狂鬼降臨 (ふしぎ文学館)

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  • 出版芸術社
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882933649

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな世界でした。
    表題作で垣間見させられた火の鳥のような(あくまで人の概念が消失して集合体になる結末。ある意味世界樹思想に近いが)、かといって作者なりの解釈に富んだ新しい世界観もいいと思います。
    全編にわたって地獄のような悪夢のような、そんな世界が描かれています。
    基本的にどれも大きな事件や物語が起こった世界の中の一部だったりします。
    見方によれば初めは尻切れトンボにも捉えられた作品もあるが、全編読み通した後だと、私としてはこういった結末のものも良かったです。
    こんな不条理な世界に秩序だった結末はありえないわけですから。
    ヒーローなんて現れないし、『ウォーキングデッド』みたいな無敵な人は現れません。

    『狂鬼降臨』
    神も悪魔もいなくなり秩序がなくなった地獄から、鬼が地上に降りてきて人を虐殺していくお話。
    数人の人間や視点で物語が語られるが、
    最終的には狂ったパターンでの手塚治虫の『火の鳥』エンド。とまとめて良いのだろうか。
    表題作かつ長いだけあって、一番色んな面で優れている。
    描写が分かりづらい所もなくはなかったのだけど、マイナスを補って余りあるくらい、描写がとにかくねちっこい。
    ねちっこいのだが肉塊になりすぎてもはやイメージしづらかったのがまた可笑しい。
    鬼より人間が怖いと思う場面も多々あった。
    というか、基本的に鬼達ははじめの方は事務的に機械的に虐殺してるだけですから。
    むしろ自己だけの欲求を満たすべく凌辱する男達や途中で現れる卑弥呼という歴史上の悪女みたいな人物のほうがよほど鬼よりも怖かった。
    宏美がだんだんと壊れていく様は見ていて痛々しい。
    この作品で好きなポイントは、「グロ」が「エロ」に変身していく点でしょうか?
    最初の『洋子』にしてもそうだけど、気持ち悪い死刑のシーンに半ば恍惚すら芽生え始める洋子に、読者である私も何とも言えない愛しさと淫靡と共感を覚えました。
    後半、死ぬことが無くなり、あの世とこの世が一つになったり、人間が鬼になっていく、人肉が天体のような塊に変わったりと、無秩序な世界が形成されていく。
    「灰色の世界」を求めていたりと最後まで実は秩序を求めていたのは鬼達の方で、肉塊から最終的には集合体になり無秩序となる人間との対比が効いてる。

    『地獄の遊園地』
    まぁあの人をパロったり色々アウトな作品ですが、
    作品の根幹部分には、やはり手塚治…もといあの人のブラックジャックの人工知能の回を彷彿とさせる。
    人を喜ばせるために作られたテーマパークにとって、汚されるから人間が邪魔な存在に捉えられるのは何とも皮肉な。

    『呪縛女』
    悪魔的にまた魅力的に妖しくなった女が男達を皮膚病にし果ては腐らせ殺すという、
    恐ろしくもエロチックなお話。
    友成純一流サキュバス。
    最初の場面でのガンマン染みた雰囲気は西部劇すら彷彿とさせる。
    一人ずつ女を始末していくのは賞金稼ぎのようで映像映えしそうでした。
    三匹目の魔女のシーンは実を言うと催眠音声のメリーさんを思い出した。
    魔女と一つに溶け合う快楽、どんなものだろう。
    考えただけでけしからんのだけど味わってみたい。
    最後まで抗おうと努力した金子だけどさすがに捕まっちゃいますね。
    情勢やら友人の症例やら紹介して、一人目、二人目、三人目と続いていく構成が、読みやすかったが、
    実は前二作も紐解けば順番に物語が展開していく。

    『蟷螂の罠』
    ある日突然殺人に目覚める男の話。
    理由はオンボロ車を馬鹿にされ腹が立ってという、チンケな物だけど、現在の世の中が煽り運転のようにこういう事件で氾濫しているのだから、事実も小説の如く奇なりかもしれない。
    そもそも仕事の接待やら上司のゴルフに間に合わないとか何やらで抱えたストレスが爆発した形なのだけど。
    ただ、じゃあそういうストレスや馬鹿にされた腹いせが行動の全てかといえばそうではないわけで。
    カーセックスを覗き見る場面の描写がエロい。
    そういえばこの作品の中でも、『狂鬼降臨』の動物の死骸のように、回想シーンで虫の死骸を棒切れなどで弄ぶことを母親に咎められる場面があるのですが、作者の過去にそういった経験があったのでしょうか?

    『地獄の釜開き』
    あとがきにあるとおり『狂鬼降臨』の追加エピソードのつもりで書いたらしい。
    死ぬことのできなくなった人間と絶望の世界が描かれてました。
    四人組の男女を主軸に世紀末世界のロードムービーとも言える作品。
    何やら青春物めいてもいるけど、お互いの距離感はそこまで濃くない。
    途中で、嬲り倒し砂浜に生き埋めにした女を興味本位で掘り返しに行く場面が印象深かった。
    蠢く虫に覆われてゾンビのような存在になった娘、魂は何処にあるのかそもそも意識はあるのか?死ぬことのできない悲劇がこれでもかと感じられるが、自分たちで埋めといてビビるのは酷すぎる!
    最終的に男女四人のうちの二人が女の仲間に復讐されるのだけど、無意味に生き残ったダイスケの「やりたいこと?あったかな、そんなもの。」が印象的でした。

    加えて、あとがきにもあるが手書きとワープロの違いは言われてから読み返すと違いますね。
    実を言うと手書き原稿である表題作『狂鬼降臨』は最初は読みづらかった。
    かと言って一度波に乗ったらすらすら読める程度なのだけど、章を跨ぐとまた波に乗らないといけなかった。
    反面、『地獄の遊園地』はすらすらと読めた。
    その流れで表題作飛ばして後の短編(中編)から読んでいったわけだが、『地獄の釜開き』が読みやすかった。
    しかし『呪縛女』しかり『蟷螂の罠』しかり、短編だからそこまで苦なく?読めました。
    けど描写自体の良い意味でのねちっこさは手書き原稿が上回ってましたね。

  • エロ!グロ!テーマやメッセージは感じられず、夢も希望もありゃしない!こんな小説を書ける作者は、異能の人との感を深めました。あとがきで、凌辱の魔界や、狂鬼降臨など執筆時の状況が書かれていたけど、さもありなん(笑

  • よくぞこれほどに鬼畜な作品を書けるものですね……まさしくこれはトモナリワールド。誰にも真似できません。苦手な人にはお薦めできません。にもかかわらず、どこかしらに爽快感のようなものを感じてしまうのは私だけ?
    お気に入りは「地獄の遊園地」。当然行きたくないけどこんな遊園地。なんだか楽しそうな気はしてしまうんですよね……恐ろしいことに。

  • グロ本。ひぃ

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著者プロフィール

1954年、福岡県に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。77年、「透明人間の定理 リラダンについて」で幻影城新人賞評論部門に佳作入選。85年、『肉の儀式』(ミリオン出版)で小説家デビュー。以降、ホラー、ハード・ヴァイオレンスを中心に活躍。映画評論家、コラムニスト、翻訳家、ダイバーとしても知られる。主な著書に小説『邪し魔』(河出書房新社)、『狂鬼降臨』(出版芸術社)、映画評論『世界ファンタスティック映画狂時代』(洋泉社)などがある。また、『人獣裁判』『凌辱の魔界』『髑髏町綺譚』(アドレナライズ)など、多数の作品が電子書籍化されている。現在、バリ島に在住で、トーキングヘッズ叢書(TH Seires)に映画エッセイ「バリは映画の宝島」を連載中。

「2017年 『蔵の中の鬼女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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