近代とはいかなる時代か? ─モダニティの帰結─

  • 而立書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880591810

作品紹介・あらすじ

近代の、いわば時代の申し子である社会学は、21世紀への変わり目に、われわれに何を提示できるのであろうか。いま、直面する社会変容を描く。

感想・レビュー・書評

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  • ポスト・モダンという言葉は便利である。それは何も語ることはないからである。モダンという言葉にこだわるべきであろう。徹底的にモダンを考えて、悩み、行動する意味を本書は与えてくれる。

  • 近代化によって人間社会は発展してきたが、それが限界に来ている。近代を徹底しすぎた。今のままではさらなる進歩はできない。近代の生み出した弊害によって、危機に瀕している。▼現代社会のリスクは目に見えない、予想できない、影響が広範囲(地球規模)。地球温暖化、放射能汚染。専門家だけでリスクを測るのでなく、専門家以外の話も聞くべき。▼富の分配だけでなく、リスクの分配が問題になる。貧しい人々にリスクが集中する傾向にある。工場の近くにある土地は安く、貧しい人が購入しがち。ただし、広域に及ぶ環境汚染は金持ちも貧乏人もない。U・ベック『リスク社会』1986

    伝統社会と違って、今は何事も自分で決めるようになった。昔は伝統や慣習に縛られていたが、今は自分で判断するようになった。自由だが、不安定で、リスクもある。昔は慣習など外部に参照するものがあったが、今はそれがなくて自分で探すことになった。伝統社会では「いままでそうだったから」という理由で行動できたが、今は「自分がそうしたいと思ったから」という理由しかない。「本当にこれでよかったのだろうか」と不安になる。それでも自分で自分の行為を絶え間なく意味付けしていくほかない。▼伝統社会と違って、今の人は専門家の知識に依存している。医者、弁護士、原発の技術者。その知識の正しさはその専門家への信頼に依存するしかない。知識は常に更新されていくもので、専門家の知識が常に正しいとは限らない。人々は「専門家を信頼したけど、本当にこれでよかったのだろうか」と不安になる。▼「モダニティ」とは、近代社会・産業文明のこと。17世紀に欧州で現れた社会生活・組織の形。「モダン」という言葉は曖昧なので使わない。現在の世界はモダニティのもたらした結果がこれまでより徹底化・普遍化していく時代(ハイ・モダニティ)。モダニティが終わり、ポスト・モダニティの時代になったのではない。A・ギデンズ『モダニティの帰結』1990

    非正規・失業(貧困)が増えると、犯罪が増加する。富裕層は貧困者が犯罪を起こすので、監視カメラを設置して犯罪を管理しようとする。被害を最小限にするために保健統計のようにリスク計算する。些細な違反や秩序を乱す行為を徹底的に取り締まり、犯罪に発展しないよう社会統制を始める。窓割れ理論。不寛容な監視。▼最貧層の人々は強力すぎるほどに文化的に包摂されているが、そうした文化がふりまくイメージ(豊かな生活)を実現することから系統的に排除されている。ジャック・ヤングYoung『排除型社会』1999
    ※英Kent Uni.

    人は自分が所属する集団を基準にして自分とは何者かを考えていた。所属が安定している限り、「自分とは何者か」も安定していた。しかし、最近は所属が急速に流動化するため、「自分とは何者か」も流動的になる。常に変化に備える必要が出てくる。▼伝統的な共同体は個人をその内部にかっちり固定していたが、近代化は伝統的な共同体から個人を解放した。ただ伝統的な共同体に代わって企業、労組、地域共同体、家族などが、個人をその内部にかっちり固定した。しかしさらに近代化が進み、企業、労組、地域共同体、家族からも個人は解放され、流動化している。福祉国家から新自由主義への移行はそれに拍車をかけた。ジグムント・バウマン『リキッド・モダニティ』2000

  • 系・院推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 361.5||GI
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/448544

  • 中級者以上向けの社会学の本です。著者はイギリスの社会学者であり、イギリスのブレア政権をバックから支えた人物の一人です。新しいとは言えない本ですが、中にでてくる「再帰性」「信頼」「脱埋め込み」といったキーワードを理解することは、一筋縄ではいかない手ごわいこの社会を理解する道具を手に入れることになると思います。みんなさんには、これらの概念を使って具体的な社会現象を分析していただきたい。

    教育学部 A.T


    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=57820

  • かなり理論的で抽象度が高いが、「脱埋込み」や信頼に関する一連の議論のように、現代でも議論のベースとなる着想を多く著している。しかし、僕はギデンズの主張ははそこまでよくわからない。どっちかというと苦手。

  •  「近代」というものに対して、なんとなくぼんやりと知っているような知っていないような感じだったので、ちゃんと知りたいと思い、この本を読みました。近代的なもののイメージが、けっこう見えてきました。近代というものの知的把握は、われわれ現在の自明性を、自明でないものとして、覚識させるのに、非常なる起爆力をもっているため、めっちゃおもしろい。
     2009.2.3-4.

  • 大学院のゼミで読んだ本。
    信頼、リスク、再帰性などの概念を利用しながら近代(モダニティ)を描き出そうとしています。
    現代はポストモダンといわれる近代とは異なる時代というのではなく、近代が持つ特徴が徹底化した時代であるというのが彼の主張です。
    作者アンソニーギデンズはブレア首相おかかえの社会学者として有名。社会理論家としても世界トップクラスの人物です。社会学を学ぶ人、現代とはどんな時代なのか知りたい人にぜひオススメしたい本です。

  • ギデンズの著作で邦訳されている中から最初の1冊を選べ、と言われれば、これがいいのではないかな、と思います。

  • 近代の特徴的な「再帰性」や時間と空間の分離現象などからグローバル化を説明。

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著者プロフィール

アンソニー・ギデンズ( Anthony Giddens )
1938年、イギリス生まれ。社会学者。ケンブリッジ大学教授などを経て、LSEの学長を務めた。現在はLSE名誉教授、イギリスの上院議員。著書に『親密性の変容』、『第三の道』、『社会学』など多数。

「2021年 『モダニティと自己アイデンティティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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