教科書には載っていない大日本帝国の真実

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  • 彩図社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883928231

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから日本は素晴らしかった、という偏った賛美本かと思ったが、概ね中立的に書かれていた(アジアの教科書について敗戦国を良く書けるわけがないからこのような表現になった、など大日本帝国賛美側にやや偏った立場ですが)。
    中国につきつけた「対華21カ条要求」や、爆殺された張作霖が何をしたかなど、初めて知った。
    そりゃ、中国も怒るわ、ということもよくわかった。
    一方で、貧困だった農民が新天地を求めた日本側の立場もわかりやすい。
    ドイツがソ連侵攻を始めたことはドイツ敗退の原因ということは知っていても、それが日本にとってどういうことだったか、などの視点も面白い。
    この著者の本は3冊目だが、どの本もかなりわかりやすく書かれていておすすめ。

  • 大日本帝国というと、「軍国主義の時代」「アジア中が日本の戦争のために犠牲になった時代」など、暗黒時代の象徴として語られることが多い。"War Guilt Information Program" (連合国軍最高司令官総司令部が行った自虐的歴史観を植え付ける洗脳計画)に毒された公立学校教職員(日本教職員組合)や、憲法9条を守れば平和が維持できると深謀遠慮に欠く平和愛好者の間では特に顕著である。

    今でも「軍部の暴走により日本が第二次世界大戦に突き進んだ」というのは、日本人の間では常識のように語られるが、これだけを盲信していては、過去の経験を日本の未来に生かすことができない。この書は、教科書では語られない、また教育現場で教師が教えようとしない、戦争に至った複雑な過程を分かりやすく解説している。そのひとつ、第二次世界大戦に至る「軍部の暴走」を取り上げてみる。

    この問題を考えるとき、国民は軍部の台頭を熱狂的に支持していたという事実を忘れてはならない。だから、帝国議会は抑えることができなかった。ではなぜ、国民は熱狂したのか。いくつかの理由を本書から列挙してみる。
    ・戦前は凄まじい格差社会(巨万の富を得る財閥と農村の荒廃)であった。
    ・世界恐慌等で不況にあえぐ日本の景気回復を満州国に期待した。
    ・大手新聞社は言論統制が敷かれる前から、売上を伸ばすため好戦的記事を書いていた。
    ・当時の二大政党は足の引っ張り合いに終始し、政治が大混乱に陥った(いわゆる「統帥権問題」(1930年、ロンドン海軍軍縮会議)を持ち出し、政府の軍に対するコントロールを否定しまった)。
    ・普通選挙が結果的に国民の政治不信をもたらした(普通選挙は莫大な選挙費用がかかる割に得票数が読めない。必然的に財力のある財閥と政治家との関係が強まった)。

    このような財閥や政治家への国民の不満を吸収したのが軍部であった。1932年の五一五事件や1936年の二二六事件を起こした首謀者たちも、貧しい農村の次男以下が多く、姉妹が身売りに出されるなどの状況を目の当たりにした者も少なくなかった。つまり多くの国民からすると、自分たちの生活を守り、腐敗した政治を立て直してくれるという期待があったのだ。

    簡単ではあるがこのような背景を理解しないと、歴史の真実は見えない。シビリアン・コントロールをしていれば、軍部の暴走は止められるというのは誤りである。そもそも大日本帝国の「統帥権」は、軍部の暴走を止めるための仕組みだったはずだ。すべては政治がうまく機能しての話である。

    以上は主として、第二次世界大戦を前提にした内容だが、本書には、日本の独立を守るための明治政府の国家つくりから、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦へと向かい壊滅的打撃を受ける日本の(教科書では分からない)本当の姿が(紙幅の関係で部分的ではあるが)見えてくる。そこには、栄光と挫折がある。大日本帝国から学び、近代国家つくりとして誇りとするところ、あるいは反省すべきところを冷静に考えなければならない。その入門書として、本書は良書であると思う。

  • 戦後教育では恰も戦前の日本が異常な国であったかのやうにいはれるが、ごく普通の国であったといふことがよく分かる本。幕末から大東亜戦争終戦までが、「なぜ?」といふ観点から分かり易く書かれてゐる。自虐史観でもなく、かと言って戦前のすべてが正義だったといふ史観でもない。極めて客観的に書かれた好著だと思ふ。ただ、誤植が散見されるのが残念。

  • 正に教科書には載っていない内容だった。出来事の事実だけでなく、どうしてそれが起こったかをわかりやすく書いている。日本側から見た解釈もあり、教科書では諸外国から反発を呼ぶのだろう。義務教育では近代史は、あまりやらない。重要なのに。

  • 一見,どちらかの思想に偏った本かと思える表紙だが,内容は冷静で大局的で温かいものがある。歴史を学ぶ意味が失われつつあるように感じられる今読まれるべき本である。今われわれは何処にいて今後進むべき道を自覚するために。

  • 戦争映画ばかり観て興味を持っていた大日本帝国。
    コンビニで見つけ買ってみました。

    『教科書に載っていない大日本帝国の真実』というタイトルですが、僕は教科書で近代日本史について全然勉強してこなかったので固定観念の無い自然な無知さで読むことができました。えっへん。

    明治維新から太平洋戦争の終戦までの時代についての内容で、教科書を少し砕いたような表現で書かれている。
    - 軍国主義の時代
    - 暗黒の時代
    - 日本中が戦争のために犠牲になった時代
    と、日本人として目を背けたいこの時代だったが、本質的にはどうなのか?本来はアジア諸国の独立と解放についてアジアからリスペクトされないといけない存在なのにも関わらず、隣国との仲の悪さはなんなのか。
    特に中国との間で遺恨が生じた『対華21箇条要求』については、日本人はあまり知られていないので面白かった。

    この手のいわゆる戦争本は初めて読んだ。
    著者の思想はあまり出ていない本だと思うので、どんな人にもオススメできる内容だと思った。
    だが、同じ時代背景を別の視点ではどう見えるかも知りたくなったので、探し読むことにする。

    この時代の戦争の背景を知らずして、今の外交は語れず。
    日本人として知るべき重要ファクター。

  • 中学高校時代ともに歴史の時間はあったのですが、現代史は殆ど学ばなかったと記憶しています。従って現代史は社会人になって、それもごく最近に本によって学びました。戦前の日本は資源もないのに軍部が暴走して無謀な戦争に突入した、というイメージが払拭されたのが、この本の著者である武田氏の書かれた本(戦前の日本)でした。

    この本は、その本をバージョンアップしたもので、当時の大日本帝国の経済力が既に欧米と拮抗していて、戦後の急成長は奇跡というより「単なる復興」であることを説明しています。
    日本が米国と戦争をすることになったのは残念なことですが、この本は、戦争に至った根本原因にも触れていると思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・大日本帝国の成立に大きく関係している事件は、1840年のアヘン戦争(p14)

    ・東条英機は東京裁判の時に「この裁判はアヘン戦争に遡って双方を対象とすべき」と語った(p17)

    ・幕府から政権を引き継いだ明治政府は、国を代表する政権として幕府が諸外国との間で結んでいた条約も引き継いだ、なので成立半年で国際的に独立国家として認められた(p26)

    ・明治維新で行われた改革のうち、もっとも巨大なものは「版籍奉還=幕府大名の領地をすべて没収して国に返還」である(p31)

    ・薩長土肥の4藩は政府内で幅を利かせる内々の特権は持っていたが、制度としての「特権」は決してつくらなかった、戦勝軍としては世界史的に見ても異例(p33)

    ・1861年、ロシアは対馬の芋崎を占領した、幕府は困り果ててイギリスに協力を求めてようやくロシアは退去した(p40)

    ・明治政府は1871年に薩摩、長州、土佐藩からなる国軍(1万人)を創設した(p46)

    ・明治政府の指導者たちは、勝った軍さえも解体して政府の直属軍のみを正規軍とした、これに反発したのが、長州の萩、佐賀の不平士族、西南戦争である(p47)

    ・最初の徴兵制度では数%のみだったが、1937年には25%、1944年には77%、間際には90%が招集された(p50)

    ・義務教育の基礎となる学制を1872年に施行(学費無償化)して3年後には、日本全国で2.4万の小学校を建設(現在:2.6万)した(p62)

    ・帝国大学は創立順に、東京・京都・東北・九州・北海道・京城(韓国)・台北(台湾)・大阪・名古屋(p64)

    ・日露の緊張が高まった時、イギリスはその調停から手を引いて「日英通商航海条約=治外法権撤廃」を1894年に結んだ(p68)

    ・日清戦争当時の両国の財政規模は同程度(日本:9862万円、清国:12000万円)であった(p71)

    ・遼東半島は満州の南に位置していて、満州にとっての海の玄関口(p77)

    ・日清戦争の賠償金で八幡製作所が作られたのは有名だが、使われたのはほんの一部、ほとんどは軍備拡張に使用された(p86)

    ・1905.1に陸軍が旅順要塞の攻略に成功、太平洋艦隊が壊滅した、バルチック艦隊出撃して貫か月後のこと(p102)

    ・1873(明治6年)において輸入代金は発展途上国にありがちな「外国からの借入」ではなく、自国の産業力(生糸の輸出)で大量の物品を輸入していた(p110、112)

    ・兵庫商社は三井物産へ、海援隊は三菱商事に引き継がれた、商社の取引額は全日本の67%を占めていた(p117)

    ・日本は急激な経済成長をして、昭和初期にはイギリスと貿易戦争(綿製品)が起きていた、これは第二次世界大戦の要因のひとつになる(p120)

    ・自動織機とは、材料の糸が切れた時に自動で補充する機能がついた織機のこと(p123)

    ・自軍の武器をほとんど国産で賄っていたのは、米英フランスドイツのごく1部でそれに日本も入っていた(p126)

    ・昭和11年には自転車の生産量が100万台を越して機械系輸出品目の1位になり、イギリスは植民地に輸出された自転車に高い関税をかけた(p127)

    ・明治初期が外国から借入したのは、1)幕府がフランスから借りたお金を返すとき、2)鉄道敷設、3)武士の秩禄償還(p130)

    ・念頭に入れておくべきことは、軍部の暴走を国民は熱狂的に支持していた(p134)

    ・格差社会の証拠に、4大財閥(三井三菱住友安田)の資本金は全体の49.7%(p145)

    ・当時の国際取引は為替変動での差額は、最終的にゴールドで清算されていたので、ドルを買って利ざやを得るということは最終的に日本から金が流出すること(p148)

    ・当時の新聞は言論統制により戦争を煽るような報道をしていたわけではない、その前から好戦的な記事を書きまくっていた(p155)

    ・朝日新聞は戦争批判の記事を書いて、当時の総人口の7分の1にあたる軍関係者から不買運動があり、方針を変えた(p159)

    ・立憲政友会には三井財閥、立憲民政党には三菱がついてスポンサーになった、安田・古河・住友はそれぞれの政党に資金提供していた(p171)

    ・当時の総理大臣は基本的には他の国務大臣と同格なので、罷免する権利なし、不一致があった場合は内閣総辞職しかない(p175)

    ・明治政府の高官は欧米での「キリスト教」に対するものとして「天皇制」を用いた(p179)

    ・日ソ中立条約の締結の3か月後にドイツはソ連に侵攻したので、4国軍事同盟は結ばれなかった、第二次世界大戦のポイントはソ連であった(p198,202)

    ・幕末には3000万人の人口が昭和初期には6000万人、戦争前には7000万人、当初は南北アメリカへ移民させていたが新たな移民先を見つける必要があり、それが満州であった(p240)

    ・ベトコンのゲリラ戦術は日本軍が教えたもの、ベトナム戦争とは行われることがなかった太平洋戦争における日本本土決戦をベトナムで実行したもの(p249)

    2012年6月16日作成

  • あれだけめざましい発展を遂げた大日本帝国ですが、意外にもその政治システムは権力の一極集中ではなく、権力が分散されて責任の所在が不明確なものだったということに驚きました。
    そのため、太平洋戦争前の昭和初期には様々な経済・国際問題が多発していたにも関わらず、政治家は無為無策でなにもできないという、現在の状況と変わらない「政治不在」の時代が続いたようです。
    やはり根本的にこの国の政治システムを変えない限り、また同じことの繰り返しになってしまうのではないでしょうか。

  • コンビニで表紙を見て気に入って衝動的に読んでしまいました。作者の知名度等は全く知りませんが、かなり興味を持って読めました。明治維新という奇妙な革命=政権を自ら返上、支配階級が痛みを受ける。大日本帝国が短期間で軍事大国になれた理由。軍部の暴走を許してしまった背景=凄まじい格差社会、政治システムの失敗、不毛な政党政争が招いた統帥権干犯問題。当時の日本の外交能力の欠如。日本軍のアジアにおける功罪。77年の大日本帝国の歴史をザッと読め、色々と改めて考えさせられる本でした!(>_<)

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著者プロフィール

1967年生まれ、福岡県出身。出版社勤務などを経て、フリーライターとなる。歴史の秘密、経済の裏側を主なテーマとして執筆している。主な著書に『ナチスの発明』『戦前の日本』『大日本帝国の真実』『大日本帝国の発明』『福沢諭吉が見た150年前の世界』(ともに彩図社)、『ヒトラーの経済政策』『大日本帝国の経済戦略』(ともに祥伝社)等がある。

「2022年 『吉田松陰に学ぶ最強のリーダーシップ論【超訳】留魂録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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