職業としての小説家 (Switch library)

著者 :
  • スイッチパブリッシング
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感想 : 378
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884184438

感想・レビュー・書評

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  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    基本の大切さを知っていても、
    徹底的にできている人は少ないのだろう

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    いま、世界が渇望する稀有な作家──
    村上春樹が考える、すべてのテーマが、ここにある。
    自伝的なエピソードも豊かに、待望の長編エッセイが、遂に発刊!


    目次

    第一回 小説家は寛容な人種なのか

    第二回 小説家になった頃

    第三回 文学賞について

    第四回 オリジナリティーについて

    第五回 さて、何を書けばいいのか?

    第六回 時間を味方につける──長編小説を書くこと

    第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み

    第八回 学校について

    第九回 どんな人物を登場させようか?

    第十回 誰のために書くのか?

    第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア

    第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出

    あとがき


    ⚫︎感想
    村上氏が、作品を書くことを愛し、全力を尽くしている姿を知ることができる。

    「書くことは孤独な作業である。」
    「時間を味方につけるには、ある程度自分の意志でコントロールできるようにならなくてはいけない」
    「持続力を身につけるためには、基礎体力を身につけること」
    「肉体的な節制は、小説家であり続けるために不可欠」

    これらを読むと、基本的なことを、とても重要視し、本当に大切にされていることがわかった。

    書かれた本を親子世代に渡って読んでもらえること、その著作を話題にしてくれることの喜びも書かれていた。書くことをご自身が楽しみ、また多くの読者を虜にする村上氏の著作。村上氏の仕事に向かう姿勢、やり方、感情を垣間見ることができる。

  • 又吉騒動を予見したかのような小説家寛容論、とくにいらない芥川賞論や、最近パクリ騒動を予見したかのようなオリジナリティ観、学校教育というものへのつまらなさくだらなさや不信感またその逃げ場のサードプレイスとしての書物観、などなど数年前から書き溜められていたという講演風エッセイというわりには、様々にアクチュアルな今の日本の事象に絡みついてくる柔らかい言葉で綴られた「自伝」でありながら、深いところでの信仰告白があり、村上氏は基本なんというか「期待しない」が「信じる」というスタンスが基部にあり、無論謙遜含みつつであるが村上氏自身の作家能力に対してもその姿勢だし、また創作行為および文学ジャンル全般へ「期待しないが信じる」という姿勢を強く貫かれている。

    逆に「期待ばかりしているが信じていない」という態度は我を含めて様々な領域で観る事例であるけども、何事にも不毛な結果しか招いていないし、またそういう態度をあからさまに出す人は、我を振り返って思うけど、自分自身へも様々な事象へも、妙に「期待ばかりして」妙に「信じていない」。

    その「信じる」って何かっていうと別にスピリチュアルとかそういものでなく、変なレトリック使うと、こう「あけっぴろげの何かを預けてしまう」というか「もうこっちの思惑はどうでもよいから、そっちにすべて預けます」という、一番大事なものを頑強だけがとりえな金庫の中に抱え込まずに、そっちの本来の様々に自生する力に託すという姿勢であり、なんかこの姿勢が、氏の様々な問題の解決能力の基部になる重要なタフな楽天性なような気がします。

    最悪の事態はあれど事態は必ずにそれ自らのうちで解決に至れるのだという確信を持たれている。

    なので、波間に浮き沈む藻屑状況に目先だけで一喜一憂もしなければ期待もしない。ただ、底の深く重い流れの潮は信じ、その流れにおらっと身を放つ姿勢の、妙な開き直ったサッパリとした覚悟があり、それが潔くよく気持ちよく、また非常に公正にみえ、であるからこそ、読んでいるこちらまで不思議と快活に「しょうがないじゃないか」と開き直った気分になれるような、妙に自己啓発的な本でもありました。

    もっとも、自らを「ごく普通の人間」と自覚される「村上春樹」という世界文学作家の修行僧にも似たストイズムは一切普通ではないユニークな位置に到達しており、第二の「村上春樹」という作家は今後あり得ないだろうなと思いますが、実作者が語る世界文学上の様々な作家のエピソードを裏付けするような「とにかく若いうちに多くの本を手に取った方がいい」というメッセージを発してくれてよかったなと思います。

  • ダメだ春樹さんがかっこよすぎて辛いから、巻頭読んだだけで積ん読! カバーかっこよすぎる。

  • 何作か読んだことあるんですけど、独特の文体とか、(良い意味で)もやもやした読了感みたいなものの裏にあった作者の姿勢に触れられるのは楽しかったです。こういうすごい人がどういうことを考えて生きてるのかを聞けるのって幸せ

  • 村上さんの小説家としての「思惟の私的プロセス」をまとめた一冊。

    語りかけるような文体ではあるけれど、職業作家としての根幹に関することなので、こちらとしても背筋を伸ばして拝聴する、というかんじ。
    だからといってかた苦しいわけではなく、とてもわかりやすい。

    小説家になる予定はないけど、何度でも読み直したい。手元に置いておきたい。こういう生き方もあるんだなって、励まされるというか…うまく言えません。

    とにかく、村上さんの小説に対する姿勢を尊敬するし、これからも村上さんの作る「物語」を読み続けようとあらためて思ったしだいです。

  •  全12回の村上春樹の講演を聴いているような、非常に濃密で読み応えのある、なおかつ一単語も無駄のないエッセイだった。MONKEYで既読の内容もあったが、改めて読んでも楽しめる。

     村上春樹は、言わずと知れた世界的作家だ。50の言語に翻訳されている作家なんて、世界を見渡しても、長い歴史の中でもそうそういるまい。作品に対する好き嫌いはあれど(熱狂的ファンも多い一方でアンチも多いらしい)、それは誰もが認めるところであろう。そんな人物だからこそ、多少鼻高くなってるんちゃうの?なんて思ってしまうが、氏は驚くほど謙虚だ(すぐ調子に乗る浅はかな自分が恥ずかしい。私なら「世界中どこでも好きなところに行って、いくらでも経費を使って、好きなように紀行文を書いてください」なんて依頼喜んで飛びつくわー)。
     書いているあいだの批評・助言を必ず受け止めること。自らを“天才でない”と評し、ゆえに日々フィジカルの鍛錬を欠かさないこと。これだけ売れても、自らを常にアップデートしていること。“ええかっこしい”で言っているわけではないと思う。これだけまっすぐで深い文章からは、嘘など微塵も感じない。

     感銘を受けた箇所はたくさんあるけれど、とりあえず3つ挙げておく。

    ・オリジナリティーとは、独自のスタイルがあることだけではない。そのスタイルを自らの力でヴァージョン・アップできること、時間の経過とともにスタンダード化され、人々の価値判断基準の一部として取り込まれることも必要だという。オリジナルを生むには努力が必要だし、心の乱れは邪魔になるのだろう。

    ・読書の効用を巧みにまっすぐに語ってくれていること。私自身本をよく読むようになり、人間関係は狭くなったけど世界が広がった実感があった。学校が合わない、生きづらさを抱える子どもたちが、村上春樹がこのように語ることによって読書の効用に気づいてほしいと願う。

    ・リック・ネルソンの『ガーデン・パーティー』の歌詞
     もし全員を楽しませられないのなら
     自分で楽しむしかないじゃないか
     無責任な言葉に惑わされないためにも大切にしたい言葉!

  • 本書は村上春樹さんが「小説を書くことについての集大成」という思いで書き綴ったエッセイ。

    「職業としての小説家」に憧れる人には、処女作「風の歌を聴け」で村上春樹さんが”自分らしい文体”を掴んだエピソードの2章は必読。また村上さんの文体に流れる「心地良いリズム」に影響を与えたジャズの、その無限の可能性について語る5章もオススメ。ジャズ喫茶を経営されてたくらいだからその「ジャズ愛」は筋金入り。

    あと6章も小説家を生業とするための習慣が語られている。毎日1時間走り、調子が良くても悪くても5時間かけて400字原稿用紙10枚書くらしい。村上さんに限らず、ルーチンを崩さない偉人は多い。詳しくは中田Youtube大学「天才たちのルーチン(天才たちの日課)」に譲るとしよう。

    「村上春樹作品好き」な人には9章が特にオススメ。引き算と簡略から得た処女作「風の歌を聴け」が言わば”スカスカで風通しの良い状態”であり、そこから作品を重ねる毎に「骨格を与え、肉付けをし、より複雑な物語に世界観と表現力を育てていった過程」をご本人が解説している。

    村上さんのモチーフである「システム(体制)と個人(あるいは”壁と卵”と表現した方が馴染みがあるかも)」の原点が「退屈な学校生活」で既に確立されていたことが8章で語られているのも印象的だった。

  • 僕はどちらかといえばただ頭に留める方を好みます。ノートをいつも持ち歩くのも面倒くさいですし 、いったを文字にしてしまうと、それで安心してそのまま忘れてしまうということをよくあるからです。頭の中にいろいろなことをそのまま放り込んでおくと、消えるべきものは消え、残るべきものは残ります。僕はそういう記憶の自然淘汰みたいなものを好むわけです。

  • ある意味小説よりも面白かった。
    僕はもしかすると、村上春樹という小説家が紡ぎ出す物語よりも、彼の文体、リズム、物事への姿勢というようなものが昔から好きなのかもしれない。

  • まだ、途中ですが…
    すでに音楽を感じて読んでます。
    小説は、ほぼ読んでます。
    エッセイは、半分くらい。

    小説ほど惹かれなかったエッセイでしたが、エッセイにも、音楽を感じてます。
    物語のようなエッセイ。やっぱり、春樹さんの空気感が大好きだなぁ。

    一気に読むのがもったいない。
    多読して味わって、自分に染み込ませたい言葉がありすぎて…

    ほんとに、エッセイなのに物語を読んでるような錯覚。明らかに奏でている。

    まだ、読んでないエッセイが楽しみ過ぎる。

    読了。切り取りして、保存したい言葉が多い。
    また、読もう。

    小説家を目指している人に必須だと思う。
    そして、だれにでも表現欲がある。
    だれにでも文章を書くと言うことは必須。だと思うと誰にでも大切になる本。

    春樹さんファンは当然必須!

    図書館で借りた本でしたが、そっこうで買いました。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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