彩雲の城 (Holly NOVELS)

著者 :
  • スコラマガジン(蒼竜社)
4.28
  • (17)
  • (16)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 182
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883864355

作品紹介・あらすじ

「碧のかたみ」「天球儀の海」に続くシリーズ第3弾。

―― 帰る故郷はない。でもペアがいる。

太平洋戦争中期。
婚約者に逃げられた谷藤十郎は、外聞から逃れるように志願したラバウル基地で
高速爆撃機・彗星と共に着任した優秀で美しい男・緒方伊魚とペアになる。
伊魚は他人を避け、ペアである藤十郎とも必要最低限しか話さない。
しかし、冷たいようで実は生真面目で優しい男を、藤十郎は嫌いになれなかった。
そんななか、不調続きの彗星は偵察機の転用を命じられるが――。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1945シリーズ3作目
    舞台はまたもやラバウルです。
    2作目と時期、場所とも同じ。
    内地で婚約者に逃げられ外聞の悪さから逃れるようにラバウルを志願した藤十郎。
    高速爆撃機・彗星と共に着任してきた偵察員の伊魚。
    前作の六郎とのペアを希望していた藤十郎は上からの命令で仕方なく伊魚とペアを組むことに。
    人を避け必要なことしか話さない伊魚に不満を持ちながらも何故か嫌いにはなれない藤十郎でした。
    人を寄せつけず時折激しい呼吸困難の発作を起こす伊魚を心配しながら機体不調の続く彗星での任務にあたるのですが…

    以下BLなんでスルーしてくださいm(_ _)m







    伊魚がとにかく不憫です。゚(゚´ω`゚)゚。
    実は上官の愛人だった伊魚はラバウルに捨てられたんですね…二度養子になっている伊魚は自分の居場所を切望し、寂しいと言葉にすることも出来ない不器用な男です。伊魚に生きる希望を与える為に必死になる藤十郎も素敵です!!


    人が寄りつかない航空機
    人を寄せつけない偵察員

    番外編の幸せな二人にホッとしました♪







    • おびのりさん
      もう装丁がそそる。
      もう装丁がそそる。
      2023/08/20
    • みんみんさん
      出版同時は新人さんだから、ちょっとこのくだりは邪魔かなぁって文章もあるんだけど…
      書きたいんですこの二人の命がけの愛!!
      って熱量が伝わるの...
      出版同時は新人さんだから、ちょっとこのくだりは邪魔かなぁって文章もあるんだけど…
      書きたいんですこの二人の命がけの愛!!
      って熱量が伝わるのよ〜
      2023/08/20
  • 2023/02/27-03/07

  • 1945シリーズの3作目
    前作「碧のかたみ」と同じ太平洋戦争中期のラバウル基地が舞台
    「碧のかたみ」の恒と六郎も作中のエピソードに何度かでてくる

    婚約者に逃げられた谷藤十郎は逃げるように志願したラバウル基地で高速爆撃機・彗星と共に着任して来た偵察員の緒方伊魚とペアになる
    前任偵察員の横暴さからペアになる伊魚ともペアになる事に最初は躊躇していた藤十郎だが、ペアとして伊魚にもっと近付きたいと渇望する様になるのだが、伊魚は他人を寄せ付けず、藤十郎とも距離をとり気持ちも表さない
    伊魚の頑なな態度は前任地での辛い過去が原因だが、その冷淡とも思える態度に心挫けそうになる藤十郎の心の葛藤がいつしか伊魚への劣情へと変化していく心情の変化がとても自然に描写されていて物語にどんどん引き込まれていく

    傷付き寂しさを抱えた伊魚は実は藤十郎にペアとして最初から望まれていない事を知っていて、いつかは捨てられるという恐れを常に持ちながらも、藤十郎の名前を呼ぶ練習をモールス信号で密かにしていた場面はいじらしく切ない

    すれ違いや喧嘩を繰り返しながらも伊魚の心根の優しさや生真面目さ思いやりを感じとっていた藤十郎が、伊魚と唯一無二のペアとして互いに心と身体を交わし合いながら認め信頼しあっていく姿がギリギリの戦況下で時に互いに笑いあい涙しながら描かれていく

    藤十郎の手彫りの仏像や伊魚の俳句のエピソードが、重苦しい戦地での空気を明るくしてくれる

    基地への空襲時に危険を省みず伊魚を探す藤十郎
    2人が逃げ込んだ洞窟で互いに激しく求め愛し合う場面は、最期の時まで決して離れないと思いあう2人の強い気持ちが刹那的でとても美しい印象的なシーンだ

    物語の最後に伊魚がやっと求めて得た家には藤十郎が居て「伊魚」「お帰り」と言ってくれる藤十郎が居る
    2人はきっとどちらかが先に旅立ったとしても靖国神社のあの場所で互いを待ち続けているんだろうな






  • 小説として面白かった!
    しかし攻め受けそれぞれ元カノ元カレからよりを戻そう的な要求が来てて、そんなことってある……?笑 とちょっと思いました。

  • それぞれ帰る場所をなくしラバウルへとやって来た藤十郎と伊魚。彗星の搭乗員としてペアになる2人だが、伊魚は藤十郎との接触を避けるような振る舞いをして…。
    心を閉ざした受けが攻めの包容力によって心を開いていく話は大好きなので、伊魚が不器用で可愛くてもう最高でした。伊魚はすごい美貌の持ち主。真面目で不器用で、心を開いてくれるのには時間がかかるけれどその壁を越えれば深い愛情をもって精一杯答えてくれる。冷たいやつだと思うか、その奥の優しさに気づくか、それは相手次第。伊魚の事情や気持ちもすべて深い掬い上げて包んであげる藤十郎の懐の広さ…!この2人はまさに、ペア。お互いの唯一。防空壕の中で交わったり、死を待ちながら海の上で抱き合ったり、常に死を意識していた2人だったけれど、助かってよかった…!

  • 尾上先生の作品の1945シリーズ三作品目になります。どんどんより濃厚な設定を組んできてシリーズ最大ページ数になっています。前作と舞台は同じくラバウルの航空隊の話です。今までと違うニュアンスな気がしたんですが、互いがどこからか逃げてきて、死に一番近い場所でありながらラバウルが再スタートというところが面白いなと思いました。今回もたくさんたくさんすれ違って、お互いが大切で失えない存在になっていきます。死んでなお共に在りたい、というのは恋愛とは違うけど、友情でも友愛でもない、それでも確かに深い絆を結んでいるんですよね。幸せになって欲しいと本当に思いました。

  • 前作の月光ペア未読のまま一年を立つ。久しぶりの尾上先生の新作を手に取る。やはり素晴らしいな、と思わず感嘆の声を上げる。そんな難しい飛行機の操作半分以上に私の知識範囲を超えてるかかわらず、その張りがある場面を読んでるうちに、まるで彼らと一緒にその場にいる気がした。まずその臨場感がすごい。人に近寄らず、気位が高い割に、密やかに一人でモースルを叩く伊魚がカワイイ。無人島の鰐に罠をかける伊魚も、芳林堂のペーパーで蛇を捕まえてバンバンと捌く伊魚も勇敢で野生的な一面を垣間見できて嬉しい。唯一無二のペアという表現は好きだ。そう言えば、もしかして戦争で操縦員と偵察員という夫婦みたい存在はこういう関係があっただろうか、といろいろ想像してしまった。

  • 購入したものの、ゆっくり時間が出来たときに大事に読みたいと思い
    寝かせていましたが、我慢できずにあっというまに読了。
    今回もラバウルが舞台で、前作【碧のかたみ】のスピンオフです。
    ちょっと月光ペアも出てきたのも嬉しかったです。

    今回は内地で婚約者に逃げられ、失意のうちに逃げるように
    ラバウルへとやってきた藤十郎と、同じく内地で想い人に捨てられ、
    左遷のような形で厄介払いされてきた伊魚の話です。
    同じような境遇でありながら性格は真逆、明るく誰とでも
    打ち解けられる藤十郎に対し、他人を全て拒絶する伊魚。
    でもそんな伊魚も、本当は寂しくて人の愛情に飢えてる
    可愛い子でした。

    名前の通り、体温低めのお魚のような伊魚が、逃げても逃げても
    追いかけてくる藤十郎に捕まえられたときには、心の底から
    ほっとしました。
    ペアっていいなぁ……と前作でも思ったものですが、今回は
    擦り傷から切り傷まで、深く浅く傷ついた伊魚の心の傷を、
    大切に大切にひとつずつ丁寧に軟膏を塗って埋めていくような、
    そんな藤十郎の愛し方に胸が温かくなりました。
    そして一見冷たく思える伊魚も、藤十郎の気持ちに応えようと、
    不器用な優しさを見せるのがいじらしく、健気で何ともいえず
    可愛かったです。

    ふたりが搭乗する彗星は、まるで水に溶ける砂糖菓子のように
    海の深くに沈んでしまいましたが、いつ死んでもいいと思っていた
    伊魚が、最後まで生きようと足掻いた姿に涙します。
    靖国での待ち合わせは、涙で紙面が霞んで先に進めませんでした。
    そして作中、藤十郎は一体何度「伊魚」とその名を呼んだのか、
    思わず数えたくなるような愛しい名前。
    伊魚は一体何度、藤十郎とその名を呼ぶために練習したのでしょう。
    かけがえのない存在であるふたりの行く末を、読者として一緒に
    見守ることが出来て本当に良かったです。

    表紙がまさにタイトルの通りで、美しさに溜息がでます。
    それにしても伊魚の辞世の句、あいかわらず酷い(笑)
    藤十郎じゃないけど、どっかで見たような句になってて
    真面目なシーンなのに笑いが出そうになりました。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

小説家。代表作『天球儀の海』『さよならトロイメライ』『初恋をやりなおすにあたって』(キャラ文庫)、最新刊『雪降る王妃と春のめざめ花降る王子の婚礼2』(キャラ文庫)。

「2021年 『笠井あゆみイラストカードブック 旦那はんと痴話喧嘩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

尾上与一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×