環境史から学ぶ地球温暖化 (エネルギーフォーラム新書)

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  • エネルギーフォーラム
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885554063

作品紹介・あらすじ

過去にも環境は変わってきたが、人類はそれに適応して生き抜いてきた。人類の「気候変動への適応」の歴史を知ることで、いたずらに温暖化を怖れるのではなく、冷静に対処できるようになる-。IPCC報告書主執筆者が、今までの温暖化対策の議論から抜け落ちていた、新たな視点で地球温暖化を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 最近地球温暖化が騒がれなくなったのは、私の関心がなかったせいだと思っていたのですが、この本で解説されていた通り、2011年に開催されたCOP17で日本は、カナダやロシアと共に2013年に離脱することを表明した(p181)からなのですね。私にとって、この事実が、この本を読んで得た衝撃でした。

    この本の著者はノーベル賞を受賞したIPCCの執筆者ですが、IPCCが予想した「3℃程度の温暖化」程度では、日本には悪影響は無いと結論付けている点が、私には印象に残りました。

    現在は米国でシェールガス革命が起きていることもあり、地球温暖化で推進されることになっていた「原子力発電」や「自然エネルギー」の推進ができなくなっている背景もあり、今後はCO2削減の運動は下火になっていきそうな気がしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・中世の温暖期は突然終わり、その後は数世紀の間、寒い気候が続いて、「小氷期」と呼ばれている。1315-1322年にかけて欧州の気候は急速に悪化し、極寒の冬が来た。穀物生産は3分の2、羊・牛の生産量は10分の1、150万人の死者が出た。1360年にはペストが流行して、人口の3分の1が減少し、回復するのは17世紀になってから(p21)

    ・小氷期により欧州では、イギリス・バルト海ではワインからビールへ、コニャック地方とシャンパン地方では冷涼な気候で育つ葡萄が原料とする新酒が開発された(p23)

    ・日本で米作の裏作として麦を作る二毛作が鎌倉以降に西日本で広まったのは、気候の冷涼化で米作が凶作になりやすいという面と、米とは異なり年貢の対象にならない面もあげられる(p27)

    ・黄河が黄色くなったのは(黄土がむき出しになった)農耕以上に、羊やヤギ等の牧畜の影響がある(p33)

    ・フランスの森は、800-1300年の間に3000万から1300万ヘクタール(日本面積:3700万)へ減少、米国の東海岸は1620年までは原生林に覆われていたが、現在はなくなった(p34)

    ・日本では白米への憧れと、米納年貢制の画一的な採用が本来の稲作不適地への米作拡大となった(p64)

    ・江戸時代以降、戦後まもなくまでの日本は、禿山や草山のみ、現在の日本の景観は歴史的には珍しい(p72)

    ・江戸時代には既におおくの公害があった、新田開発に伴う汚水、水車設置による泥、鉱山の毒、都市のゴミや糞尿があり、今日の基準でみれば大変不潔であった(p75)

    ・主穀たる稲の作付不良、凶作に応じて、粟(あわ)・黍(きび)・稗(ひえ)・蕎麦・麦などの雑穀で補填していた(p103)

    ・農村で米を食べなかったと誤解された理由の一つとして、雑穀米を見慣れない人が勘違いした、米を50%入れた雑穀米はほとんどコメが無いように見える(p107)

    ・関東大震災では、横浜市・三浦半島等の神奈川県の南半分は1-3メートル隆起、丹沢山地は1メートル沈降した、千葉県の房総半島は1-4メートル隆起した(p114)

    ・会津磐梯山は、1888年の大爆発で、北半分が吹き飛んで姿が全く変わってしまった(p115)

    ・2100年までに3度程度の地球温暖化であれば、自然変動に比べて小さく、過去の経験に照らすと、日本人は容易に適用してしまうだろう、縄文時代にそうだったように、照葉樹林や広葉樹林の地域が広がるだろう(p124,129)

    ・十津川はかつて落人が生活するためにようやく見つけた住処であり、かつて北海道に集団移転したという歴史もある(p153)

    ・原子力発電は、現在は評判が悪いが、ドイツ・スイス以外は、すなわち、英仏露インド中米は、利用拡大の意思を変えていない(p175)

    ・COP17(2011)において、日本・カナダ・ロシアは、2013年以降は離脱することを表明して、京都議定書体制は崩壊することになった(p181)

    ・COP17での重要な決定、1)すべての国が参加する枠組みについて2015年までに交渉を完了して2020年に施行する、2)第二約束期間が設定されたが、日本・ロシア・カナダは入らずに、欧州と途上国のみの枠組みとなった(p192)

    2013年3月23日作成

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著者プロフィール

杉山大志 (すぎやま・たいし)
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。
電力中央研究所、 国際応用システム解析研究所などを経て現職。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、 産業構造審議会、 省エネルギー基準部会、NEDO技術委員等のメンバーを務める。 産経新聞「正論」欄執筆メンバー。
著書に『「脱炭素」は嘘だらけ』(産経新聞出版)、 『中露の環境問題工作に騙されるな! 』(かや書房/渡邉哲也氏との共著)、『メガソーラーが日本を救うの大嘘』(宝島社、編著)、『SDGsの不都合な真実』(宝島社、編著)、『地球温暖化のファクトフルネス』(アマゾン [amazon.co.jp]他で電子版及びペーパーバックを販売中)など。

「2023年 『亡国のエコ - 今すぐやめよう太陽光パネル -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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