絹が置かれる。
    加えてどちらの襲も、蓼藍と黄蘗で染めた葉の緑が添えられているのだ。
    それにしても同じ紫でも濃淡や配列によってまるで受ける印象が違う。
    「桐の襲」は桐壺更衣のような儚き美しさ。「藤の襲」は藤壺宮の輝く美しさのようである。これには感動した。もうこの襲じゃないと彼女たちではない、逆ではありえないと思ってしまう色目なのだから。

    このように『源氏物語』には「紫」がよく出てくる。桐も藤も花は紫であるし、紫式部も「紫」だ。「若紫」の帖には、のちの紫の上が登場すると著者はいう。
    『源氏物語』は紫のものがたりである。
    この言葉からも、著者がどれだけ「紫」の色目を大切に再現されたのか窺い知ることができた。

    「花宴」の帖では、光源氏の「桜の襲」がたいそう可憐であった。
    正装の他の参宴者たちとは違う「桜の唐の綺の御直衣、葡萄染の下襲、裾いと長く引きて」という普段着の直衣姿である。
    このような淡い桜色は、なかなか着こなすのが難しそうである。やはり似合うのは、若く美しきプリンス源氏だからこそなのだろう。源氏は自分の魅力が最大限発揮される見せ方を、ちゃんとわかっているなぁ。

    眺めていて心華やいだのは「玉鬘」の色布と衣裳。
    帖の終わり近くに「衣配り」とよばれる場面がある。源氏のような位の高い男性は、今日のお歳暮のように、新年を迎える調度や女君たちの晴れ着を配る習わしがあった。
    なかでも紫の上の葡萄染の衣裳は高貴な色合いで、もっとも高価なのだろうということは見ただけでわかる。やはり源氏の最愛の女性だ。
    それって他の女性陣たちの心境は複雑なのかな。いやいや、やっぱり紫の上の方が複雑だよねぇ。
    しかしながら源氏がそれぞれの女君に用意した衣裳は、どれも彼女たちのイメージにピッタリなもので、源氏(紫式部だけど)のセンスには脱帽するしかない。彼女たちの「光君はわたくしのことをちゃんと見てくださってるんだわ。やっぱり……好きっ」という声が聞こえてきそうだ。

    襲の色目は同じ名称であっても、用いる個人によって微妙に色調が異なるのはいうまでもないと筆者は述べる。
    四季二十四節気七十二候、雪月花の風景に眼を凝らす。そこで育まれた1人ひとりの感性が、衣装や調度に反映される。だからこそ歌を詠むなど、季節の移ろいを感じて表現できる教養が貴人には備わっていなければならなかった。
    なにより、恋の駆け引きにも必要なんだもの。だって襲の色目のセンスで恋が生まれることもあるのだから。やっぱり少しでも他の人と差をつけたいじゃない?

    最後になりましたが、
    本年もどうぞよろしくお願いします。

    • nejidonさん
      地球っこさん、こちらこそ今年もよろしくお願いします。
      いやはやもう、年の初めのレビューとはかくも美しいものなのでしょうか。
      読んでいても...
      地球っこさん、こちらこそ今年もよろしくお願いします。
      いやはやもう、年の初めのレビューとはかくも美しいものなのでしょうか。
      読んでいてもため息ものです。
      本を読んだだけでは浮かばないあの色、あの衣装、これで見事に蘇りますね。
      源氏の「桜のかさね」と玉鬘は私も心に留めました。ええ、よーく覚えております。
      これでひとりでも多くの方が本書を手に取ってくれますように。。
      雅なレビュー、ありがとうございます♪
      2021/01/05
    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは。
      今年もよろしくお願いします♪

      この本はもう宝物です。
      nejidonさんのおかげで出会えました。...
      nejidonさん、こんばんは。
      今年もよろしくお願いします♪

      この本はもう宝物です。
      nejidonさんのおかげで出会えました。
      ありがとうございます(*>∀<*)

      nejidonさんのレビューにありました「澪標」の帖も華やかでしたね!

      今年はまずはウェイリー版源氏物語を読み終えたいと思います。
      それからその時代の道長や彰子、行成、和泉式部など気になる人物についても知りたいな。
      難しいことは挫折しちゃうかもしれませんが、いつかわかる日が来るだろうと気長に楽しみながら学んでいきたいと思いまーす。





      2021/01/05
  • 「源氏物語」54帖で描かれた色彩豊かなくだりを、伝統的な植物染めの技法で表現した本。

    オールカラーの写真がどれも美しく、見ているだけで楽しい。

    襲の色目、官位の色などの衣装だけでなく、立文、絵合の風景、御簾や御几帳も再現。
    本書を片手に、改めて「源氏物語」を読みたくなる。

    べた塗りの色見本で、襲の色目をまとめた資料はよくあるけれど、実際の布地を使った、織り方の違いによる質感までわかるものは、珍しい。
    当時の暮らしと美的センスが、よりリアルに感じられる。

    有職文様が織り込まれた衣装が主流で、縫物や絞染は「関屋」にしか出てこないなど、染色を生業にしている筆者ならではの着眼点だった。

    色の話だけではなく、それぞれの帖のあらすじと人物関係図も。
    「源氏物語」好きにはもちろん、「源氏物語」を通して読んだことがないという方の入門書にもぴったり。

    • nejidonさん
      KOROPPYさん、はじめまして。
      私もこの本を読みました!
      伝統色の美しさにうっとりでした。
      文章だけでは分からない色彩を再現してあ...
      KOROPPYさん、はじめまして。
      私もこの本を読みました!
      伝統色の美しさにうっとりでした。
      文章だけでは分からない色彩を再現してあって、理解の手助けになりますよね。
      ちょっと嬉しくなってコメントしました。
      2020/11/19
    • 地球っこさん
      KOROPPYさん、こんばんは。
      この本、欲しいのですよーo(>∀<*)o
      自分へのクリスマスプレゼントにしようと思ってます。
      KOR...
      KOROPPYさん、こんばんは。
      この本、欲しいのですよーo(>∀<*)o
      自分へのクリスマスプレゼントにしようと思ってます。
      KOROPPYさんのレビューを読ませていただいて、もう早く読みたいです!
      2020/11/19
    • KOROPPYさん
      >nijidonさんへ
      こんにちは。
      コメントありがとうございます^^

      ほんとうっとりしちゃう美しさですね。
      読んでいるときはな...
      >nijidonさんへ
      こんにちは。
      コメントありがとうございます^^

      ほんとうっとりしちゃう美しさですね。
      読んでいるときはなんとなくしかイメージできてなかった色が、
      実はこうだったんだ!
      とわかってうれしかったです。

      >地球っこさんへ
      こんにちは^^

      ご自分へのクリスマスプレゼントなんて、素敵です!
      何度も見返したくなる本ですよ。
      12月が楽しみですね^^
      2020/11/22
  • 著者は草木染、染司(そめつかさ)、染織家。源氏物語五十四帖に登場する人物がまとっていた(であろう)襲を、著者が実際に染めて再現し、オールカラーで掲載している。『あさきゆめみし』のお供に。あらすじまで書いてあるのでうれしい。
    「柏木」が人物、色ともに好きになった。

    【メモ】
    ・源氏物語は「紫」の物語
    ・桐壺、藤壺などは正式な建物名ではなく、中庭に咲いていた花から
    ・染物は科学に基づいている。染める順番など。
    ・「透かし」がとてもきれい

  •  植物染を業とする著者による、「源氏物語」は紫のものがたりと言わしめるのはなぜかという考察。また、女性の襲(かさね)の衣装の配色や男性の位の違いで衣服の色が違うなど、写真をみるだけでも楽しい。
    (カウンター担当/五重の塔)平成30年11月の特集「色いろいろ」

  • (チラ見!)

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00158615

  • ★★★★★
    そら、もう、目の覚めるような美しさデス(@@)
    植物染めが本職の吉岡さんが、源氏物語の色を伝統にのっとって再現します。
    こんな鮮やかな、あるいはたおやかな色を女子がまとっていたら、そら恋に落ちるわ~みたいな(^^)
    源氏が着ていたピンクの衣装もなかなか!
    「からくりからくさ」も再読したくなりました☆
    (まっきー)

  • 総合して買って良かった。あーうっとり。素晴らしい。素晴らしい織物に源氏物語のイメージを重ねると、あさきゆめみしで光る君が「あの人にはこの色が云々かんぬん…」と述べられていた様々な女性たちのキャラクターがより鮮やかになりました。源氏のストーリーや相関図もあり、一応初心者歓迎本でもあり。この吉岡さんの文章単体で言うと、硬くてちょっと途中でだれてきますが、その他の点では副読本の一つとして選んで良かった。

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著者プロフィール

昭和21年、京都市生まれ。昭和46年、早稲田大学を卒業後、美術図書出版「紫紅社」を設立。昭和63年、生家「染司よしおか」五代目当主を継ぎ、植物染料による日本の伝統色の再現に取り組む。奈良薬師寺「玄奘三蔵会大祭」での伎楽衣裳四十五領の復元、東大寺伎楽衣裳を制作など、日本古来の染色法により古代色を復元。平成21年、京都府文化賞功労賞受賞。平成22年、菊池寛賞受賞。平成24年、NHK放送文化賞受賞。令和元年9月30日、73歳で逝去。

「2020年 『吉岡幸雄の色百話 男達の色彩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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