リバーズエンド (Holly NOVELS)

著者 :
  • スコラマガジン(蒼竜社)
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883864133

感想・レビュー・書評

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  • 「リバーズエンド」⇒「プロローグ」⇒「キャッスルマンゴー」⇒「god bless you」という時系列。Cab創刊号で「リバーズエンド」と「プロローグ」は既読してましたが、圧巻は「god bless you」でした。

    小椋ムクセンセによるキャッスルマンゴーでは、万の視点で彼の人生と恋愛、そして心情が描かれていて、切々と胸に迫るものがありました。
    一方「リバーズエンド」は十亀の高校時代の話です。姉と弟と三人で爪に火を灯すような生活を送る十亀の姿が淡々と描かれています。彼が淡々としているんですよね。
    まだ高校生なのに、不幸や貧困や死別などあらゆることを経験して、何に対しても諦念している十亀の心の内を思うと胸が痛くなります。そういう青春を送ったことが、その後の十亀の人格形成に影響しているんだなと。
    十亀とは正反対に明るくて賑やかな同級生、二宮との交流が瑞々しくて印象的。ごくごく自然な歩み寄りと恋心が光ってました。救いになっていた彼も失ってしまったけど、彼の存在があったからこそ踏み出すことができたのだという気がします。

    「god bless you」が素晴らしかったです。人物像の描き方がうまいですよね。いいヤツ嫌なヤツ、デキる人ダメダメな人、十亀が仕事で出会う人々の描写が鮮明で目に浮かぶようでした。仕事に真摯に向き合い一生懸命なくせに、あっさり諦めるのも早い十亀。執着できないのは臆病だからです。本気になって大切にしても失ってしまう、ということを繰り返してきたせいなのだというのが、「リバーズエンド」を読むと納得できます。愛がないとか、情熱不足とか、そういうことじゃないんですよね。
    それが、恋愛面でも顕著に出てしまい、万を悩ませてしまうんです。
    でも、十亀のそんな人格も受け入れて、慈愛の気持ちすら生まれている万なのでこれから先も大丈夫、と思わせるところがいいですよね。

    興味深かったのは、映画製作のシーン。その中でも、もしかして十亀は木原センセの仕事に対する思いをところどころで代弁してるんじゃないか?と思わせるところ。
    十亀が過去やっていたAVの仕事を、いけ好かない助監督にこき下ろされる場面は読んでいてアツくなってしまいました。職業に貴賎なしですよ。
    木原センセの思いを、どことなく想起させるものがありましたね。面白かったです。

    万とのすれ違いは、ちゃんと互いが歩み寄ってもとのラブラブに収まって安堵。「仕方ないと諦めずに、好きならもっと執着して欲しい」と言われて目が覚める十亀です。子供みたいに甘えられる相手が出来てほんとに幸せそうで、よかったなと思えました。

    人生の真理とか人間性の美醜とか、人として生きることについていろいろ考えさせられました。

  • ムクさん漫画と木原さん小説のコラボ作品。漫画ではなかなかわからなかった十亀さんの過去と、それからの二人が書かれてます。
    期待通りの内容の濃さと、間にムクさんの漫画が挟んであって驚きつつ、とてもいい流れでした。
    リバーズエンド→プロローグ→キャッスルマンゴー①②→god bless youの順番かな。
    十亀さんが、無意識にしろ自分が幸せなのに気づいて涙を流す終盤がたまらなく好きです。その部分の挿絵の描きこみ具合にもたじろぎました、さすがムクさん!

  • 十亀の壮絶な過去話には涙が。。。とても良かった。

  • 表題作は、十亀の過去の話。 多感な時期に五感を鈍くして生きていた十亀姉弟を思うと、切なくて苦しい。 人生は不平等だとわかっていても、人には語りづらいであろう苦労話を「不運だったが不幸ではなかった」と言える強さが十亀にあって良かった。

    【god bless you】は、漫画【キャッスルマンゴー】後の2人が読める嬉しい書き下ろし。 漫画のレビューで十亀にさんざっぱら文句書いたけど、逆に万に連絡を無視される十亀の姿にほの暗い喜びを覚えた私は、きっとかなり性格悪い( ̄∀ ̄)

    BL小説としたらラブ要素は薄い一冊だけど、映画撮影の話は面白かったなぁ〜♪ 登場人物たちも個性的で良かった。
    願わくば、万は頑張って十亀を囲い込めますように…(笑)

  • 表題のリバーズエンドは切ない……切な過ぎる……

    30ページほどのところで涙が止まらなくなりました……

    十亀の過去がこんなにもつらく悲しいものだなんて思わなかった……


    「しあわせに、なれ」

    最後の十亀のこの一言がほんとにいいなあ……

    god bless youも素直になれない二人がもどかしくて切なくてキュンキュン!!

    これもムク先生のマンガと書き下ろしペーパーがよかった!!

    ほんとにこの作品大好き!!

  • キャッスルマンゴーが万の視点で描かれていたのと対称的にこちらは過去も未来も十亀の視点で書かれていました。リバーズエンドは小冊子で既読でした。
    また、予告編のショートコミックが収録されていて嬉しかったです♪
    書き下ろしの「god bless you」コミックのラストシーンから始まっています。
    結ばれてからも相変わらずのすれ違いぶりです。
    十亀の仕事は不定期で万との約束を反故にすることも度々あります。
    けれど、すれ違う根本はそんなことではありませんでした。
    知らず知らずのうちに人との距離を置く十亀・・・彼は、失うことを怖れ、失って自分が傷つかないように常に予防線をはっています。
    それは、仕事でも、恋人の万に対しても同じでした。
    映画の撮影ロケの中で話は進んでいきます。
    万は序盤と終盤にしか出てこないので、この本は、万ファンには物足りないかも知れません。
    最後、十亀が自分でも意識の奥に押し込めていた臆病な部分をこじ開けてその中に入ったのは万でした。
    十亀の涙とそれを包む万の腕・・・本当に良かった。
    読み終わってとても幸せです。

    こちらには小椋さんのショートコミックのペーパーがついていました。
    前髪をあげて、ちょっぴり大人っぽい万。
    自分を撮影する十亀に近づき笑ってビデオカメラを取り上げるあたり、もしかしたら十亀は尻に敷かれているのかも知れないな~と(笑)

  • Holly NOVELSとマーブルコミックスのコラボ企画。
    「キャッスルマンゴー(東京漫画社)」2巻のその後の書き下ろしあり。

  • 十亀の、相手のうちに踏み込めない理由が分かる一冊。始まりはどうであれ、一途に十亀を想う万の押しがあってこそのハッピーエンドではないだろうか。個人的な物足りなさを言うならば、もう少し床な絡みがあればな~と思ったり。その後の万によるキャッスルマンゴーの経営&十亀の映画監督への紆余曲折、起こりうる恋愛なすれ違いなど(飽くまも私的な妄想だが)、少し未来な二人の話をもう少し見てみたい。

  • リバーズエンドで十亀さんの過去何があったんだろうと気になっていたものが明らかになります。
    god bless youではキャッスルマンゴーの後の十亀さんと万のストーリーです。

    十亀さん視点なのとロケ現場が舞台なので前半あまり万出てきません
    しかし十亀さんの映画への姿勢や他の人からの信頼の厚さを感じます。


    万も十亀さんもなかなか口で伝えるのが苦手そうなのでゆっくり穏やかに進んでいくカップルな気がします

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著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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