- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784882081197
作品紹介・あらすじ
ただのおおらかさではない。彼女は、失敗者たちをもじっと見つめる。克服してきた自分自身の姿がそこにあるからだ。小さな歌を書く人々は、もちろん弱者たちを描いて優れた歌を紡ぐが、大きさというものはそれをも含むことができるのだ。
特攻の少年兵に かくれんぼの
泣く 仲間は
彼が生命を奪ったであろう 必ず探しだそう
艦上の兵士に 忘れられた子は
泣く 何時までも鬼を待つ
そこが出発点だからであろう。だからこそ、立ち上がる歌があり、不屈な歌があり、明るさゆえの孤独があり、かちえた自由のなかでの戸惑いがある。精神と心の複雑と単純のすべてが表現されて、歌集という総合体となっている。大きな完成である。しかし、その単純と複雑の極をさらに透過して、創作活動は続くと思う。(草壁焔太氏跋文より)
華やかでぐいっと夏空に立つひまわりは、作者の象徴のよう。
ひまわりがゆえの孤独。そこまでの道のりを自分の足で歩き、自分の頭で考え、自分の心で決めてきたのだと感じる。
感想・レビュー・書評
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ひまわりのような酒井映子のきりっとした五行歌集。
従順な心には
深々と
刃が
刺さっている
ことがある
ただ微笑むだけで
いい
赦すのは
神の
領域だから
山の上で
巨大な風車が
一基
ぐわりぐわり
秋空を回している
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(中略)
実際に彼女と会っているとき、私たちは非常に大きな、寛容と美と豊かさという実質、存在といっしょにいると感ずるが、彼女に家庭があるということを忘れている。しかし、仕事人、つまりキャリアの匂いもない。憲法でいう、性別、門地、職業、…あらゆる人間の条件から自由である、という気がする。
この歌集全体が、その説明になっているが、それが豊かさとして存在となっているために、一般の、人間くさい、口説き文句のような俗性を打破し、消化しつくしている。「思い」の世界の至るところは、体臭を文芸化しながら読み手の体臭そのものとなって体臭を感じさせない境地であろう。最初に恋文のように見えるとは、そういうことだ。
心や精神の編み物となったときに、得られるそれを普遍という。
(草壁焔太跋より)
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東京本郷五行歌会の重鎮、酒井映子さんの歌集がついに出た!
頭の回転がはやく、センスがよくて、美貌。
その酒井さんの抱える孤独とは。
そしてそれを乗り越える知恵や勇気、精神力。つくづく男前な歌群である。
装丁担当の、メイキングストーリーはこちらから↓
http://shiduku.cocolog-nifty.com/heart/2012/09/post-ef44.html