魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集 I)

  • 東宣出版 (2017年12月13日発売)
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本 ・本 (269ページ) / ISBN・EAN: 9784885880940

作品紹介・あらすじ

現代イタリア文学の奇才ブッツァーティ待望の未邦訳短篇集――初期から中期にかけて書かれた20作品を収録。1篇をのぞく19篇が初訳!

誰からも顧みられることのない孤独な人生を送った男が亡くなったとき、町は突如として夢幻的な祝祭の場に変貌し、彼は一転して世界の主役になる「勝利」、一匹の奇妙な動物が引き起こす破滅的な事態(カタストロフィ)「あるペットの恐るべき復讐」、謎めいた男に一生を通じて追いかけられる「個人的な付き添い」、美味しそうな不思議な匂いを放つリンゴに翻弄される画家の姿を描く「屋根裏部屋」……。現実と幻想が奇妙に入り混じった物語から、寓話風の物語、あるいはアイロニーやユーモアに味付けられたお話まで、バラエティに富んだ20篇。

感想・レビュー・書評

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  • 「タタール人の砂漠」であっという間に虜になってしまったブッツァーティの初期短編集。20篇。
    人々の葛藤を寓話的に伝えること、そしてその葛藤を情景を通して表現する技術が圧倒的だと感じており、その傾向はこの短編集にも十分表れている。心情と情景のコンビネーションは本当に素晴らしい。

    純粋に幻想世界を描くもの、「タタール人〜」のように寓話的なイメージが強いものに加え、印象に残ったのは信仰にまつわるもの。20の短篇の中でも一番ボリュームのあった「屋根裏部屋」はとりわけその傾向が強く、神を試すというタブーを犯すようなものをテーマに据えている。ものすごい癖のあるテーマだけど、それほど説教臭さを感じさせないのは映像的、視覚的な描写と物語の展開の巧みさに因るものかと。面白い。
    全然救いがないものが多いんです。それでも面白いし、救いがない中のユーモアの妙味。
    この人の紡ぐ言葉は、美しい。

  • ブッツァーティ短編集1 20篇を収録

    おもしろかった。現実世界が揺らぐ幻想的な物語。この世界の不確実性、不可解性が短編ならではのキレのある展開で描かれていてる。

    寄宿学校に入れられた弟が別人のように変わった「変わってしまった弟」、黄色い旗が重要な小道具の「新しい警察署長」が特に印象的だった。

    「家の中の蛆虫」は読んでいて、チーヴァーの「トーチソング」をおもいだした。こういう作品を読むと、自分の中にあるエジディオ的なものに気をつけねばとおもう。

  • 「幸運、金、栄光、愛、幸せの代償として、魂を売ると?・・・・・・旦那さん、あなたがおっしゃりたいのは、そういうことですか?」

    彼の頭のなかをまだすこしでもみていたくて。
    短篇のほうが断然に好みだった。これらの短篇たちの解説のようなものが、「タタール人の砂漠」であったみたいだった。先に短篇を読みたかったけれど、もう過去にはもどれない(ちいさな悔恨)。

    習慣というものにたいする恐怖。絶えまない懺悔の声。タタール人の砂漠を読んだときに、パゾリーニを連想したのだけれど、ブッツァーティもまた、無神論者なのだろうか(むしろ憎んでいる?あるいは自虐)。そして悔恨と失望の正体(彼じしんの)がすこしだけ顔をみせたよう。
    「こういうセンチメンタルな言葉が、私にはひどく癇に障る。とりわけそれが男同士のあいだで交わされるときは。」
    そしてこの台詞。彼はとても信頼できる、とおもった。だから頬をゆるめながら、この世の不条理をいっしょに嗤った。かわいくて恐ろしい夢のつづきも、もうすこし覗かせて。

    「エレブス自動車整備工場」「巨きくなるハリネズミ」「新しい奇妙な友人たち」がとくにすきだった。
    「聖アントニウスの誘惑」もアイロニックでとても好きなのだけれど、これって人間愛なんじゃん、なんておもって偏屈だったじぶんを憐れんだ。



    「おまえたちの中には、ただ恐怖だけ。いつも恐怖。」

    「そして、自分の人生はいつもこうだったと、苦々しく思った。結局のところ、何ひとつ欠けているものはなかった。だが、何であれ、望んだものよりいつも劣っていた。必要を満たすための妥協の産物にすぎず、けっして十全な喜びを与えてはくれなかった。」

    「人生とはそういうものだ。大蛇のように、運命はすぐそばにある。だが、冷めた目でまわりを眺めるばかりで、それが見えていないのだ。」

    「『神は無知と欺瞞から生まれた、馬鹿げた恥ずべき偽りであり、抑圧と隷属の道具、自由で自覚的な人間性への侮辱であると宣言します』」


  • 意味が分かるような分からないような非現実的で奇妙な世界観が魅力的で面白かった
    変わってしまった弟 家の中の蛆虫 エレブス自動車整備工場が特に好き

  • 久しぶりにブッツァーティを読む。こちらはほぼ本邦初訳の短編集。不思議な世界観はやっぱり好きだな。

  • 読後感が良くなかったりもするけど、読むのを辞められない作品ばかり。考えさせられる内容も結構ある。

  • おっと、、、短篇集1となってるゾ!

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    初期から中期にかけて書かれた20作品を収録。1篇をのぞく19篇が初訳!

    誰からも顧みられることのない孤独な人生を送った男が亡くなったとき、町は突如として夢幻的な祝祭の場に変貌し、彼は一転して世界の主役になる「勝利」、一匹の奇妙な動物が引き起こす破滅的な事態(カタストロフィ)「あるペットの恐るべき復讐」、謎めいた男に一生を通じて追いかけられる「個人的な付き添い」、美味しそうな不思議な匂いを放つリンゴに翻弄される画家の姿を描く「屋根裏部屋」……。現実と幻想が奇妙に入り混じった物語から、寓話風の物語、あるいはアイロニーやユーモアに味付けられたお話まで、バラエティに富んだ20篇。
    http://tousen.co.jp/968

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1266380

  • 作品紹介・あらすじ

    現代イタリア文学の奇才ブッツァーティ待望の未邦訳短篇集――初期から中期にかけて書かれた20作品を収録。1篇をのぞく19篇が初訳!

    誰からも顧みられることのない孤独な人生を送った男が亡くなったとき、町は突如として夢幻的な祝祭の場に変貌し、彼は一転して世界の主役になる「勝利」、一匹の奇妙な動物が引き起こす破滅的な事態(カタストロフィ)「あるペットの恐るべき復讐」、謎めいた男に一生を通じて追いかけられる「個人的な付き添い」、美味しそうな不思議な匂いを放つリンゴに翻弄される画家の姿を描く「屋根裏部屋」……。現実と幻想が奇妙に入り混じった物語から、寓話風の物語、あるいはアイロニーやユーモアに味付けられたお話まで、バラエティに富んだ20篇。

    *****

    久しぶりに読んだブッツァーティ。ただし「神を見た犬」や「タタール人の沙漠」を読んで「面白かった」という記憶だけが残っていて詳細が脳内からぶっ飛んでいるのはいつものこと(汗)。

    寓話的な作品にしても、不思議な作品にしても、アイロニカルな作品にしても、ちょっと不気味な作品にしても、とてもわかりやすいと思う。その分かりやすさ故にグググッっと心に突き刺さってくるように思える。決して単純という訳ではないのだけれど、ストレートに伝わってくる、って印象だろうか。

    ただ期待が大きすぎたせいか、ちょっと大味な感じも受けてしまった。短篇だからなのだけれど、ちょっと一つの話が短すぎるかなと不満に思ったのも事実。本書の中で最も長い「屋根裏部屋」が一番面白かったのも何となく納得。

  • 文学ラジオ空飛び猫たち第31回紹介本。 イタリアを代表する作家の幻想と不条理の短編集。どこか不穏な空気が流れている作品が多く、幸せな話や明るい話はないですが、ユーモアはたっぷりあります。寓話の中に人の本質が描かれているので、非現実的な話なのに自分事のように迫ってきます。 「屋根裏部屋」は人の弱さが痛切に描かれていて、現代の屋根裏部屋を考えたら、それはスマホかもしれないという話もしています。ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/31-eqcqeh

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著者プロフィール

1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長篇『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短篇集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『絵物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。

「2022年 『ババウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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