メダリオン (東欧の想像力)

制作 : 加藤 有子 
  • 松籟社
4.75
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本棚登録 : 21
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784879843418

作品紹介・あらすじ

ポーランドにおけるナチス犯罪調査委員会に参加した著者が、その時の経験、および戦時下での自らの体験を踏まえて著した短編集。「縁取られた円形の肖像」をさす「メダリオン」という言葉を題に掲げ、第二次大戦中のポーランドにおける、平凡な市民たちの肖像をとらえる。ユダヤ系も含むポーランド市民たちの、ナチス・ドイツ占領下にくぐりぬけた経験をめぐる証言文学。「ホロコースト」という言語を絶する現実を前にして、それでも言葉で捉え、表現しようとした最初期の試みにして、最良の成果の一つ。

感想・レビュー・書評

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  • 寒さは耐え難かった。道すがら、そして工場の機械の脇で、より弱いものはみな死んでゆきました。彼らはしたいを地下牢に積み重ねました。そしてこの同じ地下牢に、本当に些細な違反のために人々を閉じ込めていたのです。食べることも許さず、身を覆うことも許さず、一晩中、裸の地面の上にです。ようやく朝に点呼に呼び戻しました。が、点呼のあとは再び地下牢へ、食べ物なしです。彼女たちに食べ物をやることも禁じられていて、点呼の際も誰もパンを分けないように、一人一人はなされて立たされました。女SSたちはこのことにとても神経をとがらせていました。それでも何か食べていました。一度、一人が口を動かしたことがありました。そして人の爪には血がついていました。あそこでの懲罰は凄まじいものでした。あそこで彼女たちは夜にあの死体を食べていたのです。

  • その時ポーランドにいた普通の人たち。
    迫害した人も迫害された人も、死んだ人も生き残った人もいる。
    この本では聞き手の存在はほとんど感じられない。ただ、起こったことを語る人がいるだけ。そこから立ち上がる現実のおそろしさ。
    「人間が人間にこの運命を用意した。」巻頭のこの言葉にすべてが語られている。
    ノンフィクションではない、確かに文学である短編集。

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プロフィール

1884年、ワルシャワで生まれる。知識人の集う文化的環境で育ち、早くから文学に親しむ。
1906年に小説『女たち』を刊行して本格的に作家デビュー。人間の心理を探った『境目』(1935)など次々に作品を発表、両大戦間期はポーランド文学協会の唯一の女性会員であり、戦後にかけて文壇の中心的存在だった。
1945年、ポーランドにおけるナチス犯罪調査委員会に参加、その経験が本書『メダリオン』に結実する。
戦後は国会議員を務めるなど公人として活動する一方、社会主義リアリズムが公の文学様式とされた状況下では自由な創作は憚られ、戦前の作品の発表も制限された。1954年、逝去。

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