火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

制作 : 新井 敏記 
  • スイッチ・パブリッシング
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本棚登録 : 473
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884182830

作品紹介・あらすじ

本書では、一本一本の質を最優先するとともに、作風の多様性も伝わるよう、ロンドンの短篇小説群のなかから9本を選んで訳した。『白い牙』『野生の呼び声』の作家珠玉の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 『野生の呼び声』で有名なアメリカの作家ジャック・ロンドン(1876~1916)。40歳の若さで他界したのですが、50冊以上、200以上の短編と多くの作品をのこした作家です。そんなロンドンの作品群から、翻訳者の柴田元幸さんが選んで編集・翻訳したのがこの本。その多彩なチョイスにも嬉しくなります。

    ***
    「火を熾す」「メキシコ人」「水の子」「生の掟」「影と光」「戦争」「一枚のステーキ」「世界が若かったとき」「生への執着」

    波乱万丈な生涯をおくったロンドンの作品はバラエティに富むもので、体験に基づいたリアルな描写が力強く魅力的。あるときは壮絶な極北の自然であり、あるときは命がけで死闘を繰り広げるボクシング、そうかと思えば、ボルヘスも惚れ込むような幻想譚やら、一攫千金を夢見た者たちの栄枯盛衰、はたまた「ジキルとハイド」のような奇譚まで……。

    中でも印象深いのは「火を熾す」。シンプルでよく練られたタイトルですね。零下50℃の極北で繰り広げられる一人の男と犬の話。筋もシンプルですが、それだけに読ませるのは難しい。そもそも零下50℃とはどんな世界なん? 男にふりかかる厄災をロンドンお得意の心理描写と独白体でじわじわ詰めていくちょっと恐い話。

    「メキシコ人」は革命のために黙々と命をかけるボクシング青年の話。当時の時代背景(メキシコ革命)も垣間見え、ロンドンには珍しい結末にも感激です。

    「一枚のステーキ」は、それを食べることのできなかった老ボクサーの栄枯盛衰が泣けちゃいます。

    また「生の掟」は閉じられた世界で展開する心理描写が見事で、ベケットのようにぐだぐだせず(笑)走馬灯のように美しく流れていきます。老コスク―シュの意識は毅然としながら悲哀に満ちています。

    「……自然は生き物には優しくはない。個人と呼ばれる具体物など自然にはどうでもよい。自然の関心は種(しゅ)に、人類にしかない……」(「生の掟」)

    ロンドンは一日1000語(日本語でおよそ2500字、原稿用紙6枚強)の執筆ノルマを課していたそう。私なんて、レビューを書くだけでもふーふー言っているというのに、日々の創作原稿が6枚強、それも毎日、おおむね午前中の2時間ほどでぺろりと書いて、ほとんど手直しなしという鬼才ぶりだったそうな。いやすごいな~~~。

    ロンドンの文体は質実剛健で読みやすく、マーク・トゥエインやオーウェルのような雰囲気も漂っています。彼の代表作『野生の呼び声』は、バックという犬を主人公としたある種の英雄譚なので、中学生でも読めるくらいです。同じく短編もぐいぐい読ませて野性味溢れていますが、「生」を見つめる独特の繊細さや哀愁がそこかしこに漂っています。その渋さは大人のテイストですね♪

  •  死と直面した生を書きっている。
     作者は死を書いているのか、生を書こうとしているのか、僕は死を読んでいるのか生を読み解こうとしているのか、よくわからない。ただ、死に直面した生の緊迫感は伝わってくる。ゴールドラッシュの時代の男たちの命の感覚も伝わってくる。ストーリーに余計な寄り道がなく、短編でしか味わえない疾走感を楽しめる。

  • 「白い牙」「野性の呼び声」で知られるジャックロンドンの短編集。
    編纂、訳は柴田さん。

    著者のさまざまな経験、興味が活きているであろう各短編はボクシングにしろ、原野にしろ生々しく鮮やかです。

    表題作の「火を熾す」、「メキシコ人」、そして「生への執着」が特にお気に入り。

  • 火を熾すが◎

    死ぬときはこういう死に方がいい。

  • 19世紀~20世紀初頭のアメリカ人作家、ジャック・ロンドンの短編をあつめた本。
    巻頭の表題作「火を熾す」のインパクトが大きかった。
    人生の厳しさ、といっても、教訓めいたものがあるわけでもなく。

    現実を直視していて、まっすぐで、生々しい。
    なぜか、そらにまっすぐ伸びた巨木を連想してしまった。

  • 「火を熾す」はアイロンのある風景に登場した小説なのでいつか読もうと思ってた。

  • 9篇の短篇集。
    どれも違うタイプの物語のように感じるのだが、全体的に獣臭く生きる男の臭いが漂っていて、個人的に苦手。
    そんな中でも「火を熾す」「水の子」「生の掟」は好き。
    解説で柴田元幸が「透明性」を意識したと言っていたが、この3篇はより透明性を感じることが出来た、と僕は思う。

  • こんなにも臨場感と緊張感がある作品はなかなかめぐり合えません。
    最初に収録されている『火を熾す』からその世界観に一気に呑まれてしまいました。
    人や動物が困難の中にいても必死で生き抜こうとする執念、
    それを描くのが抜群にうまいです。
    くよくよしてばかりはいられない、そんな気にさせられます。

  • 「火を熾す」と「一枚のステーキ」がよかった。

    火を熾すは、雪国に住んだことがある人なら、
    読んでいる間ずっと眉間にしわが寄ったままになってしまうかも。
    極寒の極限状態のなかでは、
    火を熾すというシンプルな行為もとてつもないスペクタクルになってくる。

    一枚のステーキは、40歳の老ボクサー(この作品が書かれたのは1909年)が
    困窮のためにステーキを食べることができず試合で苦闘する様子が描かれている。
    ボクシングを描いた小説を読むのはこれがはじめてかも。
    試合の様子、ボクサーの心理のひとつひとつがずしんと響いてくる。

  • すごい。どの短編もすごい。生死、自然、戦い、そんなテーマに真っ向勝負を挑み見事に書き上げてる文章力は一気に読ませる。生きた時代も関係しているんだろうけど、人や自然の本質に切り込んでいってる感じが最高に響く。すごい

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著者プロフィール

アメリカの作家。1876年、サンフランシスコ生まれ。工場労働者、アザラシ漁船の乗組員など多くの仕事に就いた後、『野性の呼び声』(光文社他)で一躍流行作家となる。アラスカの自然と生の苛酷さを描いた短編や、海洋小説、ボクシング小説、SF、幻想小説、ルポルタージュなど、多彩な作品を発表、世界的名声を博したが、1916年に急死。邦訳に『マーティン・イーデン』(白水社)、『白い牙』(光文社他)、『火を熾す』『犬物語』(スイッチパブリッシング)他多数。

「2020年 『赤死病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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