- Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
- / ISBN・EAN: 9784884186227
作品紹介・あらすじ
洗練されたアートワーク。温かくも不気味なストーリー。
訳者・柴田元幸も「最高傑作」と太鼓判を押す、絵本作家ジョン・クラッセンによる新作長篇絵本、ついに刊行‼︎
日本でもロングセラーとなった『どこいったん』、権威ある児童書の賞である米コールデコット賞と英ケイト・グリーナウェイ賞をW受賞した『ちがうねん』など、その著作が世界中で親しまれている米カルフォルニア在住の絵本作家・イラストレーター、ジョン・クラッセン。そのクラッセンが2023年に発表した新作長篇絵本『ドクロ』、待望の邦訳がついに発売決定です。
感想・レビュー・書評
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オテッラとドクロの物語(絵本)。
最後の
「わかった」とオテッラは言った。
で、心が温かくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『どこいったん』などのちょっとヒヤリとさせられる絵本の作者であるジョン・クラッセンの本。ちょっと長めの絵本。
「ある夜、みな寝しずまった 真夜中に、オティラはとうとう逃げた」
という文で始まる。柴田元幸の訳では、オティラが男の子か女の子かは判然としない。
原文にはあたっていないが、オリジナルでもわざとそうしてあるのかもしれない。
ところで、オティラは、どこから逃げたのかは書かれていない。
だから、本作を読めば読むほどにそこが怖く感じられてくる。
というのも、オティラはどこかから逃げ出し、森へ迷い込み、やがてある屋敷にたどり着く。
扉を叩くと、胴体のない頭蓋骨がオティラを出迎える。
ふつうなら恐怖におののくところだけれど、オティラは平然とし、屋敷のなかへ入っていく。
一方で、いったいどんな恐ろしい場所から逃げ出してきたのかと、背筋がぞくっとさせられる。
オティラはこの頭蓋骨とともに一夜を過ごすことになるのだが、夜中になるとこの頭蓋骨の胴体部分が、頭蓋骨を探しにくるというのだ。
じっさいオティラが耳にしたとおり、胴体部分の骨が現れる。
さてオティラと頭蓋骨はどうなったのか……
読み終えたあとで、こんな不思議なカタルシスもあるのかと、なんだか初めての食べ物を食べた後のような余韻が残った。
ダークな物語だけれど、これで良かったのだと、妙に納得させられた。 -
基本のストーリーがあって、でもそれ以上の物語が背景にあることを感じさせてくれるつくりになっていて素晴らしい。こういう本に出会って、想像の翼を広げていくことが読書の楽しさだということをひしひしと感じる。
不気味だけれど、可愛らしく、恐ろしいけど愛がある。とても良い話だった。 -
柴田元幸さんの訳者あとがきを、少し引きたい。
“それにしても、何と大胆な語り方か。きわめて多くを読者の想像力に委ねている。
謎を元に物語をさらに拡げていくよう、読者はほとんど挑まれている。そういう、読者を信頼する姿勢がすばらしい。”
それって、知りあうこともない作者との間で、一冊の本を通じて築ける最良の関係だと思う。
どうしてドクロは、頭だけになったの?って訊かれたら、こんな答えはどうだろう。
『ドクロとガイコツ』
男は自分の体が嫌でした。
いかめしく響く声も、分厚い胸板も、逞しく力強い両腕も。
その手は農奴を鞭打ち、隣国の兵を撃ち倒しました。
男はそんなことはしたくなかったのです。
でもそれは領主としての務めでした。
男の父親や領民は、喝采して褒めそやしました。
なんて男らしく、誇り高い領主様なんだろう!
男は亡くなるまで立派な領主として振る舞い続けました。
だから、墓地に埋葬されたときにはホッとしたものです。
これで肉体ともおさらばして、ほっそりと身軽な骨だけで過ごせますからね。
誰も骨に責任なんて求めはしません。
でもうまくはいかないものです。
夜な夜な散歩をするたびに、記憶が苛むのです。
体は覚えているのです。
男は怖くなりました。
わたしは、失った強さを、若い肉体を取り戻したいのだろうか?
どっちが、本当の、わたしだったのだろう。
新月の夜にドクロはそっと転がってゆきます。
ガイコツと別れるのは、身を切られる辛さでした。生死が分つことなくずっと一緒にやってきたのですから。
もうこれで、どこまでも走ってゆくことも、梨の木に手を伸ばすこともないのです。
でもドクロは振り返りません。
夜風が吹き抜けて、ドクロを鳴らします。
そっと口笛を吹くかのように。
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みな寝しずまった真夜中に、オティラはとうとう逃げた。1ページ目のこの1文で、この小さな少女が何から逃げて、雪の降る森の中を夜通し走っているのか、説明はないから想像が膨らむ。辿り着いたお屋敷にいた頭だけのドクロ、頭のないガイコツの襲撃、プロの殺し屋のようなオティラの一面。なのに後味は不思議と温かい。ショートアニメの短編映画のようだった。
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雑誌「MOE」に紹介されていて。
112ページ、章立てになった贅沢な絵本。
黒がベースであるものの、淡い暖色もあり立体的な絵画のようだ。
なんだか声を出してみたくなって、気分良く最後まで読んでしまった。
著者のあとがきになるほど。思い出を自分用に作り変えてしまうって確かにあるし、それが新しい物語になるんだってなんて素敵なんだろう。 -
絵本に近い民話ベースの作品
短い物語で文章も簡潔ながら行間を読ませるような感じがある 絵の光の表現がかなり素敵 -
ブラックユーモアが多めの私の大好きな作家です。
オティアは何かから逃げた先で、ドクロ(頭蓋骨)が住む屋敷にたどり着きます。
ドクロはオティアを屋敷に入れてあげ、色んなお部屋に案内します。
二人?は親睦を深めていったなか、ドクロはオティアにこう告げます。
「この屋敷にやってくるガイコツがいる」
「頭のないガイコツは、私を探し回っている」
オティアは、ドクロがガイコツから毎晩逃げていると聞きガイコツを・・・。
ちょっと想像の上をいく結末で、オティアは敵に回したくないなと思いました。
この本誕生のきっかけが書かれてるあとがきも是非読んでほしい一冊です!