「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方 (宣伝会議)
- 宣伝会議 (2017年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784883354207
作品紹介・あらすじ
あらゆるモノ・サービスに「だいたい、良いんじゃないですか?」と充たされてしまっている消費者。そこには、もはやニーズは存在しない。あるのは、本人すら気づいていない隠れた欲求だけだ。ヒットを生み出したければ、ニーズを追いかけるのではなく、インサイトを見つけよう。その方法が、この1冊には詰まっている。さあ、イノベーションを生み出すアイデア開発の武器を手に入れよう。
感想・レビュー・書評
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インサイトは顧客を動かす隠れた心理。
インサイトの発見は直接聞くのではなく、人間を見に行くことで行う。→確かに、アンケートに回答するとき、はっきり意識はせずに相手の期待に沿うような回答をしていたことがあった。
インサイトを利用したアイデア創出は、決して簡単ではないが、人間味がありかつ破壊的イノベーションに繋がる非常に面白いものだと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第1章 人の”欲しい”は隠れている
■まとめ
・インサイトは「人を動かす隠れた心理」。人の隠れた欲求を充たすことでその人に変化を与える、無意識の領域にある心理を指す。
・インサイトが求められるのは、市場が成熟化して「だいたい、良いんじゃない ですか?時代」になったから。わかりやすい問題が多くそれを解決していれば良かった「だいたい、良くない時代」が終わり、あらゆるモノやサービスが「欲しい」という気持ちを充たしてくれそうと感じられなくなって、状況を打開する手立てが必要になった。
・インサイトは、競合他社も知らない隠れた心理だから、競争優位を実現する『アイデアの素」になる。一方、ニーズは消費者自身が明確に認識できている欲求だから、それを捉えても競争優位を実現するアイデアは生まれない。
第2章 ”人を動かす隠れた心理=インサイト”の構造を理解する
■インサイト4要素
・要素1[シーン(場面)]感情が生まれた場面。行動や状態を伴う
・要素2[ドライバー(源泉要因)]感情を生み出すもととなった、直接的な要因
・要素3[エモーション(感情)]気分や気持ち、情緒
・要素4[バックグラウンド(背景要因)]感情が価値(または、不満や未充足)である背景的な理由
(例)キットカット
・勉強と勉強の合間に一息入れるとき
・キットカットをパキッと折る
・心がふっと軽くなり、ストレスから解放される
・ストレスだらけの毎日 3大悩みは受験、恋愛、友人関係
■インサイトの3分類
・価値 ポジティブな心理
・不満 ネガティブな心理
・未充足欲求 求められているがまだ充たされていない心理
■まとめ
・インサイトを元にした「隠れた不満や欲求のエッセンス」がキーインサイト。そのキーインサイトを充たす「価値提案」がバリュープロポジション。その提案された「価値を体験させる具体策」がアイデア。
・インサイトは、「客観的な事実に基づく感情」でなければならない。単なる感情だけでは的外れのアイデアを生む可能性が高まるので、インサイトと呼んではいけない。
・インサイトは「シーン (場面)」「ドライバー(源泉要因)」「エモーション(感情)」「バックグラウンド(背景要因)」の4つの要素で構成される。エモーション(感情以外の要素は客観的事実が含まれるのが条件。
・インサイトは、「価値」「不満」「未充足欲求」の3種類に必ず分類できる。単なる「イメージ」など、人を動かさない心理はインサイトではない。
・人間の欲望には、醜さ・邪悪さといった「裏」の欲望であるデビルインサイトと、善・正しさの「表」の欲望であるエンジェルインサイトがある。デビルインサイトは人を動かす力が強いが見えにくく、無視するときれいごとで一面的な人間の理解に終わってしまう。
第3章 ユーザーや競合ではなく”人間を見に行く”
■生活の14分類
生活に関連するカテゴリーを 14に分類したもの
1 美容・ファッション スキンケア、ヘアメイク、メーキャップ、おしゃれ・身だしなみ、など
2 健康・ヘルスケア・医療 健康管理、フィットネス、ヨガ、トレーニング、マッサージ、など
3 遊び・エンターテイメント 余暇、趣味、スポーツ、音楽、ショッピング、旅行・観光、季節行事、など
4 買い物・買い方 ショッピング(店舗、オンライン、通販、直売など)、オークション、フリマ、など
5 仕事・働き方 ワークスタイル、スキルアップ、キャリアアップ、就職・転職、など
6 IT・メディア・コンテンツ デジタルライフ、テクノロジー、スマートフォン、SNS、ゲーム、家電、など
7 家事・家族ケア 洗濯、掃除、片付け、 家計管理、 子育て、介護、 ペットの世話、など
8 恋愛・友人関係 コミュニケーション、部活・サークル活動、 コミュニティ交流、など
9 食べること・飲むこと 食事、自炊、間食、外食、喫茶、カフェ、飲茶、バー、飲酒、 など
10 学び・教育 勉強、 習い事、資格取得、受験、留学、研究、生涯学習、など
11 住まい・住まい方 インテリア、家具・家財、ガーデニング、リフォーム、引越、移住、など
12 マネー・ライフプラン 金融・保険、将来設計、資産運用、貯蓄、保険、節税、など
13 モビリティ 車・鉄道などの移動、通勤・通学、お出かけ、など
14 社会活動 エコ活動、地域活動、ボランティア活動、文化活動、NPO活動、など
■まとめ
・「人間を見に行く」ことから始めれば、ブランドや競合にとらわれないイノベーションを生み出せる。
・ある商品が売れていない理由を知りたい時、「買わない理由」を消費者に直接聞くのではなく、「その人の興味や関心ごと」の価値を聞き、その価値と比較することで「買わない理由」を明らかにすることができる。
・「新奇事象」は普通の人が行っているちょっと変わった事象。ここから消費者が求めていることの「芽」を理解できるので、新しいアイデアを見出したり、 新たな市場の機会を発見したりすることができる。
・「人間を見に行く」ということは、人間の興味や関心に寄り添うこと。人間を見に行くには、テーマ設定の3つの観点「VIL」や、生活に関連するカテゴリーを分類した「生活の14分類」といった道しるべを活用する。「VIL」の3つの観点とは、価値やポジショニングから考える「Value」、問題や狙いたいことから見る「Issue」カテゴリーの概念を抽象化する「Layer」。
第4章 成熟市場におけるビジネス機会の見つけ方
■まとめ
・「オポチュニティ」は、自社のビジネスで解決できそうな、消費者が潜在的に 感じている問題のこと。これを発見することがプロジェクトの起点になる。この問題を解決する手がかりを得るために、リサーチでインサイトを明らかにす る。
・オポチュニティを発見するには、新奇事象を活用するセッションである「スペースファインダー」や、ネット上に蓄積された行動履歴などの膨大な情報を解析する「Webアクチュアルデータ分析」といったメソッドを用いる。
・発見したオポチュニティは玉石混淆の状態。その中から価値のあるものを選ぶには、「玉度」という指標を用いる。魅力度と未充足度というふたつの評価軸で判断する。
第5章 インサイトを発掘する方法
■インサイトを読み解く7つのポイント
①「離せ、戻せ」で考える
②良いアイデアにつながるかどうかを意識する
③生の素材から感じる違和感を大切にする
④正しい、ではなく、面白い
⑤「既存路線」ではない「新路線」に着目する
⑥「組み合わせの妙」を見つける
⑦隠していること、言えないことを意識する
■まとめ
・インサイトリサーチの手法は、心理学に基づく感情(エモーション)からのアプローチと、文化人類学系のエスノグラフィに基づく事実(ファクト)からのアプローチに二分される。前者には写真を用いて無意識にアプローチする「ビジュアル刺激法」や不完全な文章を提示してその穴埋めをさせる「文章完成法」などがあり、後者には「行動観察」「ソーシャルリスニング」「コミュニティリ サーチ(MROC)」などがある。
・インサイトを読み解く際には、以下の7点に留意する。「離せ、戻せ」で考える。②「良いアイデア」につながるかどうかを意識する、③生の素材から感じる「違和感」を大切にする、 ④「正しい」ではなく「面白い」を重視する、「既存路線」でない「新路線」に着目する、⑥「組み合わせの妙」を見つける、⑦隠していること、言えないことを意識する。
第6章 既成概念を壊してアイデアを手に入れる
■ひとこと化の3視点
ひとこと化12の法則
視点1 絞る
①行動フォーカス 見方を変えることで、常識になかった行動に新しい価値を見出す
②理想プレゼン 具体的な数字やイメージによって、理想をはっきりさせる
③たとえて見立てて 言いたいことを、別の言葉にたとえる、別のものに見立てる
視点2 ズラす
④タイム&ロケーションシフト 時間や場所との新たな結びつきを提案する
⑤ズラす新鮮 視点をズラす意外な組み合わせを作る
⑥新種族発見 新たな行動をしている生活者に名前をつける
⑦他から拝借 自分の外の領域にある価値を移植する
⑧愛されネガ ネガティブなものから共通点を抽出する
⑨言葉遊戯 言葉遊びで笑いや親しみを生み出す
視点3 喚起する
⑩お手軽お気楽 精神的なハードルを下げて行動を促す
⑪正義の味方 広く感じられている不満や課題を提起し共感を得る
⑫五感表現 擬音語など感覚に訴える表現を用いる
■まとめ
・インサイトから既成概念を壊すアイデアを考えるには、キーインサイト・バリュープロポジション・アイデアのフレームワークを用いる。消費者側の心理であるキーインサイトと、企業など送り手側からの価値提案であるバリュープロポジションは、お互いが「充たし充たされ」の関係になる。その価値提案を、アイデアとして体験できる具体策にする。
・ワークショップでは、「視点を絞る」「視点をズラす」「行動を喚起する」の3視点からアイデアを13文字以内の体言止めで表現する「ひとこと化」、インサイトをマンガで表現し共有しやすくする「インサイトマンガ」、社内外の技術をカード化しアイデアの実現可能性をコントロールする「技術カード」といっ たメソッドを活用する。
・ワークショップで作ったアイデアとキーインサイトは、Webリサーチによる定量調査で検証する。
第7章 インサイトを活用した業務プロセスの構築
■まとめ
・インサイトを用いた業務プロセスは、
①オポチュニティ発見、②インサイトリサーチ、③アイデア開発、④プロトタイピング、⑤ローンチ、⑥トラッキング、の順に進む。
トラッキングの結果を踏まえて再度②インサイトリサーチに戻り、改善点を見出して再度アイデア開発を行うサイクルに戻る。
・インサイトを業務プロセスに導入する際には、次の4点に留意する。
①確立されたインサイト探索の仕組み
②場当たり的でない標準化された業務プロセスの運用
③データサイエンスへの精通と統計的に正しい定量調査の実施
④海外リサーチの体制の構築 -
①顕在的な価値と潜在的な価値は異なる
例えば、マクドナルドが女性に「どんな商品が欲しいですか」とアンケートを取ると「ヘルシーなメニュー」という回答が大半を占める。だが、これに応じて例えば野菜を増やしたメニューを作っても女性の購買数は増えない。むしろこれまで通り、女性であっても期間限定の照り焼き、月見といったバーガーの購買が軸となる。
女性であっても、マクドナルドへ「はガッツいて食への欲望を解放する場所であって欲しい」という潜在的なニーズがあるのである。
このように、顕在的な価値、人が口で言う「○○が欲しい」と潜在的な価値、心の内側でマクドナルドに求める欲しい、は異なる。
愚直にアンケートで出た結果に応じるべきではないし、アンケートも潜在的なニーズを引き出すための工夫が必要なのである。
②潜在的なニーズは一個人の感じる不満と価値(Value)の差にある。
幼児教育のテキスト販売をするA社はテキストの売り上げに悩んでいた。広告用のチラシでは、成績UPのデータや親と子供が笑顔で机に向き合う写真を多用していたが効果はなかった。なぜか。
実は、保護者が潜在的に育児に求める価値(Value)は公園で子供が遊んでいる姿を見ている時、あるいは緑の多い公園で子どもと一緒にアウトドアを体験している時に「親になってよかった」と感じる。開放感こそが保護者の子育てに対するバリューなのである。
この潜在的な価値に対して、狭い空間で親子で机に向かう写真は逆効果。
これを踏まえて、A社では使う写真や言葉選びのコンセプトを「開放感と自由」に一新。チラシなどで活用する写真も可能な限り親子が楽しそうにしている、空間も意識させない写真に変更することで、改良を実現した。
潜在的な価値は不満、今回でいう子育てへの閉塞感や密閉感と価値、開放感や自由な雰囲気の差に隠れている。
③価値(Value)には大きく8種類×2=16種類に分類できる
とはいえ闇雲に価値(Value)を探すことは困難。大きく8種類×2=16種類に分けられる「人の欲望」から探すことが効率的。大きくは8種類あるが、その欲が行き過ぎてしまう8種類も人にはどこかで求めてしまう欲がある。
①「放」⇔「脱」
開放感を求めるが、時に行き過ぎて逸脱したくなるという欲望。
②「密」⇔「卑」
人と親密になりたい欲は、行きすぎると迎合し卑屈になる。
③「律」⇔「制」
秩序を保とうとするが、いきすぎると支配欲がでてくる。
④「安」⇔「固」
安定、平和を求めるが、それがいきすぎるとその安寧に固執してしまう。
⑤「緩」⇔「堕」
休息は終わりを決めないと堕落へつながる。
⑥「無」⇔「逃」
無心、没入したいという欲は、行きすぎると逃避につながる。
⑦「達」⇔「利」
何かを達成したいという欲は、過剰になると強欲になり嫉妬につながる。
⑧「楽」⇔「暴」
快楽や高揚を求め続けると、色欲や暴発につながる。
このように人の「欲しい」に応えるためには安易にアンケート結果や口で言う「欲しい」に惑わされるのではなく、価値(Value)=「潜在的な欲望」に焦点を当てていく工夫が必要となる。 -
なんかインサイトの図みたいなのがめっちゃわかりやすくて参考になた!
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事例がわかりやすい
マクドナルド、スマートフォン、車、akb48、でぃずにー
インサイトは3つのタイプに分類できる
価値、不満、未充足欲求
人の表面だけでなく、本音、言いにくい裏側の気持ちが大事(見栄を張りたい、人の上に立ちたい)
インサイトを見つけるにはまず人を見に行くこと -
ぼちぼち読みやすい
4要素、3分類
シーン、ドライバー、エモーション、バックグラウンド
価値、不満、未充足感 -
アイデアがなかなか出てこない、頭を柔らかくしたい人には良い本だと思う。普段から仕事で抽象化と具体化の行き来やゼロイチベースの企画ばかりをしている身からすると、既に知っていることが多かった。
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「ほしいの」の本質 insight
人を動かす隠れた心理=インサイト
マクドナルドの失敗:ヘルシーというアンケートを基に作った「サラダマック」だ大失敗 実はジャンキーさを求めていた
自分の意識に基づいているのは5%、95%は無意識
答えを持っていないのになぜその行動をとったか聞かれると、後付けをして答えを取り繕う
インサイト=潜在かしている
ニーズ:顕在化している
デザイン思考が注目される 「人間そのもの」を起点にして発想する
人間が求めているものは何かを見いだす
人間を見に行く:消費者に意見を聞いてはいけない、ターゲットの興味や関心に寄り添うこと
☆キーインサイトを探す
キーインサイト:会えないアイドルへのあこがれ
バリュープロポジション:会いに行けるアイドル
アイデア:AKB48
他にも、大人が夢中になれる遊園地 ディズニーランド
受験生を応援するキットカット
インサイトの4要素
・ドライバー 源泉要因
┗キットカットをぱきっとおる
・シーン 場面
┗勉強の合間に一息入れるとき
・バックグラウンド 背景要因
┗心がふっと軽くなり、ストレスから解放される
・エモーション 感情
┗ストレスだらけの毎日
人間の裏の欲望に注目する
インサイトの3分類
価値、不満、未充足欲求
幼児教育の通信販売が売れない
・価値:アウトドアで楽しむ姿を見たい
・不満:閉ざされた環境で子供と二人きり、煮詰まった関係
→だから「買わない」 -
目的 インサイトの把握の仕方
感想 マクドナルドに求めるのはサラダではなく、ちょっと身体に悪いものを食べたいという欲求
自分の行動 自分のビジネスのニーズを把握する