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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883221257

作品紹介・あらすじ

英語の「なぜ?」に応える入門・やりなおし英語の決定版。

感想・レビュー・書評

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  •  1921年生まれで、元中学教師で当時は大学の先生(1998年没)という著者が、1975年に出したという本を2014年に改訂したもの。中学英文法を解説した参考書。著者が優しく語りかける、という形式であることが特徴的。
     瀧口優『「苦手」を「好き」に変える英語授業』の中で、素朴な生徒の疑問に答えてくれる本としておすすめされていたので、購入して読んでみた。確かに、前置詞と不定詞のtoはもともと同じものですよ、とか完了形のhaveは何かが成された状態を今も「持っている」ことですよ、とか、定評のある英文法の解説には必ず書かれてあるようなことが、きちんと書いてある。ing形について、「実は大昔、動名詞の語尾(-ung(e), -ing(e))と分詞の語尾(-ende, -inde)はちがう形をしていました。ところが、やがて後者の-indeが-inneに変化し、それが動名詞の語尾-ingと混同されるようになりました。語形が混同されるなか、意味・用法の混同も生まれ始めるのです。」(p.258)という部分など、安易な文法書とは違う感じがして、良かった。
     文法用語も丁寧に解説してあって、おれ自身は「母音」、「子音」が「お母さんの音と、子どもの音」(p.32)という風には捉えたことがなかったので、目からウロコだった。お母さんの音は自分一人で出せる音だけど、子どもはお母さんと一緒じゃないと音が出せません、というあたりなんかは、「音節」とかを考える上で腑に落ちる説明になるのではないかと思う。関係代名詞の「継続用法」は、恥ずかしいけど、正直なんで「継続用法」って言うのかこれまで分からなかった。「限定用法」、「制限用法」というのは分かるけど、前から順番に起こり、関係詞節内の出来事は主節の後に続いて起こった=継続して起こったことだから、「継続用法」というんだ、ということに、恥ずかしいけどこれまで気付かなかった。さらに、「説明の分かりやすさ」という点では、例えば品詞を考えるのは、「文の中で一つひとつの単語がどんな役目を受けもってその文を組み立てているのかを」(p.235)知り、それは「ちょうど社会の中でどの人がどんな仕事をして社会を成り立たせているか、ということを『職業』といっているように、いわば単語を『職業別』に分けて考えるわけです。単語の職業別は、文法上のことばで『品詞』といいます。」(p.236)の部分など、分かりやすいたとえを持ってくるのは、この本の大きな特徴と言える。(個人的には品詞と主語・目的語のような機能をどう区別して教えるか、というのをずっと悩んでいるけど。)ただ、p.340の関係詞節の「comet型」と「sandwich型」というのは、あんまり聞いたことなかった。
     これだけ良い所はたくさんあるのだけれども、本当に中学生にこの本を勧めるかと言われたら、あまり乗り気はしない。そもそも英語が嫌い、勉強が嫌いな子は、これだけの解説を読む粘り強さがないと思うし、「古き良き時代」の生徒向け、という感じで、こんな分厚い本を勧めることは、今時の子には難しいのではないかと思う。改訂版編集委員の顔ぶれがみんなほとんど現場の中高教員を引退した人たちである、という時点で、おじいちゃん世代のノスタルジックな英文法、という感じがする。編集委員代表である奥西正史という人には『考える英語教師』という著書があるが、雰囲気が似ているなあと思った。多少クセがあって(クセとはこの本の場合、もはや当時の時代背景に起因するもの)、ノスタルジックな英語の授業を再現、といった感じがとてもよく似ていた。「クセ」については、林野茂樹というこの本の先生の著書は他に読んだことがないが、『英語科における平和教育』という著作もあるくらいで、なんというか例文(英詩も多いが)に戦争はダメ、原爆は酷い、のようなものがたくさんある。さらに父親は朝早くから漁に出ます、工場で汗水垂らして労働します、労働によって社会が成り立っています、母親もお金を稼ぐために働きます、のような例文も多く、世相が反映されているものも多くて、そういう部分を「楽しむ」こともできるが、やっぱり今の中学生が読むと、余計に距離が開きそうな気がするのだけれど、どうなんだろうか。(15/10/11)

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