修道師と死 (東欧の想像力 10)

  • 松籟社
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784879843173

作品紹介・あらすじ

信仰の道を静かに歩む修道師のもとに届けられた、ある不可解な事件の報。
それを契機に彼の世界は次第に、しかし決定的な変容を遂げる。
冷酷で得体のしれない権力、謎と恐怖に翻弄されながら、修道師は孤独な闘いを続けるが……

感想・レビュー・書評

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  • 舞台はオスマン帝国時代のボスニア、修道師(ダーウィシュ)として充足していたアフメド・ヌルディンの元に、弟が逮捕されたという知らせが届く。逮捕理由は不明だが、彼の釈放を訴えれば神の正義に逆らう事に、見捨てても人の正義=神の教えに背く事に。とてつもないジレンマに苦しむアフメドは更なる世俗の柵(しがらみ)に囚われてゆく……。
    本書はアフメドの心の内の記録という体裁の一人称小説だ。それまで敬虔なムスリムとして聖なる信仰の世界に生きてきた主人公が、いきなり俗界の混沌として醜悪なモノに巻き込まれ、戦慄き、否定しようと試み、しかし結局は彼と彼の魂が変容していく様に圧倒される。その描写はややもすれば冗長に感じがちだが、人間が未知の感情・感覚に襲われ、遂には受容する様子を見事に捉えている。傑作である。
    本書のような執筆された時期や言葉も、ストーリーの舞台設定も現代(2022年)の我々から隔たれている作品はいくつもある。それらから人間の普遍的な何かを見出し、触れた時の感動がたまらなく快いから、文学ーー殊に長篇小説はやめられない。

  • 内容については書くつもりはないが、映画化もされたセリモヴィッチ(セルビア科学芸術アカデミー会員)の名作が日本語訳で出版されたというのは価値のある事だ。最後に、この映画化された作品は現地語で検索かけると・・・・・・

  • こういう小説を読んで、深く想いを馳せてきちんと考えるのは大切なことだと思う。
    それを出来る人とできない人、する人としない人といったほうがよいのか、その違いは大きいと思う。

  • 旧ユーゴの複雑さに思いを馳せよう。。。

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    「信仰の道を静かに歩む修道師のもとに届けられた、ある不可解な事件の報。
    それを契機に彼の世界は次第に、しかし決定的な変容を遂げる。
    冷酷で得体のしれない権力、謎と恐怖に翻弄されながら、修道師は孤独な闘いを続けるが……」

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著者プロフィール

1910年、ボスニアの北東部にある町トゥズラで、裕福なイスラーム教徒の家に生まれる。
ベオグラード大学で文学を修めたのち、故郷の高校で教師として勤務。第二次大戦中はパルティザン運動に参加して共産党員となり、戦後はサラエヴォ大学の教壇に立ちながら作家として活動した。
1966年に刊行された本書『修道師と死』が大きな反響を呼び、ユーゴスラヴィアで最も権威ある文学賞NIN賞を受賞。
作品にはほかに『静寂』(1962)、『霧と月明かり』(1965)、『砦』(1970)などがある。
1973年にボスニアを離れてベオグラードへ移住、1982年に同地で永眠した。

「2013年 『修道師と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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