ドクロ

  • スイッチ・パブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884186227

感想・レビュー・書評

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  • ある夜、"とうとう"逃げだした少女と、なぜか言葉を交わすことができる頭蓋骨が森の奥の屋敷で出会い、親交を持つ話。

    切ないような、温かいような、怖いような。いろんな読み方ができるやや長編の絵本です。
    きっと大人と子供で感じ方が違うし、
    今読んだ子どもたちが、大きくなって読み返したときに全く別のものが描かれていたことに気づく。みたいなことが起こるんじゃないかという予感がある。

    この話の登場人物を3人と捉えるか、2人と捉えるか、1人と捉えるかで
    かなり解釈が変わるのだけど、1人と捉えるのが一番怖い。

    とにかくすごいのは主人公オティラの存在で。主人公としてあんまり見たことがないタイプ。
    優しいけれど(大人から見ると)狂気をはらんでいるので、
    全般の信頼や共感を預けることができない。
    読者にも心の内を明かさないような頑なさがある。

    お話自体にも語られない部分がたくさんあり、意図された沈黙によって
    読者の想像が掻き立てられるつくりになっている。

    彼女は何から逃げてきたのだろうか。
    何度も逃げようと思うほどひどいところから、雪の降る森の奥へと駆け出した。
    彼女の持つしずかな優しさと狂気は、そこに原因があるんだろうか。

    そんな事を考えながら寝かしつけに読んでいると
    先に子どもが寝てしまうのだけど、
    そのまま最後まで音読することになる。
    子どもの寝息と、薄暗い天井と、なんともいえない読後感。
    オティラ・・・君は。


    絵本作家ジョン・クラッセンがチロル地方の民話を再構築し、
    ウォールストリートジャーナルのベスト・ブック・オブ・ザ・イヤー(児童書部門)にも選出された本作。
    著者あとがきには物語が人の心の中で変容することついて触れてあり、こちらも大変興味深い。

    物語は不変でなく、人の心のなかで変わっていくもの。
    聞き手、語り手がそれぞれに解釈することではじめて物語はつくられる。
    だからこそ物語には余白が必要なんだ。

    いっときの沈黙に千の思索を込めて。

  • ちょっと怖いような…独特の絵本でした。
    子供のころ、この本に出会っていたら、自分はどんな感想を持ったのか、知りたい。

  • チロル民話をアレンジした絵本。
    オティラが強い。ともかく強い。逃げてきたはずなのに。
    ここまで念入りにする?という所がクラッセンらしいかも。

  • 女の子とドクロの不思議なお話。
    ふだんあとがきは読まないという方も、著者あとがきは必読。
    イラストは表情の表現が少ないはずなのだが、文章と合わさることでとても表情豊かに見える。
    この本はきっと、くり返し何度も読み続ける本になる。

  • 森に逃げ込み、大きな屋敷に辿り着いた少女のために扉を開けてくれたのはドクロだった。民話を元に記憶が作り変えた物語を少しダークなタッチで描いた絵本。


    ドクロと少女の奇妙な友情物語が、後半は素性の知れない少女のノワールに変わる。思えばドクロとの対面からして冷静だし、オティラは殺し屋稼業に従事してた子なのかな。
    行動主体が一番の謎を残したまま終わるこの余韻は、直後に読んだキャサリン・レイシーの『ピュウ』とも共通していて、無口で目の座った感じもなんだかピュウを思わせる。オティラが何から逃げてきたのかと同じく、ドクロが自分の身体の元に戻りたがらない理由も明かされないのだが、語りたくない秘密を抱える者同士ができる限りの優しさを分け合うところにフォーカスを当てたお話なのだと思う。黒が印象的な色づかいだけに、淡いオレンジの陽が差し込む温室の場面が印象に残る。

  • お?人外好きか?

  • 2024年カーネギー賞画家賞ロングリスト。オティラはある真夜中、とうとう逃げた。森へ入り、走って逃げて、逃げ続ける。そして、森を抜けると、そこにはとても大きなお屋敷があった……。

    訳者あとがきに書かれているように、謎の多い作品。その謎の分、なんだか気になって心に残る。物語ができた過程も面白い。
    私が好きなのは、かぶるものじゃないんだ、と言っていたお面をかぶってるところと、おいしいと言いながらドクロが食べたり飲んだりして、でもドクロだから通り抜けて出てきちゃうところ。
    ドクロと仮面をつけて踊る姿は、なんとも言えずユーモラスだ。
    後半のオティラの行動に迷いがないのがすごい。その強さは、彼女の過去と何か関係があるのだろうか……なんて、考えてしまう。、

  • どこかで柴田元幸さんが、「最近訳した中で、ジョン・クラッセンのthe skull が良いんだよ〜」って話をされていて、もともとジョン・クラッセンの絵本も好きだったので読んでみた。

    日本の短編読切マンガくらいのボリュームだったが、一番面白かったのは著者のジョン・クラッセンのあとがき。

    民話がなぜ無数の派生系を生むのか?なぜ民謡がいろんな変節を遂げるのか?ジョン・クラッセンは古代から受け継がれてきた、民衆による「口伝の魔法」を、この本で再現したかったのだと思う。逸脱はイマジネーション。

    3びきやぎのどんけろりも、がらがらどんの派生系?と思っていたが、この流れであれば納得。

    あとがきまで読んで完結するといってもいい、あとがき。民話研究とは違う入口からここに辿り着けるのは幸運としか言いようが無い。これは目から鱗だった。

  • オティラがきちんと遺体を処理してくれて安心しました。かなりしっかりやってくれた。そういえば、オティラは何から逃げてきたんだろう?気になります。解説に書いてるのかな?

  • 小4男児
    親が読もうとしたら一緒に読みたいとの事なので読み聞かせ
    表紙から滲み出る何やら不穏な雰囲気
    読み聞かせなので子どもは絵に集中できた様子
    「あ!ここ…」
    文章では語られなかった事象が描かれていて
    それを見つけるのが楽しかった様子
    もちろんストーリーも怖いもの好きな男児にちょうど良い怖さだった
    読後はこれからのストーリーや残された謎を夢想する余地がある
    あとがき(お話ができるまでの裏話等)は必読
    小4男児の心にも響いた様子

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著者プロフィール

カナダ・オンタリオ州ナイアガラフォール生まれ。米国・ロサンゼルス在住。『どこいったん(I WANT MY HAT BACK)』は、2011年ニューヨーク・タイムズベストセラー、ドクター・スース賞オナー賞などを受賞。第二作『ちがうねん(THIS IS NOT MY HAT)』は2013年コールデコット賞(米国)、2014年ケイト・グリーナウェイ賞(英国)をダブル受賞し、絵本史上初の快挙を成し遂げた。『みつけてん(WE FOUND A HAT)』は、米国の書評誌「パブリッシャーズ・ウィークリー」で2016年の「ベスト・チルドレンズ・ブックス」に選ばれている。
以上の3冊からなる「ぼうし」シリーズが代表作。ほかに、児童書作家マック・バーネットの文に絵をつけた作品に「かたち」シリーズなどがある。

「2021年 『そらから おちてきてん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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