- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784885880940
作品紹介・あらすじ
現代イタリア文学の奇才ブッツァーティ待望の未邦訳短篇集――初期から中期にかけて書かれた20作品を収録。1篇をのぞく19篇が初訳! 誰からも顧みられることのない孤独な人生を送った男が亡くなったとき、町は突如として夢幻的な祝祭の場に変貌し、彼は一転して世界の主役になる「勝利」、一匹の奇妙な動物が引き起こす破滅的な事態(カタストロフィ)「あるペットの恐るべき復讐」、謎めいた男に一生を通じて追いかけられる「個人的な付き添い」、美味しそうな不思議な匂いを放つリンゴに翻弄される画家の姿を描く「屋根裏部屋」……。現実と幻想が奇妙に入り混じった物語から、寓話風の物語、あるいはアイロニーやユーモアに味付けられたお話まで、バラエティに富んだ20篇。
感想・レビュー・書評
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ブッツァーティ短編集1 20篇を収録
おもしろかった。現実世界が揺らぐ幻想的な物語。この世界の不確実性、不可解性が短編ならではのキレのある展開で描かれていてる。
寄宿学校に入れられた弟が別人のように変わった「変わってしまった弟」、黄色い旗が重要な小道具の「新しい警察署長」が特に印象的だった。
「家の中の蛆虫」は読んでいて、チーヴァーの「トーチソング」をおもいだした。こういう作品を読むと、自分の中にあるエジディオ的なものに気をつけねばとおもう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「幸運、金、栄光、愛、幸せの代償として、魂を売ると?・・・・・・旦那さん、あなたがおっしゃりたいのは、そういうことですか?」
彼の頭のなかをまだすこしでもみていたくて。
短篇のほうが断然に好みだった。これらの短篇たちの解説のようなものが、「タタール人の砂漠」であったみたいだった。先に短篇を読みたかったけれど、もう過去にはもどれない(ちいさな悔恨)。
習慣というものにたいする恐怖。絶えまない懺悔の声。タタール人の砂漠を読んだときに、パゾリーニを連想したのだけれど、ブッツァーティもまた、無神論者なのだろうか(むしろ憎んでいる?あるいは自虐)。そして悔恨と失望の正体(彼じしんの)がすこしだけ顔をみせたよう。
「こういうセンチメンタルな言葉が、私にはひどく癇に障る。とりわけそれが男同士のあいだで交わされるときは。」
そしてこの台詞。彼はとても信頼できる、とおもった。だから頬をゆるめながら、この世の不条理をいっしょに嗤った。かわいくて恐ろしい夢のつづきも、もうすこし覗かせて。
「エレブス自動車整備工場」「巨きくなるハリネズミ」「新しい奇妙な友人たち」がとくにすきだった。
「聖アントニウスの誘惑」もアイロニックでとても好きなのだけれど、これって人間愛なんじゃん、なんておもって偏屈だったじぶんを憐れんだ。
「おまえたちの中には、ただ恐怖だけ。いつも恐怖。」
「そして、自分の人生はいつもこうだったと、苦々しく思った。結局のところ、何ひとつ欠けているものはなかった。だが、何であれ、望んだものよりいつも劣っていた。必要を満たすための妥協の産物にすぎず、けっして十全な喜びを与えてはくれなかった。」
「人生とはそういうものだ。大蛇のように、運命はすぐそばにある。だが、冷めた目でまわりを眺めるばかりで、それが見えていないのだ。」
「『神は無知と欺瞞から生まれた、馬鹿げた恥ずべき偽りであり、抑圧と隷属の道具、自由で自覚的な人間性への侮辱であると宣言します』」
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久しぶりにブッツァーティを読む。こちらはほぼ本邦初訳の短編集。不思議な世界観はやっぱり好きだな。
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読後感が良くなかったりもするけど、読むのを辞められない作品ばかり。考えさせられる内容も結構ある。
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動物奇譚集が良かったので。
未邦訳短篇集。
動物を題材にしたものは特に好き。
苦悩や悲劇、人間の心の奥底に隠されている部分、不可解で非合理な不思議なストーリー。
とっつき難い宗教的、哲学的な物も、悲劇的で救われない終わり方もユーモアがありなぜか後味が悪くない。
今回も面白かった。 -
文学ラジオ空飛び猫たち第31回紹介本。 イタリアを代表する作家の幻想と不条理の短編集。どこか不穏な空気が流れている作品が多く、幸せな話や明るい話はないですが、ユーモアはたっぷりあります。寓話の中に人の本質が描かれているので、非現実的な話なのに自分事のように迫ってきます。 「屋根裏部屋」は人の弱さが痛切に描かれていて、現代の屋根裏部屋を考えたら、それはスマホかもしれないという話もしています。ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/31-eqcqeh
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やっぱりブッツァーティは良い!
この本はほとんどが初めて訳されるものばかりで、ちょっとお値段がするけど読めて良かった。
宗教的な話と寓話的な話が多い。
特に好きだったのは、
『変わってしまった弟』
『剣闘士』
『家の中の蛆虫』
『エレプス自動車整備工場』
『巨きくなるハリネズミ』
『新しい奇妙な友人たち』
かな。
『家の中の蛆虫』は特に嫌で好きだった。
安部公房にも少し違うけどこんなような話があったような。
ジワジワと自分の場所をとられていく恐怖。
それと、今回も時間を無駄に費やしてしまい気づいたときには取り返しのつかないくらい老いてしまっていて…というような話も多かった。
よっぽどブッツァーティはそれを恐れてたんだろうなと。
確かに怖い。私も無駄に費やしちゃってる自覚はあるから読むたびに胸が痛い…。 -
短編集は初めて読んだけれど、ここでもブッツァーティの特徴である奇妙な雰囲気は健在。ただかなり短い話が多く、もう少し膨らませたらもっと面白くなるのになーと思うものも結構あった。屋根裏部屋が1番良かったかな。
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タイトルのとおり短篇集。短い時間で読めてそれでいて面白かった。「屋根裏部屋」は主人公の屋根裏に禁断の果実であるとても美味なリンゴが出現してしまい、その魅力に取りつかれてしまう物語。印象に残った。神の救済や罰、願掛けを主人公が考えていく様子が面白いうえにリアル。