裸のメモ

著者 :
  • 書肆山田
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (99ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784879958297

感想・レビュー・書評

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  • 吉増剛造。詩人。
    吉増の詩集の中では、
    総文字数が圧倒的に多い本です。
    なので、
    ずっと、
    読むタイミングを計っていました。
    それで、
    こないだ読み始めて、
    今日、読了。
    ほぼ、10日間ぐらいかな、
    地下鉄の中で、片道22分。

    評価の★は、
    5個までしかないけれど、
    50個の★をつけたいです。

    この世に、
    こんな本が存在すること自体に、
    僕は心底、驚いています。
    吉増の詩はたくさん読んでいるけれど、
    今回は、
    読み終えて、
    こんな本は、他にない、
    と思いました。
    何が書かれてあるのか、
    さっぱり判らないのだから。
    だからといって、
    もう読みたくないか、
    と言ったら、逆。
    無人島に行ったら、
    この本を持ってゆけば、
    一生、退屈せずに、
    過ごすことができそうです。

    「フィネガンズ・ウェイク」も、
    何が書かれてあるのか、
    さっぱり判らなかったけれど、
    「裸のメモ」も、
    さっぱり判らない。
    でも、
    読み終えて、
    あ、
    これは、
    海の中のことなんだ、
    と思いました。
    海の中には、
    たくさんの生物がいて、
    そのいちいちを、
    吉増のいちいちの言葉が、
    現しているように、
    思えました。
    内容は、
    「海」なのだから、
    言いたいことというよりも、
    「海」が、
    ここ、または、
    そこ、にある、
    ということだけを、
    押さえておけば、
    こんなに愉楽の極みの、
    言葉の群れは他にありません。

    ジャン・ジュネ、三島由紀夫といった名前がでてくる、
    「静かな虚空(アオソラ)」という詩。
    これは、震災後に書かれた、
    作品です。
    虚空ということを、
    吉増は言っているのです。

    吉増は、
    たくさんの、
    文学者や哲学者の名前を、
    出してきますけれど、
    きっと、
    想像するに、
    彼らの著書への、吉増の、読みは、
    計り知れないほど、
    深く、独特異であるはずです。

    「裸のメモ」を、
    読んで、
    僕は、
    本物の芸術に、
    目を通した、
    という経験をしました。
    去年、
    吉増さんに、千種正文館で
    お会いして、
    ひと言、ふた言、
    話ができました。
    73歳、驚くほどの瑞々しい感性を持った、
    超人、吉増剛造。

    この詩集は、
    感性で読むのではなく、
    ただ、
    そこに言葉があって、
    それを読めばいい、
    そう教えてくれる本です。
    「自由」なんていう、
    外国の言葉を使っても駄目。
    この本の印象は、
    確かに「自由」。
    でも、
    そんなくくり方はできません。
    やはり、
    この本は、
    「海」。
    だから、
    飽きる、
    ということは、
    間違いなく、
    ありません。

    朝吹真理子は、
    吉増の追っ掛け。吉増の影響下のもと、
    彼女は、
    素晴らしい小説「流跡」を書いています。

    海の本。
    こんな本が、
    この世に存在して、
    著者も現存している、
    という
    こと。
    愉楽です、
    この世は。
    こんな言葉、
    を、
    書く人に、
    出会っている。
    吉増剛造。

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著者プロフィール

1939年、東京生まれ。1957年、慶應義塾大学文学部入学。在学中に岡田隆彦、井上輝夫らと「三田詩人」に参加、詩誌「ドラムカン」創刊。1964年、処女詩集『出発』。『黄金詩篇』(1970)で第1回高見順賞。『熱風a thousand steps』(1979)で第17回歴程賞。『オシリス、石ノ神』(1984)で第2回現代詩花椿賞。『螺旋歌』(1990)で第6回詩歌文学館賞。『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(1998)で第49回芸術選奨文部大臣賞。2003年紫綬褒章。「詩の黄金の庭 吉増剛造展」(北海道立文学館/2008)。『表紙 omote-gami』(2008)で第50回毎日芸術賞。2013年旭日小綬章、文化功労者、福生市民栄誉賞。2015年日本芸術院賞、恩賜賞、日本芸術院会員。「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」(東京国立近代美術館/2016)。「涯テノ詩聲 詩人 吉増剛造展」(松濤美術館/2018)。映画「幻を見るひと 京都の吉増剛造」(2018)が国際映画祭10冠。七里圭監督作品「背」(2022)主演。映画「眩暈 VERTIGO」(2022)が国際映画祭50冠。『Voix』(2021)で第1回西脇順三郎賞(2023)。第6回井上靖記念文化賞(2023)。「フットノート 吉増剛造による吉増剛造による吉増剛造展」(前橋文学館/2023)。

「2024年 『DOMUS X』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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