寝盗る女 (下) (カナダの文学 10-2)

  • 彩流社
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882025115

作品紹介・あらすじ

“魔性の女”ズィーニアの正体は?──人生を弄ばれた、三人の女性に執拗に取り憑くズィーニアの影が、再び三人を危機に追い込む。その結末は……。
──アトウッド自身「自分の作品の中でも、いちばん翻訳しにくいかもしれない」という翻訳者泣かせの労苦にもかかわらずやってこられたのは、作品の面白さである。アトウッドの手法はユニークである。推理小説ではないが、次に話がどう展開するのだろうか、と読者を先に急かせるサスペンスがある。読み手側がこうなるのではないか、と思いながらもとんでもないどんでん返しがある。結末についてはなかなか分からない。エンターテイメント的要素もあるが、心理描写はさすがで、哲学もあり、知的小説である。暗いテーマを扱いながらも、辛味の効いたウイットとユーモアで軽みをだす。さすがである。彼女の中では物語が枯渇するということがないのではないかと思う。(「訳者あとがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • 上巻から続く3人の女たちの居心地の悪い子供時代の話を読むという苦行をこなし、さあもうお膳立ては全部そろったから解決篇をお願いします!となったところであっけない幕切れ。ねえねえそこを説明しないんだったらなんで3人の人生を子供時代にさかのぼって読まされなきゃならなかったのよ、という気持ちになった。ヴィランに理由なくていいなら3人の不運にも理由なくていいよ。子供が辛い目に遭う話はいやなんだ。

    「そんなことってあるんだろうか」って思ったのは、3人とも、夫/恋人に対する戦略が「我慢する」「癒す」しかないこと。3人は大学時代同じ女子寮にいた以外の共通点はなくて、境遇も嗜好もぜんぜん違うのに、男にはまるっきり同じ態度を取る。それでもってひたすら我慢したって終わるときは終わるのに、終わったことさえ自分の責任にしてしまう。「そういうとこだぞ」って話である。半分ずつでいいだろそこ。ズィー二アが天災なのならパートナーとの別れも天災でいいだろ。でも、そういう無邪気さにズィー二アはつけ入るということなのかもしれない。妖怪ですね。

    もう一つ引っかかったのは、女は悪党でも人の家庭を壊す程度のことしかできないのかなということ? 組織をつぶせ、国家を転覆しろ。

    ということで辛くて面白い読書でしたが読後感は不満。なんだか設計が自分向きじゃなかった。だれかもうちょっと胸のすく話を書いてください。寝盗る方も寝盗られる方もかっこいいやつ。

  • 悪女なのか悪魔なのか、ズィーニアという国籍不明の大嘘付き女に人生を狂わされるどころか、いなごの大群の急襲に合ってしまった、かつての大学寮に住んでいた女性三人の壮絶な話。その都度寄り添い助け合い手を取り合って生きていた。かまきり女に再開した時は三人ともそれぞれがマジで殺そうとする。こいつは死なない限り相変わらずなんだ。災厄のように書かれるが、作者としては昔からの童話などに登場してくる強烈な存在を再現したかったそうで、三人共々、潜在的に、自分がなってみたかった、もう一人の自分を映し出す鏡のような存在だったと。

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著者プロフィール

マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood):1939年カナダ生まれ、トロント大学卒業。66年にデビュー作『サークル・ゲーム』(詩集)でカナダ総督文学賞受賞ののち、69年に『食べられる女』(小説)を発表。87年に『侍女の物語』でアーサー・C・クラーク賞及び再度カナダ総督文学賞、96年に『またの名をグレイス』でギラー賞、2000年に『昏き目の暗殺者』でブッカー賞及びハメット賞、19年に『誓願』で再度ブッカー賞を受賞。ほか著作・受賞歴多数。

「2022年 『青ひげの卵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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