仁木兄妹長篇全集: 雄太郎・悦子の全事件 (1(夏・秋の巻))

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  • 出版芸術社
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882931782

感想・レビュー・書評

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  • 「猫は知っていた」「林の中の家」2編収録。
    「猫は知っていた」は別に読んだので「林の中の家」のみについて。

    文字通り「林の中の家」で一人の女性が亡くなり、偶然発見者となった仁木兄妹が真相を探るというもの。
    女性の近親者など10人程の登場人物、アリバイや動機をさぐり、最後は大広間に集めて犯人名指しという、オーソドックスな展開が微笑ましい。
    でしゃばらず、警察にも被害者の家族などからも信頼される仁木兄妹、おだやかな作風で、面白かったが思いの外、読むのに時間がかかってしまった。
    (図書館)

  • 江戸川乱歩賞受賞作とその後の第一作が収録。
    巻末に、著者本人による解説・回顧があります。ご本人は、地味な作品と言われていますが、なんのなんの、愛らしい文体で、魅力的です。
    描くことへの歓喜が溢れた一冊。
    是非とも読んで欲しいです。

  • 『猫は知っていた』
    ポプラ文庫版を読んだことがあるので、パラパラと再読。
    老警部もっと活躍してほしかったな。

    『林の中の家』
    下宿先どうするのかなあと思っていたら、かなり良い環境に変わってビックリ。
    事件への巻き込まれ方とその真相が面白い。
    いつの間に砧警部補が雄太郎に対し優しくなったんだろう。


    著者自作の『作品ノート』と『年譜』も良かった。

  • 昭和に活躍された作家・仁木悦子さんの長編2作を収録した1冊。(短編集も同出版社から刊行済み。「仁木兄妹の探偵簿」①・②共にレビュー済み)
    江戸川乱歩賞を受賞された処女作「猫は知っていた」と長編2作目「林の中の家」(雑誌での連載作品)です。


     『猫は知っていた』~夏・7月
    植物学科の学生の兄・雄太郎と音楽大学の学生の妹・悦子の新しい下宿先が決まった。外科病院の箱崎医院の1室を、箱崎一家の愛娘・幸子ちゃんにピアノを教えるという条件で安値で貸してくれるのだ。
    7月の初旬に引越しをし、病院や離れの間取り、箱崎の家族や看護婦・入院患者について把握した矢先に事件は起きた。入院患者の1人・平坂氏がいなくなってしまったのだ。玄関からも裏口からも出られない状態だったのに…。そして時を同じくして、箱崎家の祖母も姿が見えない。探し回るうちに平坂氏からは一方的な用件だけの電話が入り、そちらは落着するのだが…。
    翌日、医院の敷地内にあった防空壕跡から祖母が遺体で発見された。1つの抜け道と途中に埋められた指輪入りの缶もいっしょに…。
    冷静な判断の雄太郎・豊富な想像力と行動力の悦子は、この事件についていっしょに捜査を進めていく。

    『林の中の家』~秋・10月
    何百種ものサボテンの世話をするという条件で大邸宅・水原家に下宿している兄妹のもとに夜半、1本の電話が掛かってきた。見知らぬ女性は兄にある家に来てくれるように言うのだが、悲鳴のあとしばらくして電話は切れてしまった。ただならぬ気配と好奇心ゆえに言われた家に向かおうとする悦子にしぶしぶ雄太郎は同行する。
    向かった先は林の中の家。ラジオドラマ作家・近越の家らしいのだが、中では女性がライオンの置物で頭を殴られ死亡していた。景気よく灯されたガスストーブ、散乱したハンドバックの中身、灰皿には2種類の口紅のついた煙草の吸殻。興味のひく物はたくさんあったが最も不可解なのは、その女性の身元であった。近越の妻ではなく、歌手の内海房子だったのだ。
    担当刑事が面識のあった砧警部補であったことから、兄妹は近越の別居中の妻以外にも、内海家や房子の実家・達岡家にも出向き、その複雑な環境を目にすることが出来た。
    そうして捜査が進むうち、また新たに事件が…。


    やっぱりこの兄妹の学生編はいいですv 毒毒しさがなく、何故かさわやか。嫌味がありません。多分この兄と妹のバランスがいいんでしょうね。童話を書かれていたという仁木先生の文体も、もちろんあるのですが。
    「猫~」は処女作ということでやはり少し拙さはありますが、現代の作家に比べて遜色がありません。ちょっと「複雑な家庭環境」という要素を無理に入れたかな?という感じもしますけど…。 なによりもラストの締め方が印象深いです。大団円というには非情さがある気もしますが…でも、それ以外ではなおツライのです…
    「林~」は長編2作目ということもあり、非常に面白かった!ロジックの取り方も伏線の貼り方も文句なしです。登場人物も、どの人も疑惑があって、しかもそれがなかなか晴れないし(笑) そしていつも思うことですが、子供の使い方がうまいんですよねぇ。

    本編を読後でいいので、著者・仁木悦子さんの年譜についても是非読んでいただきたいです。どうしてこんな生涯をすごされて、こんなにも書けるのかと不思議に思えること請け合いですので。

  • かつて講談社文庫や角川文庫から発売された仁木悦子氏による推理小説が、再度ハード本として収録されたシリーズ本。すでに亡くなられている仁木悦子氏の作品が、こうしてシリーズ本として出版されるのは、ファンにとって何より嬉しい企画。

    本書は、仁木悦子氏の出世作ともなった「猫は知っていた(江戸川乱歩賞受賞)」「林の中の家」など長編作品が収録。
    いずれも、ヤセでノッポの大学理学部(植物学専攻)の学生・雄太郎と、太めでチビの音大生(ピアノ専攻)・悦子の凸凹コンビが活躍する兄妹探偵シリーズ。

  • 懐かしいな〜〜昔いとこの本棚でよく読んでました。ウチんとこの図書館、よくフェアみたいに本の紹介をやってくれるんですが「おやこんなものが」的本が発掘できて面白い。仁木さんの著作はいいよねえ。なんだかまなざしがまっとうで暖かい。筆力もたしかな方です。最近ヘンな、人間関係が錯綜しきったミステリ多くて(世界が)そういうもんと思ってた自分に気づかされた。

  • 母が仁木さんの文庫をいっぱい持っていて、薦められて私も読みました。
    知っている人は少ないと思うけど、江戸川乱歩賞を受賞するほどの方です。
    もとは児童文学を書いていただけあって、子供が主人公の話などが特に上手い。
    『猫は知っていた』は作者とその兄がモデルの兄妹シリーズの一つ。
    女性ならではの観察眼が面白いです。

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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