小説のデーモンたち (SWITCH LIBRARY)

著者 :
  • スイッチパブリッシング
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本棚登録 : 41
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884184346

作品紹介・あらすじ

連載の三回めが東日本大震災の発災からわずか十一日後の文章となった。ここから『小説のデーモンたち』は、一人の作家の自滅と再生の物語となってしまう。そう、物語だ。驚いてしまうことに。僕は、この創作論『小説のデーモンたち』を月々書きつづけることで、ある一人の"作家"を観察するはめになった。その"作家"とは僕である。結果として、この本は「2011年1月から2013年7月を生きた、ある一人の"作家"のクロニクル」に結実した。-著者。

感想・レビュー・書評

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  • 小説でもエッセイでもない、独白に近い文章の連なり、といった感じか。

    自らの手で生み出す作品のためには「魔物」と対峙し、語り、斬り、祓い、そして飼いならさねばならない。
    「創作論」とするには非常に個性的すぎるのかもしれないけれど、豊崎社長が帯文に記している通り、「小説神髄」なるものが原石のような形そこかしこに散りばめられ、埋め込まれていたように感じた。

    クロスロードとロバート・ジョンソンの登場が象徴的で、深く印象に残る。
    最後の1行を読んだときに、「ははっ」と何だかわからない嗤いが飛び出た。やっぱこの著者は面白い。

  • 小説執筆論、というより音読も執筆もパフォーマンスもするかなり過酷な純文系小説家実録の筈が、後半、怒濤の展開。文章読本、小説創作論としてはかなり破格か。

    1章では巨編『黒いアジアたち』の執筆中、東北の震災に見舞われたあとの日常――の創作の日々(苦悶)を、2章ではそれを一歩踏み込み次の一手を模索する状況が綴られる。3章は執筆論か。

  • 『創作論をテーマにした三部構成のエッセイ』

    まず自分の感想を述べます。
    正直読みにくい本でした。しかし興味深い内容でもありました。
    また、自分は著者のファンではないため余計に読み難いと感じたのだと思います。

    では、大まかに自分が良いと感じた所から。
    ・エッセイではあるが、売り文句にもある創作論について確りと書かれていた。特に後半部分では創作論として主張が明確でわかりやすい所が多い。
    ・中盤からは読みやすくなり、後半は主張が明確になり、テンポ良く読めた。
    ・自身の性格や行動に関しての肯定と否定を繰り返す展開にその溢れる自己主張の部分は興味深くも思った。
    ・創作論として作品を書く所までで終わらず作品を書いている途中や書き終わった後、そして次の作品についても書いている所。(詳しくは書かれないが実感を持って書かれていると感じられるので説得力があるように感じた)

    ファンには良いのではと思う所は次の通り。
    ・2011/01から2013/06まで月単位で他作品の執筆状況大まかに分る。
    ・他作品について著者が正直な所を語っている部分がある。(ドッグマザー、黒いアジアたち、他)
    ・東日本大震災に際しての著者に対する影響などを語っている部分が多くある。
    ・小説以外の自身の活動についても多く語っている。(朗読会や演劇など)

    読み難い点や悪いと感じた所は以下の通り。
    ・エッセイが主なのか創作論が主なのかどっちつかずの物になっている(作家の生活が全て創作に繋がるという主張も分るが)。
    ・前半では創作論に話を無理矢理持っていく展開が目立つ。
    ・前半でも創作論的な話は多いが、前半部分では自身でもわかっていないものを無理矢理言葉にした様な抽象的な表現や根拠が不明確な断定(インスピレーションで判断する様な所)が目立つ。それはそうなのか?という感想や言い過ぎでは?という感想をしばしば抱いた。
    ・時に溢れる自己主張の部分に読みにくさも感じた。
    ・具体的な創作論として書かれた第三部が虚実入り交じった物語的な読み物であり、分りやすくはあるがメタ的な表現もあり好みが分かれると思われる(自分としては逆に面白く読めた部分でもある)。

    総じて著者のファン向けのエッセイであると感じました。
    ファンならば十分に楽しめるのでは無いでしょうか。
    本の内容としては三部構成となっており、第一部と第二部は創作論をテーマにしながらも作家活動の部分が多く書かれたエッセイ、第三部は創作論が主体の虚実入り交じった読み物という構成になっています。
    自分は著者の書いたアラビアの夜の種族がとても好きなのですが、他作品はいまいち肌に合わず著者のファンでは無い事と、著者の朗読会や劇などの活動にあまり興味が無い事から前半から中盤までの著者の(まだ確りと纏まっていない)創作論にからめた作家生活のエッセイ部分に入り込めず読み難く感じました。
    創作論を含むエッセイであるということで、創作者にもアピールがあると思いますが、創作論としてはエッセイ部分(作者の活動部分)が多く、また雑誌連載を纏めたという事からか前半は著者の論も固まらないまま垂れ流されている感があり、著者の考えが纏まっていない文章を相当量読む事になりますので覚悟が必要です。
    創作論として主な部分は小説のデーモンたちとして後半部分に明確に書かれますので創作論を期待する人はこの部分を読むだけでも著者の言いたいところは分ると思います(分ると思いますが著者の書く前半から中盤部分のエッセイを読んだ方が真に迫るとは思いますし、抽象的な部分も読みたいのならば前半部分から読んだ方が良いと思います)。
    個人的には創作論部分については、なるほどと思う所も多かったので、創作論部分を目当てに読んでも悪くないとは思いますが何にせよ本題に入るのが遅いので、単刀直入かつシンプルな本が好みだという人は避けた方が良いかもしれません。
    重ねて言いますが、著者のファンであれば、著者の活動や活動に際して意識、自身の作品に関しての感想や著者の創作についての考えなどが相当量の文章で書かれておりとても興味深い本であると思います。
    創作論に惹かれた方は第三部デーモンスレイヤーの部分をパラパラとめくり軽く確認して気になったら最初から読むか第三部から読むかを決める。
    ファンでしたら逆に最初から読まれたほうが良いと思います(後半には前半部分のネタバレ的な文章もありますので十分に楽しむなら前半から読んだ方が良いと思います)。

    自分としては今作は前半入り込みにくく、中盤から慣れたのか読みやすくなり、後半からの創作論部分は興味深く読めた本でした。
    著者のファンでしたら星が1つプラスされる評価になるのではないかなと思います。

  • 3.11以前…起こった後の小説家の苦悩。
    創作が成り立つのは、現実があればこそ。
    現実を超えるものにしか価値がないのなら、あの日の出来事を超えるものはどこにあるのだろう?
    創作論らきしものは書けても、小説が生み出されるには、デーモンを己の内に従えねばならぬのか?
    従えられるものにデーモンが微笑みかけるのか?
    …まぁ、書けたらそれでいいと思うのだけど。

  • うーん

  • デーモンという発想がおもしろい。
    さすが古川日出男。
    後半につれてグイグイ。

  • ずっと読んできた古川日出男作品を通じて惹かれるのは古川さんの表現の中に時間の連なりを感じるからなんだと再確認できた。
    時間が内包されながら解き放たれていること。
    古川さんが現実世界で執筆していることと物語の世界が重なって多層なレイヤーが同時並行している。それらが全て同居し孕まれているものが受け手の自分の中に入ってきて異なる時間と進み方が僕には無意識に理解できるというか、あるということがわかるそんな気がする。
    死者たちの時間と寄り添い、彼岸と此岸を行き来する古川さんは時間の交差の中にいる。
    直交座標系のx軸には彼岸と此岸が、y軸には死者と生者と考えると古川さんの作品が難解だと思ってる人にも理解しやすいのかもしれないなあと思ったり。

    『小説のデーモンたち』は読んでいると確かに僕のような作家志望者にはしんどくなる部分も多々あった。
    ことあるごとに読み返す創作論になると感じられる一冊の書物。それでも書く事でなんとか自分の感じる時間を琥珀に閉じ込めて同時に琥珀から解き放つようなものが書ける力を得れるようになりたい。

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プロフィール

1966年福島県生まれ。2002年『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞と日本SF大賞、06年『LOVE』で三島賞、15年『女たち三百人の裏切りの書』で野間文芸新人賞と読売文学賞(16年)を受賞。

古川日出男の作品

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