一握の塵

  • 彩流社
3.85
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本棚登録 : 38
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882024194

作品紹介・あらすじ

愛息の死をきっかけに知る妻の情事──片田舎の城館での平穏な日々は、一転悲しきファルスとなり、思いがけない結末をアマゾンの奥地で迎える。現代英国文壇きっての名文家ウォーの最高傑作! アメリカ版の 〈もうひとつの結末〉を付す。

感想・レビュー・書評

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  • 1934年発表で、原題は「A Handful of Dust」。自分の邸宅と伝統を愛するトニィ・ラーストと、ロンドンでの華やかな生活に憧れる妻のブレンダ。そんな二人の心のすれ違いを描く作品で、(少なくとも前半は)なんとも物悲しい雰囲気が漂っている。それでも、ウォーは随所にブラックでシュールなユーモアをはさみ込んでくる。

    たとえばこんな場面がある。事故で息子を亡くしたトニィは、ブレンダの帰りを館で待っているが、気が動転して落ち着かない。その場に居合わせたラタリィ夫人は、気を紛らわせようとトランプゲームを提案する。しかし、トニィは「動物あわせ」というゲームしか知らない。それは、お互いカードを一枚ずつ出し、数字が同じなら動物の鳴きまねをするというもの。「ワンワン」、「コッコッコー」と二人がゲームに興じていると、運悪く執事に見られてしまう。退室した執事はほかの使用人たちにこう漏らす。

    「牝鶏の鳴きまねなんかしておられるんだから。階上には坊っちゃまの亡骸があるっていうのに」
    (p.173)

    悲しみと可笑しさが入り混じった(そしてゾッとする結末をむかえる)傑作なのだけど、邦訳は絶版になっているので、図書館で借りるくらいしか読む方法がないのが残念。

  • 初読
    ★3.5
    こちらじゃなく小泉博一訳。

    屋敷や貴族生活描写も訳なのか持ち味なのかイマイチ心浮きたたず、
    「トニーの憂き目」で悪い方に話が進むも、
    これまたやっぱりだからどうなのか
    「英国ゴシック2」で離婚するのも面倒くさいお膳立てが必要なんだね…
    でもやっぱり私の中に漂うだからってどうなの感(笑)
    「都市を求めて」で
    いきなり舞台を変えブラジルアマゾンに向かうトニー、
    ワクワクする訳でもなく、一体この話はどこに向かってるのか、
    何を読ませられてるのか、もう残りの頁はそんなにないぞ、
    というところで
    「トッド家の方へ」
    あっと。いきなり。ディケンズを朗読させられる男。
    こんな結末があるのか……!

    好きな方、わかる人には最初から面白いのかな
    私には此処に来るまでわからず、でも到達したら
    忘れられない世界だった

  • じわじわと背後からやってくる崩壊。

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著者プロフィール

Evelyn Waugh(1903-1966)
イギリスの著名な出版社の社主で、文芸評論家でもあったアーサー・ウォーの次男として生まれ(長兄アレックも作家)、オクスフォード大学中退後、文筆生活に入る。デビュー作『衰亡記』(1928)をはじめ、上流階級の青年たちの虚無的な生活や風俗を、皮肉なユーモアをきかせながら巧みな文体で描いた数々の小説で、第1次大戦後の英国文壇の寵児となる。1930年にカトリックに改宗した後は、諷刺の裏の伝統讃美が強まった。

著作は、代表作『黒いいたずら』(1932)、ベストセラーとなった名作『ブライヅヘッドふたたび』(1945)、T・リチャードソン監督によって映画化された『ザ・ラヴド・ワン』(1948)、戦争小説3部作『名誉の剣』(1952-61)など。

「1996年 『一握の塵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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