ぼくの父さんは、自殺した。: その一言を語れる今 (Soenshaグリーンブックス N 4)

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  • そうえん社
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  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882643043

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  • 山口さんが中学二年生の時、彼の父親は自殺した。一千万円を超える借金など様々な要因で追い詰められていたらしい。
    その後、山口さんは叔父夫婦に育てられ、あしなが育英会の奨学金制度を利用して進学した。
    あしなが育英会は親を失った遺児たちの心のケアにも力を入れていて、『つどい』という三泊四日の宿泊研修を行っていた。「自分を語る」プログラムで、他の高校生たちが病気等で親を亡くした体験を語るなか、山口さんは父親が自殺したことというだけで精いっぱいだった。

    教育大学に山口さんは大学生用の『つどい』で、親を亡くした女子大生と出会った。「自殺なんていえなかった」「まわりには自殺のことを隠していた」という体験に共感した。

    『つどい』を運営する側になった山口さんは自殺遺児が増えていることに気づいた。
    自殺で親を亡くした自分たちが、親の自殺を誰にもいえずに苦しんでいる遺児に寄り添うような、痛みを共有する方法を考え、彼らは自分たちの体験をまとめて本をつくった。
    やがて彼らは顔と名前を出して取材を受け始める。
    社会がこの問題を受け止め、対策をとってもらうために。そして、自殺遺児たちがその苦しみとうまく向き合えるように。

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    父の死を乗り越えることはできない。父の死を受け入れて、向き合える勇気を持ったから、こうして人前で語っている。そう語る山口さんが強く印象に残った。

    あしなが育英会の支援制度はなんとなく知っていたけど、『つどい』のような宿泊研修で心のケアまで行っていることは知らなかった。無知過ぎて恥ずかしくなる。
    親を亡くした子ども、といっても、病気なのか事故なのか自殺なのか、理由は様々。

    なんとなく自殺がタブー視されてしまう理由はわかる。けれど、それは自殺を間違って理解しているからだと思う。

    2006年に施行された自殺防止基本法には以下のように定義されている。

    「多くの自殺は、個人の自由な意志や選択の結果ではなく、様々な悩み(倒産、失業、多重債務等の経済・生活問題の外、病気の悩み等の健康問題、介護・看護疲れ等の家庭問題などの様々な要因とその人の性格傾向、家庭の状況、死生観など)により心理的に『追い込まれた末の死』ということができる」

    社会全体が自殺の認識を正しく変えれば、自殺遺児たちの「誰にもいえない苦しみ」は減らしていけるんじゃないだろうか。
    もちろん、どんな理由であっても人の死はとても悲しい。

  • 978-4-88264-304-3 166p 2007・12・? 1刷

  • 学校から子供が借りてきたので私も読んでみた。
    学校図書なので読みやすい。

    中学2年生の時にお父さんが自殺。
    祖父母と一緒に亡くなったお父さんを発見した。

    自分が父親を殺してしまったんじゃないかと苛まれる。
    もっと早く発見していたら今まだ生きていただろうと。

    なかなか父親の自殺を受け入れる事が出来ず悩む毎日。
    でも、痛みを共有できる仲間と出会い、
    自殺者を無くす為に彼は社会に立ち向かっていく。


    人それぞれいろんな環境に置かれ、考えてる事は違う。
    そこをどう周りがフォローしていけばいいのか、
    そして自分もそういう立場になったら、どうしたらいいのか。
    難しい問題だけど、目を反らしちゃいけない事なんだな。

  • 今、日本で自殺をする人は年間約三万人にのぼるという。本書の主人公は、中学二年生のときに父親を自殺で失った青年である。父の死を自殺と言えなかった・・・。目指すべきは「生き心地のいい社会」を築き上げることだろう―――。自殺をなくすため、自殺について語られる社会へ。

    私にできることなんてあるのだろうか、と思わなくてもいい。 語ることで向き合うことができるように、私たちもまた、知ることで何かをつかむことができるはず。

  • 人は話すことで心の整理と気持ちの確認ができる。話すことで第一段階の壁を破ることができるのに、それすらできない状況を作り出しているのは社会だ。自殺した親は子供を見捨てたわけでは決してない。生きるのが苦しかっただけだ。

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著者プロフィール

児童文学作家。(公財)日本動物愛護協会常任理事。著書『ドッグ・シェルター』(金の星社)で、第36回日本児童文学者協会新人賞を受賞。執筆の傍ら、動物愛護センターから引き取った愛犬・未来をテーマに、全国の小中学校を中心に「命の授業」(講演会)を展開。主な著書に、『犬たちをおくる日』(金の星社)をはじめ、累計45万部突破のロングセラー「捨て犬・未来」シリーズ『捨て犬・未来 命のメッセージ』『捨て犬・未来、しあわせの足あと』ほか(岩崎書店)、『捨て犬未来に教わった27の大切なこと』『いつかきっと笑顔になれる 捨て犬・未来15歳』(小社刊)など多数。

「2023年 『うちの犬(コ)が認知症になりまして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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