MONKEY Vol.2 ◆ 猿の一ダース(柴田元幸責任編集)

著者 :
  • スイッチパブリッシング
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本棚登録 : 187
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884183912

感想・レビュー・書評

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  • 私は柴田元幸信者なので、その贔屓目もある…とは思うけども、贔屓目抜きにもかなりの秀作揃いだと思っている。
    集められている短編もいいし、それぞれの装丁もすごくいい。
    小さな宝箱を次々開けていくような気分。
    入っているのは、キラキラ光るガラス玉のような綺麗なものだけじゃなく、薄汚れた何かの骨なんかだったりもするのだけど、それもまた一興。
    村上春樹の小説が残念ながら私は苦手なのだけど、これに収録の「シェエラザード」はかなり好みだったのも嬉しい。
    「焚書に抵抗するために一冊書物を記憶する抵抗運動に参加するとしたら何を選ぶか」という「華氏四五一度質問」もとても面白かった。
    質問がもういいよねぇ…。
    現実ではないのに、想像して必死で私も選んでみる胸の苦しさ、でも想像なのでそれはちょっと甘みもあったりして。
    掲げられているレイ・ブラッドベリのエッセイは、本と本好きへの愛に満ちていて涙が出た。
    この質問への様々な方の回答も興味深かったのだけど、谷川俊太郎で吹き出した。
    とぼけてる。好き。
    次号も楽しみ!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「私は柴田元幸信者なので」
      私も末席に、、、
      「私は柴田元幸信者なので」
      私も末席に、、、
      2014/06/09
  • 今号の特集は題して「猿の一ダース」。柴田さんお気に入りの短編が、国内外とりまぜて十数編のアンソロジーとして掲載されている。

    1作ずつ装丁を替えて掲載するという贅沢なつくりで、作品のイメージとデザインが手を取り合っている様子も素敵。あるものはとぼけて乾いたユーモアをはらみ、あるものは触れられたくない感情に、細く鋭い何かが突きつけられる感触がある。とりわけ、冒頭にもってこられたブライアン・エヴンソン『ザ・パニッシュ』のパンチが効いている。核になる「ザ・パニッシュ」をめぐる二人の関係性が詳しく語られることはないけれど、過ぎた年月の底に澱のように残ったそれが息を吹き返すさまが、ぞわっと不穏でそら恐ろしい。川上未映子『彼女と彼女の記憶について』は巧みさにさらに磨きがかかっていると思うし、マシュー・シャープ『Story #18』の、「ある時点で、月に着いた。(55ページ)」という1文は唐突で好き。村上春樹『シェエラザード』の、仕組まれた感覚とリアリティのなさも嫌いではない。春樹さんは中短編のほうが向いていらっしゃるんじゃないかしら。長編でこればっかりやられたら、たしかにしんどい。

    どれも持ち味の違った作品だけど、不思議なことに、これがみな、柴田さん訳の海外作品ではないかと思うほどに、白っぽくクリーンな文体でつづられている気がするのも面白かった。

    ほかには、レイ・ブラッドベリの小文『本と蝶』が素敵だった。これはもともと、アメリカの高校生が作るアンソロジーの序文のために書かれた文章とのこと。編者の高校生たちが序文の著者を誰に依頼するかを選ぶなんて、なんと勇気のある素敵な活動だろう。私は年若い本好きのかたにどうこう言えるほどのものは何も持たないが、お母さんや近所のおばちゃん的目線のおせっかい見守りポジションよりも、よきcolleague(同僚)として付き合いを築いていきたいと、珍しく殊勝にも思った文章だった。

    柴田さんは今月、お勤め先の大学を少し早めの年齢で退官されるらしい。私は柴田訳英米文学の一読者に過ぎないけれど、お疲れさまの言葉と、これからのさらなるご活躍を応援する言葉を、遠い空からこそっとお伝えしたい。

  • 柴田元幸が編集主幹をつとめる文芸誌のvol.2。
    特集は『猿の一ダース』というタイトルの下で並べた、自身が読みたい・訳したい11編の短編や散文詩。(11編なのになぜ一ダースと言うのか。まえがきにその理由が書かれてあるが、これがまたふるっている。)7編が柴田元幸による翻訳で、4編が村上春樹、川上未映子など日本の小説家によるもの。以前から彼の翻訳ものは好んでいたが、昨今の"ポール・オースター・マイ・ブーム"でその熱が再燃。このMONKEY vol.2でもワタシの印象に残ったのは翻訳ものの方。特に、スティーヴン・ミルハウザーの『息子たちと母たち』とブライアン。エヴンソンの『ザ・パニッシュ』がいい。ミルハウザーについては、以前に『マーティン・ドレスラーの夢』『ナイフ投げ師』を読み、強烈なインパクトを受けていたので今回も期待してのぞんだが、その期待通り。エンタメ小説のような一件落着とはまったく違う、余韻を残した終わり方が何とも味わい深い。
    また、本誌は単行本の倍のサイズなのだが、このサイズで小説を読むというのは実に新鮮な体験だった。余白や装幀の存在感がぐっと増して、ちょっとお洒落して出かけたような気分での読書体験となった。(ちなみに、村上春樹の短編の装幀はクラフト・エヴィング商會。先日の同商會の展覧会で、この装幀で使われている現物を見た。)

  • 2014-2-21

  • 川が面白かった。あまり読んだことのない世界観。

  • 創刊第 2 号。
    日・米・英の 11 人の作者によるの新しい小説の特集。
    猿からの質問「華氏四五一度質問」冒頭に、
    2012 年 5 月、ブラッドベリが 91 歳の時に口述筆記された「本と蝶」。
    数週間後、2012 年 6 月 5 日に亡くなられたようだ。

  • 2014.6.17
    村上春樹の短編がやっぱり面白い。

  • 内容も装丁やデザインも、贅沢な雑誌です。

    猿の1ダース
    面白く読んだ。
    柴田さんの紹介文と合わせるとまた。
    自分の読みたい文章を選んだ、というコンセプトとわくわく感が素敵。

    華氏四五一度質問
    なんていい質問なんだ。
    私だったら何を選ぶかなぁ。現時点だったらモモかな、でも日本の文章の美しさも残したいし、とか思い。
    福岡伸一さんの、引用した文章が、私がブクログで感想を書くときになんとなく思っていたことで、すとんとくる。


    あと、久しぶりに春樹読みたいなってなった。

    次号の特集が楽しみすぎて…!

  • ケリー・リンク「モンスター」がガツンときた。あちらの世界とこちらの世界に、否応無く、何の留保も無く、ソリッドな手触りの橋が架けられる。その瞬間のダイナミックなことときたらもう。けっこう難しい架橋なんだけど、それがクールで、ある意味上品ですらある。ため息。ため息。暫し感慨に浸ってから家人にも薦める。読書の幸せのひとつの形だ。

  • 柴田先生の意欲的で楽しげな仕事ぶり、およびその内容の充実に心躍る文芸誌。今回のメイン特集は、マシュー・シャープ「モンスター」、スティーブン・ミルハウザー「息子たちと母たち」ほか胸に頭にズドンと来る名短編ずらり。
    そして何と言ってもアメリカ新聞マンガコーナー!たった2ページですが一番印象強いかも。
    (余談ですがこの2ページ、書籍「初期アメリカ新聞コミック傑作選」の宣伝コンテンツです。とても素晴らしい内容なのですが、価格は12万円。12万円ですよ…。ほしいけど…。)

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著者プロフィール

1954年生まれ。東京大学名誉教授、翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベックなどアメリカ現代作家を中心に翻訳多数。著書に『アメリカン・ナルシス』、訳書にジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』、エリック・マコーマック『雲』など。講談社エッセイ賞、サントリー学芸賞、日本翻訳文化賞、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。文芸誌『MONKEY』日本語版責任編集、英語版編集。

「2023年 『ブルーノの問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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