ここらで広告コピーの本当の話をします。

著者 :
  • 宣伝会議
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883353163

作品紹介・あらすじ

コピーライターの半分は、コピーを書くことの報酬を手間賃のように考えている。誰かから指示されたとおりに作業して、「これでいいですか?じゃあ作業料ください」と。あとの半分は、コピーの報酬を旦那衆からのご褒美と考えている。「おれには書きたいことがある!それが気に入ったらお駄賃ください」と。コピー1本で100万円請求するための教科書。

感想・レビュー・書評

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  • もうすでに話題になっていますが、遅ればせながら
    小霜さんの新書
    『ここらで広告コピーの本当の話をします。』
    読ませていただきました。

    コピーの本ってめちゃくちゃたくさんあると思うんですが、
    それらとこの本が決定的に違うのは、コピー開発のための

    “表現的手法”

    ではなく、もっと本質的な

    “戦略的手法”

    を教えてくれているところです。

    あえて逆を組み合わせる、時間軸を操作してみる・・・
    など、今までのコピー本は言葉としての強さを高めるための、
    ”表現”によったものが多すぎた。

    この本を読むと、
    「広告コピーってビジネスなんだ。」
    ということがものすごく腹落ちします。

    競合の状況は?この時代に商品が訴求できるUSPは?
    マーケティング思考で考え尽くした小霜さんのコピーには、
    そういったビジネス的戦略が凝縮されています。
    ご自身のたくさんのコピーと、その案件の売り上げも
    事例として紹介してくれているので、
    ビジネスでコピーを書くってどういうことなのか、実感できる。

    確かに帯にあるとおり、コピーで100万も夢じゃない。
    コピーって、稼ぐ言葉なんだ。そう思いました。

    コピーライターを目指す人というよりは、
    すでに広告業界で働いている人たち向けの実践書。

    お給料もらってんだから、ふんわりコピーなんて書いてられない。
    ちゃんと、役立つ、稼げるコピー書かないとなあ、
    って驚異的ないいね数をたたき出している小霜さんのコラム
    (新人が出すべきコピーの数は50案http://www.advertimes.com/20141121/article175167/
    もあわせて読みつつ背筋が伸びました。

  • 広告に囲まれた生活の中だからこそ、質の高い、
    ターゲットの心を動かすより広告の重要性を実感した一冊。
    コピー作りの知識と考え方、実例を基礎から学べます。

    -------------

    以下【備忘録】※ネタバレ

    広告クリエイティブの役割は
    「モノとヒトとの新しい関係を創ること」

    広告コピーは下記2つが揃わないと書けない
    ・商品としての具体的な情報、競合との違いUSP
    ・その商品を買ってくれそうなターゲット

    商品の広告コピーは存在するが、カテゴリーの広告コピーな存在しない。ただし圧倒的シェアNo.1の企業にとってはカテゴリー=商品となる。

    キャッチフレーズを考えるときの一つの手段
    ・その商品がない状態での不満、不安
    ・その商品を入手した状態のうれしさ、気持ちよさ
    どちらかをMAXで描いてみる。

    キャッチフレーズはタグラインに関心を持たせるために興味を引くためのコピーであること。

    書いたあとにチェック!
    ・そのコピーがモノとヒトとの関係を創造しているか、あるいは改善しているか
    ・その役割を達成するための、言葉としての力があるか
    ターゲットの心に刺さったり揺さぶったりする表現になっているか

    コピーライターとして仕事が上手くいかないとき
    ・「カテゴリーコピー」を「商品コピー」と誤解しているのかも
    ・飾り言葉を広告コピーと思い込んでいるのかも
    ・広告と報告この違いがわかってないのかも
     →報告は既に認知されているものに対して使える。隅田川の花火大会などはコピーよりも日時を一番に伝えるほうが有効的。PS4の発売日カウントダウンなど。

    コピーを書くときはターゲットになりきって書く。

    -------------

    ▼用語
    USP=競合優位性 ただの特徴ではなく競合商品ありきの優位性 大きな価値をもつところ

    コモディティ化=一般化 競合商品との品質において差がなくなること

    ハイコンテクスト=コミュニケーション・意思疎通をはかるときに前提となる言語、体験、価値観、考え方などが非常に近い状態であること

    タグライン=商品の価値が最大化されるような定義付けに特化したコピー 「わかる」ことが何より重要

    デファクトスタンダード= 公的に承認された標準ではなく、市場の実勢や評価により標準として広く普及している規格や製品 市場競争の結果グローバルスタンダードが成立していること 逆に、標準化機関などによって定められた規格をデジュリスタンダードという。

    ブランドとは=気持ちいい記憶。美味しい、便利などの生理的欲求だけでなく、新しい自分になれるという気持ちよさもある

    ブランドロゴ=その商品の気持ちいい記憶を蘇らせるトリガー

    ブランドの強さを計る3つの指標
    ・気持ちいい体験の蓄積度
    ・その人がそのとき感じている課題との関係の深さ
    ・ブランドロゴを目にする頻度

    人間の行動について=情動がアクセル、理性がハンドルやブレーキ。ブランドは情動にアプローチするものである。心が動くのがブランド

  • 2014年11月刊。コピーライター向けの教科書。この提案のやり方は他の仕事でも使えそう。

    【引用メモ】
    プレゼンでは基本的に2案を提案します。「ご依頼に忠実に考えると、この案になります。でも、もしかしてこういうのもあるのではと……」といったように出すわけです。(中略)A案を出す意味は、「ちゃんと意向を理解していますよ」という確認でもあり、発注元は安心します。その上でB案を出すと、「これあるかも」とスムーズに決まりやすいのです。(p.217)

    「2案発想」:「信じる」と「疑う」を同時にやること。(p.236)

  • コピーライターの本当の仕事や、クリエイティブ業界について知れた。文章も面白くてどんどん読めた。

  • コピーライティングだけではなくブランディングの話まで。
    PRに近い考え方もある。
    刺激を受けた。

  • 「僕の主宰している広告学校第7期の第1回講義で、受講生たちの前に水が入ったグラスを置きました。
    「この水のコピーを書いて。5分ぐらいで」。
    受講生たちは一斉にメモ帳やスケッチブックを取り出して、ペンを片手に書き始めました。
    (…アウト)
    僕は心の中でつぶやきました。」

    この本の書き出しです。
    この本をチラッと読んだ、娘が
    「この書き出しはちょっとねー。読む気が失せた。」
    と言っていた。
    その感想には同意。
    ちょっとどうかと思う。
    まぁ必要なつかみかもしれないけど。

    が、そこを乗り越えて内容を見ると、分かりやすい講義を受けているようで、すらすら読める。
    この本を持っていれば、そこらの大学でなら、広告論の授業もできそうな気が。
    読んで分かった気にさせるのが上手いのも、流石コピーライターの仕事。
    という感じはある。
    本当に分かったかどうか、コピー書けるかどうか、は別にして。

    ところで。
    この小霜和也さん。
    50代で亡くなっているんですね。
    知人から「亡くなったことがショック」と聞いて、初めて知って、この本を読み始めました。
    昨年は岡康道さんも亡くなりました。
    広告界で著名なスターが比較的早く亡くなっていくこと。
    想像にすぎませんが、あの業界で活躍することは、体も酷使することが必要条件になるのかな、と思いました。
    太く短く、輝く、ということなんでしょうか。

  • 素人からすると(鼻で笑われるか怒られるに違いないが)、コピーライターとはたまたまひらめいた奇抜なフレーズを後付けで正当化する仕事だと思っていた。しかし『たまたまひらめいた』かのように見えるコピーはそこに至るまでに、製品理解は大前提として、USP(競合優位性)、ターゲット、インサイト、企業や社会の方向性、製品と人の関係性、ココロ揺さぶる表現を考える必要がある。

    当たり前だがコピーを作るには型、ロジックがあり、その上で、考え抜いて絞り出す真剣勝負の過程があるのだと。

    自分の案を出す=勝負するということ、CDの喉元にナイフを突きつけるように出すべき、そしてダメと言われたら激しく凹むべき、という表現が響いた。

    『コピー1本100万円』というのは、クライアントはじめそのモノに関わる人たちを最大限喜ばせるために考えて考えて考え抜いた結果(考えることは苦しいしできるなら避けたい)の報酬であるため、この本を読んだあとは特に高額だと感じなくなった。

    考えることってすげーつらいよね。

  • 広告コピーについて全然知らないから、基本的なことを知りたいとときに手に取るのに適した本だと思います。

    小手先なコピーライティングの話ではなく、広告、コピーがこの世界で、今の社会でどうなのか著者の幅広い知識とともに書かれていて「へぇ〜」と何度も感心。

    コピーってそんな文字数多くないのにどんな価値が?
    何故いいと思うのか?広告ってどう評価するのか?受け止めるのか?
    いい!と思う広告があっても曖昧にしかわかっていなかった自分にとっては、広告が人にもたらす感情のスイッチだったり記憶を呼び覚ましたりという話は興味深かったです。
    脳科学の観点から見ても納得することが書かれていたり、ただ良い言葉/響きだからよく感じるのではなくどう人に影響してるのかまで著者がたどり着いて考えらていることに素晴らしい人なんだなと改めて思わされました。

    また、この本は人によってはエポックメイキングのような存在になるのではと思うほど広告の肝が凝縮されていた気がします。

    かっこつけることなく、時に泥臭く真面目に真剣に手を抜かず気を抜かず取り組む姿勢に刺激を受けました。
    ビジネス書としても良いかもしれません。

    これ一冊を読んで、全て頭に入ってコピーも広告も理解できるなんてうまい話はありえないですがここをきっかけにコピーや広告の理解を深められたらと思います。

  • コピーライター/クリエイティブディレクターは、
    商品をいじらずに言葉を使って商品の価値を上げる人

    広告の役割
    モノとヒトとの新しい関係を創ること

    「言葉を使ってモノとヒトとの新しい関係を創り、
    商品や企業の価値を上げる」のが
    広告コピーによる広告クリエイティブ

    「この水のコピーを書いて。5分くらいで」
    →すぐに書き始めるのはNG
     コピーを書く時の最も大切なことがわかっていない
    →大喜利コピーと呼ばれる

    ”商品”の広告コピーは成立するが、
    ”カテゴリ”の広告コピーは成立しない
    →商品の具体的な情報、競合との違いがわからない状態では広告コピーはかけない

    ①USP 競合優位性
    └コモディティ化
     差別化がしにくい世の中になっている
     企業理念や社会貢献への共感を押し出す風潮
    └日本はハイコンテクスト文化
     コミュニケーションの基礎となる価値観が似ているため、違いを出しやすい
     例)シャンプーの種類の多さ

    ②ターゲット

    広告コピーとは、価値が最大化するように商品を定義づけするもの
    その定義づけに特化したものを「タグライン」

    Reebok 派手な色のウェア
    派手な色
    =アドレナリンの分泌を促し、集中力UP
    「色彩の科学。アドレナリン・デザイン」

    キャッチフレーズ
    =ターゲットの関心をキャッチすること

    タグライン
    =言葉を使ってモノとヒトとの新しい関係を創り、商品や企業の価値を上げるという広告コピーの最も重要な役割を担うもの

    タグラインは「わかる」というのが大事

    広告コピーは2つの視点で評価される
    ①モノとヒトの関係を創造・改善しているか
    ②役割を達成するための言葉として力があるか
     ターゲットの心に刺さったり、揺さぶったりする表現になっているか

    広告と報告
    すでにモノとヒトの関係ができている場合
    役割を果たす「報告」になっていればよい
    →自分の仕事がどちらになるかを事前に見極める

    コピーが担ってきた役割をビジュアルが担うようになってきている
    「自分の感情の微妙な差異」を表現するには言葉だけでは追い付かなくなっている

    コミュニケーションが非言語になってきている

    言葉の起源はジェスチャー
    言葉はもともと「約束」するために使われるもの
    一方、ビジュアルにはもともとウソが含まれる
    (人によって捉え方も変わる)

    『ウルフ・オブ・ギャングストリート』
    「このペンをおれに売ってくれ」
    →ただの言葉では響かない
     ペンを取り上げて「何か書いてくれ」と頼む

    その商品が必要となる
    =ターゲットが価値を感じる状況を言葉で創り出す

    「わが家は、南アルプスです」
    ウォーターサーバー=生活環境
    変えることは、生活を変えることにつながる

    「人って何だろう」
    女のヒモという職業

    人はしてもらった人よりも、
    自分がしてあげた人のことを好きになりやすい

    プレゼントするよりも何か頼みごとをした方がいい
    「なんであの人のためにこんなことしてるんだろう」という疑問を「好きだからかもしれない」と整合化する

    進化心理学

    マーケティングとは、
    押し売りの制反対を目指す企業活動のこと
    =営業や販促活動、広告活動をしなくとも商品が勝手に売れていく状況

    マーケティングは、本来「学問」である

    「コピーを実際に書く」のは全体の1割
    その手前のマーケティング的作業「考える」が9割
    競合を調べ、商品のUSPを見極め、ターゲットを決め、彼らの欲求や不満・不安に想いを馳せる。
    こういったことが「コピーを書く」ということ

    商品広告の依頼があったらまずやることは、
    競合を調べること

    商品の特徴ではなく、USP

    比較するべきは、シェア1位の商品・その時勢いのある製品などが基本である
    └商品の強み、なぜ支持されているのか?どういった機能があるのか?不満点はないのか?

    ただの「特徴」とUSPを混合しないこと
    あくまで「競合に対しての」優位性のこと

    大事なことは、敵を誰と考えるか?
    →単純な同ジャンルの競合でなくてもよい

    ターゲットインサイト
    =ターゲットが秘めている欲求や不満、不安、本音

    人間によって生存する究極の目的は
    「子孫を繁栄させること」
    「自分の遺伝子を濃く持っている個体」

    ターゲットインサイトは創るものではなく、見つけるもの

    タグラインが先で、キャッチフレーズが後

    キャッチフレーズに関して
    アメリカの往年のコピーライター
    ジョン・ケーブルスは重要な要素を4つ挙げている
    1、ターゲットの利益
    2、新しさ
    3、好奇心
    4、シンプル&スピーディー
    →まとめると
    「自分に関係あるかも」と一瞬で感じてもらうこと

    キャッチフレーズは「共感」を生み出す
    なかったときの不満・不安
    手に入れたときのうれしさ・喜び

    ブランドとは、「気持ちいい記憶」

    目隠しした状態で飲むとペプシが美味しい
    目を開けた状態だとコーラが美味しい
    と感じた実験
    人の嗜好は、記憶に左右される

    ブランドとは、ラベルを見ることでターゲットの中に気持ちいい記憶を蘇らせる作用のこと

    一般的なブランドは、憧れブランド

    CMとは、商品の疑似体験をさせるもの

    ブランドスイッチは、USPによって引きおこる

    アメリカの広告史で有名なコピー
    「私がピアノの前に座ると、みんな笑った。でも、弾きはじめるとみんな黙った」
    →商品を使用することによって期待されるストーリーにお金を払っている
    →「こんなあなたになれる」という自己実現欲求

    「ブランド」は、その人の中にあるもの
    「憧れブランド」は、その人の外にあるもの

    ブランドストーリー=苦労話
    商品にとってはストーリーが大きな支えとなる

    AKBは未完成な彼女たちが苦労する、完成までのプロセスを価値にして商品化している
    「誰かの素晴らしい苦労話を自分の人生に取りこみたいというインサイト」

    貨幣とは「人間活動が結晶化したもの」
    貨幣経済活動とは「誰かの人生の一部と誰かの人生の一部とを交換する行為」

    広告で一番大事なのは、店頭
    サッカーで例えるならフォワード

    まずは担当商品のファンになる

    信じると疑うを同時にやる
    2案発想
    ①要望通りの企画
    ②自分ならではアイデア

    CI(コーポレートアイデンティティ)
    =企業がその先も生き残っていくために必要な事業コンセプト・活動領域・自分は何者であるべきかなどを再点検していく作業のこと

    言葉の役割は2つ
    ①コミュニケーション
    ②思考の補助

    人以外の動物は「夢」を考えることができない
    言葉のメタファーを利用することで存在しない抽象をも考えることができる

    逆にいうと、人は言葉を超える思考ができません。
    思考は言葉に縛られますが、自由に言葉を使いこなせれば思考は広がり、人の行動も変えていきます。

    言葉が人の行動を決める

    「未来」を考えることができるのも言葉を持った人間だけである

    コピーライターというのは、人助け業でもある

  • 私はデザイナーですが、一緒に働いているコピーライターの仕事を奪ってしまおうと思い、その取っ掛かりとしてこの本を読みました。共に働いているとその人の仕事がなんだか安直で、しっかり考え抜かれたものだとは思えないことが良くあります。コピーライターの仕事って実は簡単なんじゃないかと。
    この本を読む事で、世の中に溢れるコピーは、考え抜かれ計算し尽くされた結果であり、だからこそ言葉の力を発揮できていると理解しました。

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