眉輪

著者 :
  • 展望社
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本棚登録 : 62
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885460289

作品紹介・あらすじ

起稿七十余年、著者畢生の歴史小説、待望の刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 古事記・日本書紀に記される、おそらく日本最古の仇討ちを題材にした小説。
    多分、日本最年少の仇討ち。

    その内容に、発行当時は発禁処分になったんだとか。

  • 古事記に登場する悲劇の幼王・眉輪王(目弱王)が起こした変とその前後を描いた物語。
    美しい天上人たちが1人の俗物(というか小物)に運命を狂わされながら自分たちの愛と死を全うしようとする。
    タイトルロールの眉輪王を仮に主人公とした場合、裏主人公もしくは実質主人公と言えそうな大長谷王子と若草香王女の関係なんか特に業が深くて好きな人はきっと好き。
    異説ハムレットという副題がついた章があるし、最後に大勢人が死ぬ感じはシェイクスピア悲劇っぽい。でもこれ、ストーリー自体は概ね本当に古事記に書いてある通りなんだよね。日本神話とイギリスの古典劇がリンクするの、面白いな。

  • これは、歴史の勉強ではなくて、日本語の勉強のために読む本である。

    著者が独文学を専攻した比較文学者ということもあってか、5世紀のヤマト王権のお話に唐突に「ベーオウルフ」だの「ヴァルキューレ」だののカタカナ語が出現するのには眉を顰めてしまう。それを差し引いても、この日本語の美しさったらない。
    明治生まれの人が書いたものなので、現代の我々からすると奇異なように映る語句の用法や表現も多々ある。けど、それは我々(もしかしたら私だけ?)が言葉を知らないからであって、日本語って自由なのだな、懐が深いのだなと思い知らされる。

    文章技法のことは措いておいて、大長谷部皇子(雄略天皇)の名前は知っていても彼の身辺は凄惨だったということはあまり知られていないのでは。かくいう私も倭の五王の武だよね~ぐらいのことしか知らなかった。逆に主人公・眉輪王についての方がまだ知っていたぐらい。多分名前が変だからかな。「眉輪」というのは後からつけた美称的な漢字で、ほんとうは『古事記』にある「目弱」表記が正しいんだとなんとなく思う。かわいそうな名前…。

    物語は市辺押羽王の二人の子(後の仁賢・顕宗天皇)が播磨へと落ち延びるあたりで終わる。つまり、この後は飯豊青皇女の時代。野溝氏がどんな風にこの皇女を書くか読みたかったような気もするなぁ。

    ちなみに眉輪王の郷里である「日下」は、今の東大阪市日下町に相当するよう。今はもう沿岸部が埋め立てられて見えないけど、5世紀当時はここから河内湾まで見通せたらしい。今度行ってみよう。

  • 予め選ばれてあったように、ことばを、ひとびとを、物語を刻んだ(象嵌、という後記のことばがまさしく)おそろしくもうつくしい書物。

  • 2019.06.07 図書館

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著者プロフィール

野溝 七生子(のみぞ・なおこ):1897年、兵庫県生まれ。本作『山梔』は、懸賞小説として応募され入選し、新聞連載後、1926年に春秋社より刊行された。さらに北原白秋主宰「近代風景」や長谷川時雨主宰「女人藝術」などに作品を発表。また東洋大学で教鞭をとり、森?外に関する論考などを執筆した。他の著作に『女獣心理』(講談社文芸文庫)、『南天屋敷』(角川書店)、『月影』(青磁社)、『ヌマ叔母さん』(深夜叢書社)、『野溝七生子作品集』(立風書房)、『暖炉 野溝七生子短篇全集』『アルスのノート』『眉輪』(展望社)などがある。1987年没。

「2023年 『山梔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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