- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784885880902
作品紹介・あらすじ
何十年も英米のファンタジーを読み続け、訳し続けてきて、ちょっとやそっとのファンタジーには驚かないぞという自負があった……のに、『古森の秘密』には、ころっとやられてしまった。久しぶりに、心に深く響くファンタジーに出会った。
(金原瑞人 推薦文より)
【あらすじ】
精霊が息づき、生命があふれる神秘の〈古森〉。森の新しい所有者になり、木々の伐採を企てる退役軍人プローコロ大佐は、人間の姿を借りて森を守ってきた精霊ベルナルディの妨害を排除すべく、洞窟に閉じ込められていた暴風マッテーオを解き放つ。やがてプローコロは、遺産を独り占めするために甥のべンヴェヌート少年を亡き者にしようとするが……。聖なる森を舞台に、生と魂の変容のドラマを詩情とユーモアを湛えた文体でシンボリックに描いたブッツァーティの傑作ファンタジー(1935年作品)。
感想・レビュー・書評
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アントーニオ・モッロは遺言で古く広大な森の一部を甥のセバスティアーノ・プローコロ大佐に、大部分を大佐の甥のベンヴェヌートに遺す。
現実主義で厳格で権威者のプローコロ大佐は古森の伐採を進めようとする。
古森の周辺には精霊たちが人の前に姿を現し、動物たちが人間と言葉を交わしていた。
木の精霊ベルナルディは兄弟の伐採を防ぐため、凶暴な風の精霊マッテーオを味方につけようとする。
その計画を知ったブローコロ大佐は先に風のマッテーオを手下にする。
古森の伐採が始まり、木の精霊ベルナルディはブローコロ大佐に取引の提案をする。
人間社会でも精霊たちにとっても正式に古森の主となったブローコロ大佐は、自分より広大な森を所有するまだ幼い甥のベンヴェヌートに嫉妬を感じて彼が消えることを願い…。
実にごく自然に人間と動物や精霊が共存しているけれど、人間が彼らを対等に感じるのはまだ幼い時だけで大人になると離れてく。
大佐は現実主義者として彼らと言葉を交わすが、対等ではない。
そして少年が迎えた「今夜お前は子供でなくなる」という、その日の話。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
帯のコピーが絶賛調だったので(コピーとはそういうものですが)ものすごーく期待して読んだので、肩すかしを食らった感じです。嫌なおじいさんが森の精霊や動物たち、無垢な子供と触れ合ううちに、人間的な優しさを取り戻すお話。
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現実主義の大佐が相続した古森。
精霊が住み着く森を力で従わせていく大佐だが
徐々に呵責に悩まされていく・・・。
寓話の世界の中で子供と大人、影と陽などの
様々な対比から読み取れる大佐の移り変わり。
雪の中のラストが胸に迫る。 -
途中までは主人公の心の動きがわからず読み進むのに苦労した。後半になり一気に話が進んだのは、成長する若者と老いていく老人、というテーマが明確になったためか。カササギの弟がなぜ大佐に大してあのような立場を取ったのか。物語の中で一番わからなかった。読み終えてからもずっも引っかかったままだった。
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イタリアはブッツァーティにしてもカルヴィーノにしても、良質な幻想小説がたくさんある。