MONKEY Vol.7 古典復活

制作 : 柴田元幸 
  • スイッチパブリッシング
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884184025

感想・レビュー・書評

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  • 創刊号から愛読している「MONKEY」のvol.7はいつもよりページ数も多く、内容も盛りだくさん。特集は「古典復活」。柴田元幸と村上春樹が復刊を希望する海外小説について対談したり、それぞれが短編を訳したり、この4月に始まった新潮社の「村上柴田翻訳堂」の予告編ととらえることもできそうだ。

    そして「MONKEY」を手にすると、読みたい作家の数が増えるのはいつものこと。今回は、カーソン・マッカラーズとトーマス・ハーディ。どちらも「村上柴田翻訳堂」で出ているので必読だ。

    上述した対談や翻訳のほか、村上春樹へのロングインタビューも掲載。とは言え、インタビュアーがワタシの好みになじまない川上未映子だったので、実はあまり期待をしないで読んだのだが、これがなかなかの読み応え。「MONKEY」で連載されていた『職業としての小説家』(のちに単行本化)の深化編と言えばいちばん近いだろう。
    最も印象的だったのは、物語を「くぐらせる」ということ。村上春樹によれば、自我レベル・地上意識レベルでの物語は浅く、一方、一旦無意識の層を「くぐらせて」出てきたマテリアルは一見同じように見えても「倍音の深さが違う」ということらしい。彼の小説の独特な読後感は、ここから来ているのかと腑に落ちた。

    かなり次元を落として(笑)例えばコピペで何かレポートを作成しようとした時、一旦「くぐらせて」自分の無意識の層に触れさせてみよう。結果は少し違うものになるのかもしれない。

  • 春樹好きは読むと良いと思います。
    英米文学には疎いのでへーという感じ。

    銀河鉄道に胸が熱くなる。

  • これは自分的には絶対に買い!
    なぜなら
    ①大ファンの村上春樹のロングインタビュー
    ②村上春樹と柴田元幸(大学時代教わったことがある)の翻訳小説対談
    ③大ファンのカズオイシグロのインタビュー
    ④ジャックロンドンとカーソンマッカラーズの短編の村上・柴田訳
    がのってるからである。

    嘗めるように読んだが、③(カズオイシグロのファンである)は今イチだったが、①は面白い。興味深い。川上映未子のインタビュアーぶりが素晴らしく的確。

    印象に残った点。
    ・「ある年齢からは、実年齢とのギャップから「僕」の一人称を用いることに齟齬を感じるようになり、三人称を用い、自由に書けるようになった」との村上春樹の発言。

    ・これを受けての川上の「でも、元々、三人称的に機能している一人称で、私小説的側面がないですよね。それなのに、読んだ人の自己に直接結びつくようなところがって、村上さんの「僕」は独特の機能を持っている」の発言。

    これは、本当にそのとおりと思う。この「僕」の魅力は、グレートギャツビーの「僕」のあり方ともとても似ていると思う。

    そして、村上春樹の「でも、もう一度、一人称の小説を書きたいと思っている」との発言。そう、今の村上春樹の年齢での一人称の小説を是非読みたい。本当に読みたい。「女のいない男たち」の延長線上にその小説はあるように思う。

    やはり村上春樹は自分にとって気にならずにいられない人の一人だ(あとは羽生さん)との思いを強くした。

    なお、自分の村上春樹への現時点での期待をまとめておく。
    ① 今回あがっていた、今の村上春樹の実年齢に応じた、一人称の小説、是非読みたい。
    ② 1Q84があれで終わってしまうのは許せない。
    ③ 「女のいない男たち」所収の「木野」を長編化した小説を是非読みたい。

  • 『職業としての小説家』を補完するまさに『裏村上春樹特集』としての充実の内容。柴田元幸との翻訳に関する対談、川上未映子のインタビュー、スティーヴ・エリクソンの書評、本人のジャック・ロンドン訳まで。

    川上未映子のインタビューは、本人の視点から書かれた『職業としての小説家』を他者の視点から解釈するという作業に成功している。特に、彼のデタッチメントの姿勢は過度なコミットメントの時代(60年代)における一種の姿勢で、能動的にデタッチメントするというコミットメントだったが、今の若者はただリスクを回避するだけ、発言を回避することを正当化するだけのデタッチメントだという川上さんの想いはとてもよく分かる。村上春樹自身も、そろそろ発言する時期に来ていると自身も感じているようだ。

    あとはカズオ・イシグロのインタビュー。翻訳されることを意識して書くことがいかに今日必須で大きなテーマであるか、小説家になることがいかに夢見事ではないかという話はすごく深かった。村上春樹もイシグロも、一人称と三人称のテクニックに言及していたのも勉強になった。

    とにかく今号は内容たっぷりだった。

  • 川上未映子と村上春樹、私の好きな二大作家の対談とくれば読まないわけにはいかない。
    理屈っぽい抽象的な(もちろんそこが彼女の持ち味)川上未映子の質問にも実に誠実に真摯に答えてる村上氏。
    内容の濃い一冊。

  • どこを読んでも面白い。特に柴田元幸と村上春樹がそれぞれ訳したトマス・ウルフ、カーソン・マッカラーズ、ジャック・ロンドンの短編、とても良かった。

  • どこを開いても、面白いページしかないわよう!
    柴田元幸と村上春樹の絶版翻訳書対談、ジャック・ロンドンらの新訳、カズオ・イシグロの講演録、工藤直子と松本大洋のコラボ…どんな宝石箱か!と!
    とりわけ、村上春樹のインタビューが良かった。
    インタビュアーの川上未映子との呼吸がぴったり合っていて、読んでいて非常に気持ちいい。
    私は全くハルキストではないのだけど、この雑誌に掲載の春樹作品は小説もエッセイもとても良く、今回のインタビューは連載エッセイの見事な大団円だった。
    次号も楽しみ!

  • もっぱら村上春樹めあてに購入。
    本誌中でも言われてるけど裏特集・村上春樹みたいになっている号。対談やらインタビューやら翻訳やら入ってるし。
    翻訳が割に好きだった。

  • 冒頭の村上春樹さんと柴田元幸さんによる翻訳絶版もの談議は、
    すごく勉強になった。
    村上訳のジャック・ロンドンも読めたし、
    柴田訳のカーソン・マッカラーズとトマス・ハーディも面白かった。
    川上未映子さんによる村上春樹インタビューもあるし、
    村上春樹『風/ピンボール』英訳書評はスカしてんじゃねーよって感じだったが、
    柴田さんのおっしゃるとおり「裏特集 村上春樹」になっている。
    カズオ・イシグロさんがその訳者土屋政雄さん、
    柴田元幸さんと行った講演の内容まで読めて、
    良質で充実した 1 冊であった。

  • 村上春樹インタビュー(聞き手 川上未映子)が良かった。

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著者プロフィール

1954年生まれ。東京大学名誉教授、翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベックなどアメリカ現代作家を中心に翻訳多数。著書に『アメリカン・ナルシス』、訳書にジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』、エリック・マコーマック『雲』など。講談社エッセイ賞、サントリー学芸賞、日本翻訳文化賞、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。文芸誌『MONKEY』日本語版責任編集、英語版編集。

「2023年 『ブルーノの問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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